2021阪神ジュベナイルフィリーズ


踊る勇者の血が騒ぐ

 このレースが阪神競馬場の改修を受けて外回り1600mで行われるようになったのが2009年。リニューアル後最初の勝ち馬がウオッカだったのは象徴的で、以降、下表の通りこのレースの卒業生がその後に制したG1(およびG1級)競走の数は22に上る。ひょっとするとこの週末にはレシステンシアによって香港のG1がひとつ上乗せされるかもしれない。その後G1(およびG1級)に勝った8頭のうち4頭は牡馬相手のG1に勝っているので、血統的には力強くステイヤー寄りのものを選ぶのが正解への近道となりそうだ。
 ◎ナミュールは3代母が1997年の桜花賞馬キョウエイマーチ。その父ダンシングブレーヴUSAは1986年の凱旋門賞馬で、少なくとも1980年代最強の競走馬。日本では1992年から種牡馬として供用され、1999年に死ぬまで263頭の産駒を残した。その中から牝馬はエリモシック、キョウエイマーチ、テイエムオーシャンの3頭のG1級産駒が生まれている。キョウエイマーチが残した唯一の牝駒がフレンチデピュティUSAを父とするヴィートマルシェで、競走馬としてはダート1000mで1勝を挙げるのみにとどまったが、産駒マルシュロレーヌは去る11月6日のブリーダーズCディスタフ-G1制覇という競馬史に残る快挙を成し遂げた。その半姉にあたるのが母サンブルエミューズで、ダイワメジャー産駒らしいスピードを武器に芙蓉Sなど3勝を挙げ、フェアリーS-G3で3着となった。父のハービンジャーGBは2010年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスS-G1をレース史上最大となる11馬身差で制した名馬。翌年から日本で種牡馬入りし、3年目の産駒からエリザベス女王杯-G1のモズカッチャン、マイルチャンピオンシップ-G1のペルシアンナイトと立て続けにG1勝ち馬が出た。これを受けて2018年には種付頭数が214頭に達して種牡馬としての実力と人気がピークに達するわけだが、このときの産駒が本馬を含む現2歳世代となる。ハービンジャーGB自身はデビューが3歳4月、“キングジョージ”の大パフォーマンスが4歳夏のことで、ステイヤーらしい晩成型であるのは確かだが、2歳重賞でもドレッドノータス、ニシノデイジーの2頭で3勝を挙げている。3歳時に秋華賞-G1を、5歳時にナッソーS-G1を勝ったディアドラでも2歳時にファンタジーS-G33着の実績があるくらいなので、ステイヤー向きのこの舞台なら遺憾なく力を発揮できるだろうという見立て。


阪神JFは名牝への登竜門
年度勝ち馬その後の主な重賞勝ち鞍
2006ウオッカタニノギムレットジャパンC-G1、天皇賞(秋)-G1、安田記念-G1×2、ヴィクトリアマイル-G1、東京優駿
2007トールポピージャングルポケット 優駿牝馬
2008ブエナビスタスペシャルウィーク ジャパンC-G1、天皇賞(秋)-G1、ヴィクトリアマイル-G1、優駿牝馬、桜花賞
2009アパパネキングカメハメハ ヴィクトリアマイル-G1、秋華賞-G1、優駿牝馬-G1、桜花賞-G1
2010レーヴディソールアグネスタキオン チューリップ賞-G3
2011ジョワドヴィーヴルディープインパクト 
2012ローブティサージュウォーエンブレムUSA キーンランドC-G3
2013レッドリヴェールステイゴールド 
2014ショウナンアデラディープインパクト 
2015メジャーエンブレムダイワメジャー NHKマイルカップ-G1、クイーンC-G3
2016ソウルスターリングFrankel優駿牝馬-G1、チューリップ賞-G3
2017ラッキーライラックオルフェーヴル大阪杯-G1、エリザベス女王杯-G1×2、チューリップ賞-G2
2018ダノンファンタジーディープインパクト ローズS-G2、チューリップ賞-G2
2019レシステンシアダイワメジャー セントウルS-G2、阪急杯-G3
2020ソダシクロフネUSA桜花賞-G1、札幌記念-G2
阪神外回り1600mとなった2006年以降。☆は父が当該年度産駒デビューの新種牡馬

 初年度産駒デアリングタクトに続いて2年目からも天皇賞(秋)-G1のエフフォーリアを送ったエピファネイアは、今年度の種付料が1800万円に設定され、現役種牡馬のトップとなった。何だかんだいってもステイヤー寄りの種牡馬が強いですね。○サークルオブライフは母がクロッカスSなど3勝を挙げたシーブリーズライフ。その父はサンデーサイレンスUSA×ビワハイジの良血アドマイヤジャパンで、祖母プレシャスライフの父がタイキシャトルなので、母はヘイロー3×4、カーリアン3×4の近交となる。そこにエピファネイアが配合されて、同馬の一流産駒の定型ともいえるサンデーサイレンスUSA4×3の近交となった。これなら瞬発力にも不足がない。ストームキャット産駒の3代母スターマイライフUSAは米国産の輸入競走馬でダート1000mで1勝。孫のスティールパスはスパーキングレディーCに、同トレンドハンターはフラワーC-G3に勝ち桜花賞-G1で3着となった。4代母グレートレディエムの産駒にはブリーダーズCディスタフ-G1などG1・11勝の歴史的名牝レディーズシークレット、孫にはスプリンターズSと高松宮記念に勝った短距離の名牝ビリーヴがいる。ナミュールにはニジンスキー、ノーザンテーストCAN、デピュティミニスターというカナダのE.P.テイラー・ブランドのノーザンダンサー直仔の血が入るが、こちらはニジンスキーが3本とストームバードが入っていて、同ブランドの異デザインになっている。

 ウオッカ、ソウルスターリング、ラッキーライラックはそれぞれの父の初年度産駒だった。新種牡馬産駒が強いというほどの例にはならないが、そういう狙いがないこともないとはいえる。▲ウォーターナビレラはの父シルバーステートはディープインパクト直仔の新種牡馬。新馬戦で後のヴィクトリアマイル-G1勝ち馬アドマイヤリードにアタマ差敗れたあと、中京芝1600mの未勝利戦をレコード勝ちし、続く紫菊賞を上がり3F推定32秒7の脚で差し切った。その後、屈腱炎で1年7カ月の休養を挟み条件戦を連勝。5戦4勝で引退して種牡馬になると、初年度から種付頭数191に及ぶ人気を博した。既に本馬のほかにもロンが野路菊Sに、ベルウッドブラボーがダリア賞に勝って産駒3頭がオープン馬になっており、これは目下の新種牡馬ランキング首位であるドレフォンUSAの2頭を凌ぐ。母の父キングヘイローは今年好調で、特に秋はディープボンドのフォワ賞-G2に始まって、アサマノイタズラのセントライト記念-G2、ピクシーナイトのスプリンターズS-G1、本馬のファンタジーS-G3、イクイノックスの東スポ杯2歳S-G2と快進撃が続いている。キングヘイローはダンシングブレーヴUSAの日本での牡馬の代表産駒だから、マルシュロレーヌの例と合わせて母系に潜むダンシングブレーヴUSAの血がこの秋の隠しテーマなのかもしれない。

 △ラブリイユアアイズは新種牡馬ロゴタイプ産駒で、牝系は今年の英ダービーと“キングジョージ”に勝ったアダイヤーと同じアナオブサクソニー系。祖母アーヴェイGBはデインヒルダンサーの娘でフラワーボウル招待S-G1でレッドディザイアを破った。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2021.12.12
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