2021菊花賞


鉱物一族の輝きを見よ

 菊花賞が阪神競馬場で行われるのは1979年以来となる。当時は外回りはおろか直線に坂もなく、まだ11月に行われていた。今のように美しい緑の芝ではない。重馬場の18頭立てを勝ったのは5番人気のハシハーミットで2着は11番人気のハシクランツ。いずれもシンザンクラブの所有馬、内藤繁春調教師の管理馬だった。オーナーと調教師のワンツーだけでなく、もうひとつ共通するところがあり、それが母の父シンザンという点。ハシハーミットの母はシンザンの初年度産駒シンホープ、ハシクランツの母はシンザンとダイアンケーUSAの配合、すなわちダイコーターの半妹にあたるダイセイだった。18頭中、母の父が三冠馬だったのはこれら2頭しかおらず、その2頭で決着したことになる。このように明快かつネタとしてもよくできたヒントが示されているのだから、それに従うのが得策であろう。母の父が三冠馬、つまりディープインパクトの娘の仔を狙えばいいわけだ。母の父としてのディープインパクトはブルードメアサイアー・ランキング(JBISサーチ発表)で2017年に24位、2018年14位、2019年11位、2020年6位と着実に順位を上げ今年は目下2位。首位キングカメハメハとの差は7億円ほどあるので、今年の逆転は難しいとしても、近い将来首位に立つのは確実といえる。
 母の父ディープインパクトのG1勝ち馬は今のところ菊花賞馬キセキと米国でファーストレディS-G1に勝ったブロウアウトの2頭だけで、菊花賞-G1では昨年アリストテレスがあわやの2着となった。◎オーソクレースはアリストテレスと同じエピファネイア×ディープインパクトの配合。母マリアライトは重賞初勝利をG1初挑戦となった4歳時のエリザベス女王杯-G1で挙げ、翌年には宝塚記念-G1にも勝った。2着以下にはドゥラメンテ、キタサンブラック、ラブリーデイらの強豪が並んでいた。このように一気にスーパースター級の力を発揮する驚異的な上昇力は3代母キャサリーンパーUSAの子孫の鉱物馬名一族に共通のもので、最初に世に出たアロンダイトの未勝利からジャパンCダートまでの5連勝に象徴される。ダートが主戦場のファミリーではあるが、ディープインパクトの血が導入されたマリアライトによって芝への戦線拡大に成功している。本馬は祖母の父エルコンドルパサーUSAが菊花賞馬ソングオブウインドを送り、母の父は自身が菊花賞に勝ち、産駒にサトノダイヤモンド、フィエールマン、ワールドプレミア、コントレイルの4頭の菊花賞馬、娘の産駒に前述の通りキセキがいて、父のエピファネイアは自身が菊花賞馬。スペシャルウィークとディープインパクトを経由したサンデーサイレンスUSAの4×3、そして、シーザリオの母の父、エルコンドルパサーUSAの母の父としてのサドラーズウェルズ4×5と近親交配の構成も整然として美しい。


急上昇するキャサリーンパーUSA系
Regal Exception(USA) リーガルイクセプション(牝、鹿毛、1969年生、父Ribot)
    愛オークス-G1、[2]着:英オークス-G1
  キャサリーンパーUSA Catherine Parr(USA)(牝、青鹿、1987、Riverman)
      [2]オマール賞-G3、プシケ賞-G3、[3]アスタルテ賞-G2
    タンザナイト(牝、黒鹿、2000、サンデーサイレンスUSA)3勝
    | モルガナイト(牝、黒鹿、2006、アグネスデジタルUSA)4勝
    | | ブラックスピネル(セン、黒鹿、2013、タニノギムレット)5勝、東京新
    | |     聞杯-G3、[2]京都金杯-G3、鳴尾記念-G3、
    | ダンビュライト(セン、黒鹿、2014、ルーラーシップ)5勝、アメリカジョッ
    |     キークラブC-G2、京都記念-G2、[2]京都大賞典-G2、サウジアラビ
    |     アロイヤルC-G3、[3]皐月賞-G1、弥生賞-G2、オールカマー-G2、
    |     京都記念-G2、きさらぎ賞-G3 現役
    クリソプレーズ(牝、黒鹿、2002、エルコンドルパサーUSA)3勝
    | クリソライト(牡、鹿、2010、ゴールドアリュール)3勝(交流5勝)ジャパン
    |     ダートダービー、日本テレビ盃、ダイオライト記念×3、[2]JBCクラ
    |     シック、帝王賞×2、日本テレビ盃、浦和記念、平安S-G3、マー
    |     キュリーC、[3]浦和記念、平安S-G3
    | マリアライト(牝、黒鹿、2011、ディープインパクト)6勝、宝塚記念-G1、
    | |   エリザベス女王杯-G1、[2]目黒記念-G2、マーメイドS-G3、[3]日
    | |   経賞-G2
    | | オーソクレース(牡、黒鹿、2018、エピファネイア)2勝、[2]ホープフ
    | |     ルS-G1、[3]セントライト記念-G2 現役
    | リアファル(牡、鹿毛、2012、ゼンノロブロイ)4勝、神戸新聞杯-G2、[2]
    |     兵庫チャンピオンシップ、[3]菊花賞-G1
    | クリソベリル(牡、鹿毛、2016、ゴールドアリュール)3勝(交流5勝)チ
    |     ャンピオンズC-G1、ジャパンダートダービー、帝王賞、JBCク
    |     ラシック、日本テレビ盃、兵庫チャンピオンシップ
    アロンダイト(牡、黒鹿、2003、エルコンドルパサーUSA)5勝、ジャパンCダ
        ート、[2]東海S、[3]ブリーダーズゴールドC

 ○ステラヴェローチェはクロノジェネシスFRによってリバイバルしたバゴの産駒。凱旋門賞馬バゴFRはニアルコス家の名門牝系に名馬ナシュワンを配した名血だけに、再評価を受けるのはめでたいが、思い出したいのは初年度産駒から菊花賞馬ビッグウィークを送っていたという事実。ビッグウィークは母の父がサンデーサイレンスUSAで、それがディープインパクトに替わって現代的になっただけでなく、英女王陛下のハイクレア4×5というクラシックの薫り高い近交が構成されることともなった。ゴーンウエスト系グランドスラム産駒の祖母オールザウェイベイビーUSAの仔に朝日杯フューチュリティSのゴスホークケンがいる米国色の強いファミリーなので、バゴFRやウインドインハーヘアIREの欧州系の血との鮮やかなコントラストがここ一番の力につながりそうだ。

 ハーツクライ産駒の菊花賞成績は(0.1.0.12)とウインバリアシオンの2着があるだけ。菊花賞-G1ではまだ成長曲線がピークに至らない場合が多いということではある。その産駒、▲ヴィクティファルスは母の父がガリレオ。英愛随一の歴史的大種牡馬ガリレオも日本での直仔は1000万下を勝ったものが5頭いるだけで、重賞はおろか今でいう3勝クラスの勝ち馬すらいない。その5頭のうちの1頭が本馬の母ヴィルジニアで、芝1600m〜芝1800mで3勝を挙げ、チューリップ賞-G3では4着となってブラックタイプまであと一歩のところまで来ていた。シルヴァーホーク産駒の祖母シルヴァースカヤUSAは仏G3に2勝し、産駒セヴィルは豪メトロポリタンH-G1に勝ち、同シルバーステートは本年産駒デビューの新種牡馬としてランキング首位を争う成功を収めている。4代母の孫シックスセンスは京都記念の勝ち馬で、ディープインパクトがいなければクラシックのひとつも勝てたであろう実力馬。ガリレオ牝馬はディープインパクトとの配合からサクソンウォリアーやスノーフォールといった英クラシック勝ち馬を出しているので、サンデーサイレンスUSA系との相性が悪かろう筈がない。

 牝馬の菊花賞勝利は1943年ブラウニーと1947クリフジの2頭。1970年代以降はダンスパートナーとメロディーレーンの5着が最高。しかし△ディヴァインラヴはオーソクレースと同じパターンの配合。大駆けがあるかもしれない。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2021.10.24
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