2021ジャパンC


2度目なら飛べるさ

 ブリーダーズCフィリー&メアターフ-G1で日本調教馬として初のブリーダーズカップ制覇を果たしたラヴズオンリーユーはディープインパクト×ストームキャット牝馬の組み合わせだった。その2時間後のブリーダーズCディスタフ-G1はマルシュロレーヌが日本調教馬として初の米国ダートG1制覇を単勝50.9倍、11頭立て9番人気で果たした。こちらはオルフェーヴル×フレンチデピュティUSA牝馬の組み合わせだった。どちらもサンデーサイレンスUSA系であって、1989年ブリーダーズCクラシック-G1勝ち馬の子孫が父祖の地に恩返しをしたということになる。ディープインパクト×ストームキャットには過去にもエイシンヒカリ、キズナ、リアルスティール、スタディオブマンといった国際派が多く、オルフェーヴルとフレンチデピュティUSAはいずれも穴属性が高いというか大レースでの大駆けがある血統ということができる。このようにサンデーサイレンスUSAの導入からおよそ30年でそれぞれの分枝がそれぞれの活躍分野を確立して繁栄しているのは素晴らしい。このジャパンカップ-G1は下表に示したようにサンデーサイレンスUSAとミスタープロスペクターの組み合わせが(出走頭数も多いのだが)好成績を残していて、雑にまとめるとサンデーサイレンスUSAの瞬発力とミスタープロスペクターのパワーが生きる舞台ということになる。
 ディープインパクト産駒の◎コントレイルは母の父が米チャンピオンサイアーのアンブライドルズソング。アンブライドルズソングはブリーダーズCジュヴェナイル-G1とフロリダダービー-G1に勝ち、その父アンブライドルドはケンタッキーダービー-G1とブリーダーズCクラシック-G1の勝ち馬、そこからメトロポリタンH-G1勝ち馬ファピアノを経てミスタープロスペクターに遡る。血統表中に並ぶサンデーサイレンスUSAもアンブライドルドも3歳でケンタッキーダービー-G1とブリーダーズCクラシック-G1に勝っているので3歳集約型といえて、それはそれで現代競馬に求められる重要な資質であるが、古馬になっての上積みに過大な期待もできないということではある。ただ、父は4歳でジャパンカップ-G1に勝っているし、祖母の父ティズナウは3歳時にジャイアンツコーズウェイをクビ差抑えてブリーダーズCクラシック-G1を制し、翌年もサキーやガリレオら欧州の名馬を退けて連覇を達成した。本馬の祖母フォークロアはブリーダーズCジュヴェナイルフィリーズ-G1に勝ち、ティズナウの牝馬の代表産駒となった。ティズナウの父の母ティズリーUSAはリファールの娘でキタサンブラックの3代母でもあるので、アルザオとティズリーを経由したリファールの血の活用が共通しているという点では、キタサンブラック的成長力に期待することができるのかもしれない。


サンデーサイレンスUSA系とミスタープロスペクター系の組み合わせ
年度着順馬名性齢母の父人気
2003ザッツザプレンティ牡3ダンスインザダーク[SS]Miswaki[MP]5
2004ゼンノロブロイ牡4サンデーサイレンスUSAマイニングUSA[MP]1
2005ゼンノロブロイ牡5サンデーサイレンスUSAマイニングUSA[MP]1
2007アドマイヤムーン牡4エンドスウィープUSA[MP]サンデーサイレンスUSA5
2010ローズキングダム牡3キングカメハメハ[MP]サンデーサイレンスUSA4
ヴィクトワールピサ牡3ネオユニヴァース[SS]Machiavellian[MP]8
2013デニムアンドルビー牝3ディープインパクト[SS]キングカメハメハ[MP]7
2014スピルバーグ牡5ディープインパクト[SS]Lycius[MP]6
2015ラストインパクト牡5ディープインパクト[SS]ティンバーカントリーUSA[MP]7
ラブリーデイ牡5キングカメハメハ[MP]ダンスインザダーク[SS]1
2016シュヴァルグラン牡4ハーツクライ[SS]Machiavellian[MP]6
2017シュヴァルグラン牡5ハーツクライ[SS]Machiavellian[MP]5
2018アーモンドアイ牝3ロードカナロア[MP]サンデーサイレンスUSA1
キセキ牡4ルーラーシップ[MP]ディープインパクト[SS]4
スワーヴリチャード牡4ハーツクライ[SS]Unbridled's Song[MP]2
2019スワーヴリチャード牡5ハーツクライ[SS]Unbridled's Song[MP]3
カレンブーケドール牝3ディープインパクト[SS]母がMP5×3×45
ワグネリアン牡4ディープインパクト[SS]キングカメハメハ[MP]2
2020アーモンドアイ牝5ロードカナロア[MP]サンデーサイレンスUSA1
コントレイル牡3ディープインパクト[SS]Unbridled's Song[MP]2
[SS]はサンデーサイレンスUSA系、[MP]はミスタープロスペクター系

 天皇賞(秋)-G1のエフフォーリアがコントレイルとグランアレグリアをまとめて破ったことだけで、その父エピファネイアをディープインパクトキラーと呼んでいいのか、疑問が残らないではないが、かつてのサンデーサイレンスUSAに対するブライアンズタイムのようなカウンターとはなり得る。○アリストテレスは母の父がディープインパクトだから、それとエピファネイアの母の父スペシャルウィークを経由したサンデーサイレンスUSA4×3となる。父系のロベルトよりもサンデーサイレンスUSAを強調したこの配合はデアリングタクトでもエフフォーリアでも成功しており、サンデーサイレンスUSAの血の新しい生かし方のひとつの典型ともなっている。母ブルーダイアモンドは未勝利に終わっているが、祖母グレースアドマイヤは5勝を挙げ府中牝馬Sで2着。産駒には阪神大賞典のリンカーン、フローラS2着のグローリアスデイズ、皐月賞馬ヴィクトリー、孫には青葉賞-G2のアドミラブル、曾孫にはクイーンC-G32着のアールドヴィーヴルが出て、今も大発展の途上にある。3代母バレークイーンIREは日本ダービー馬フサイチコンコルド、京成杯のボーンキング、皐月賞のアンライバルドを送った名牝。4代母サンプリンセスは英オークス-G1、ヨークシャーオークス-G1、英セントレジャー-G1に勝ち、凱旋門賞-G1でも2着となった名牝。菊花賞-G1の僅差2着のパフォーマンスをいまだ超えられていないが、本当の良さが出てくるのはこれからではないかと思える。

 マルシュロレーヌの快挙によりオルフェーヴル産駒で大仕事をするのは牝馬ではないか説がいよいよ強くなってきた昨今ではあるが、ステイゴールド系のような難しい面のある血統は、取り扱いのノウハウができればそういった壁を超えられる面もある。▲オーソリティは母ロザリンドがエピファネイアの全妹という良血。ステイゴールドとスペシャルウィークを経由したサンデーサイレンスUSA3×4の近交によってシンボリクリスエスUSAを挟む形だから、アリストテレスのアナグラム的な構成となっている。サドラーズウェルズの血が入る点も両者に共通している。

 △シャフリヤールはこのレースに出ている「ディープインパクト産駒のダービー馬」の先輩方が楽ではない道を歩んできたことを感じて奮起するのか、そういった事情はさっぱり分からないか、どちらかといえば後者であろう。それはともかく、ディープインパクト牡駒のG1・2勝目への壁は以前ほどではなくても、まだそこそこ高い。全兄アルアインはその壁を超えた1頭だが、皐月賞-G1から5歳の大阪杯-G1まで、約2年を要した。母は4歳春にGレース初制覇、5歳秋にブリーダーズCフィリー&メアスプリント-G1に勝った晩成型。その点の成長力は期待できる。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2021.11.28
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