2021天皇賞・春


父たちの戦いは続く

 皐月賞-G1をエフフォーリアが勝ったことで、その父エピファネイアにとっては2年連続産駒のクラシック制覇となった。これで種牡馬エピファネイアのG1成績は9戦して(4.2.1.2)。初年度産駒デアリングタクトの存在が大きいが、それでも驚異的なものとなった。現役時のライバルであり、現在も種牡馬ランキング上でともにベストテン内で争っているキズナは、下表に示した通りグレードレース勝ち馬の数や産駒収得賞金、また、勝利頭数など多くのファクターでエピファネイアを上回る数値を示しているが、G1成績だけは27回の出走で(0.1.1.25)と大きな差をつけられている。アベレージが高いキズナと当たれば大きいエピファネイア、それぞれの父ディープインパクトとシンボリクリスエスUSAの資質を部分的に反映したかのようだ。これら2頭の種牡馬としてのライバル関係はまだ始まったばかりだが、今回のアリストテレス対ディープボンドの対戦は、主役コントレイルがいた菊花賞-G1、道悪に水を差された阪神大賞典-G2を経て、3度目にして初めて対決と呼べる本格的なライバル性を帯びてきたようだ。
 G1でのエピファネイア産駒の強さと、昨年の菊花賞-G1でのコントレイルからの着差を考えるとは素直にアリストテレスでいいのではないだろうか。母ブルーダイアモンドの父がディープインパクトなので、配合の柱はサンデーサイレンスUSA4×3の近交となる。これはデアリングタクトにより初めてG1での成功を見た様式だが、エフフォーリアがハーツクライ牝馬から生まれているように、エピファネイア産駒の標準装備といっていいほど。祖母グレースアドマイヤはトニービンIREの娘で芝で5勝。その中には2500mでの勝利もある。重賞勝ちこそないが、府中牝馬Sでは同い年のメジロドーベルにハナ差まで迫って高い能力を示した。しかし、グレースアドマイヤが本領を発揮したのは繁殖入りしてからで、産駒から阪神大賞典のリンカーン、ローズS2着のグローリアスデイズ、皐月賞馬ヴィクトリー、孫からは青葉賞-G2のアドミラル、ターコイズS-G32着のエスポワール、曾孫からはクイーンC-G32着のアールドヴィーヴルらが現れた。3代母バレークイーンIREは1993年に後の日本ダービー馬フサイチコンコルドを生み、それから13年後に皐月賞馬アンライバルドを生む記録的な活力の維持を示した。バレークイーンIREはサドラーズウェルズ産駒なので、同馬の4×4ともなる。4代母サンプリンセスはオークス-G1、ヨークシャーオークス-G1、セントレジャー-G1に勝ち、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS-G1で3着、凱旋門賞-G1で2着となった名牝。1972年生まれの5代母サニーヴァリーからは別の分枝もさまざまに発展しており、名門牝系として50年近くずっと一線級に子孫を送り続けた。


2010年生まれの好敵手
キズナ エピファネイア
2010年3月5日、新冠産生年月日、産地2010年2月11日、安平産
ディープインパクト
キャットクイルCAN
Storm Cat
血統:父

母の父
シンボリクリスエスUSA
シーザリオ
スペシャルウィーク



ラジオNIKKEI杯2歳SG3
弥生賞G2
東京優駿G1
大阪杯G2



京都新聞杯G2
ニエル賞G2
毎日杯G3
その他重賞勝ち鞍ジャパンCG1
菊花賞G1
神戸新聞杯G2
L121(3、4歳時)最高レーティングL129(4歳時)
47639.9万円収得賞金(国内のみ)68779.5万円
182頭初年度産駒血統登録157頭
2位種牡馬ランキング※3位
248847.6万円初年度産駒収得賞金189298.3万円
ディープボンド-G2
マルターズディオサ-G2
アブレイズ-G3
クリスタルブラック-G3
ビアンフェ-G3
バスラットレオン-G2[2]
ファインルージュ-G3[2]
主な産駒
([2]は2年目の産駒)
デアリングタクト-G1
アリストテレス-G2
エフフォーリア-G1[2]
オーソクレースL[2]
※種牡馬ランキングはJBISサーチ4月27日現在、世代別2017年生(賞金は2歳時からの合計)

 ○ディープボンドは父系曽祖父サンデーサイレンスUSAと、母の父キングヘイローの母グッバイヘイローUSAを経由したヘイロー4×4の近交馬。ヘイローの牡牝の代表産駒を経由した近交は、ダノンシャンティやワンアンドオンリーらで成功したサンデーサイレンスUSA×グローリアスソングの組み合わせが成功しているが、競走馬としてならマザーグースS-G1、CCAオークス-G1、ケンタッキーオークス-G1など2〜4歳時G17勝のグッバイヘイローUSAが格上。それはともかく、ダンシングブレーヴUSA×グッバイヘイローUSAという英米の夢の配合を日本で実現したキングヘイローの血の威力は母の父としてもここ一番で発揮されると思うのだ。祖母モガミヒメの孫ローレルゲレイロは高松宮記念-G1とスプリンターズS-G1に勝ったキングヘイローの牡馬の代表産駒。アリストテレスのようにリッチなブラックタイプを誇る牝系ではないものの、4代母の曾孫には中山牝馬S-G32着のリュヌルージュといった最近の活躍馬も出ている。5代母クリヒデは1962年秋の天皇賞に勝った名牝で、子孫にはカブトヤマ記念のクリアヤメ、アルゼンチン共和国杯のクリイワイ、札幌3歳Sのビッグディザイアーらが出る。6代母ケンタッキー、7代母英月へと遡るユートピア牧場・大東牧場の栗林家の古い名門牝系だ。

 ▲オーソリティはアメリカンオークス-G1、優駿牝馬に勝ったシーザリオの孫。したがって、エピファネイア、リオンディーズ、サートゥルナーリアらのG1・3兄弟の甥にあたる。母はシンボリクリスエスUSA産駒なので、エピファネイアのひとつ下の全妹だ。本馬は父がオルフェーヴルなので、サンデーサイレンスUSA3×4の近交となる。シーザリオの母キロフプリミエールGBはブリーダーズCマイル-G1のバラシアなど1990年代に大成功したサドラーズウェルズ×ハビタットのニックスで、そのキーがターントゥ5×4の近交だった。ターントゥの曾孫であるサンデーサイレンスUSAの近交の、その成功の陰にキロフプリミエールGBありということなのかもしれない。

 大阪杯-G1の勝ち馬は高野厩舎の連勝中のディープインパクト産駒レイパパレだった。同じ属性の△ディアスティマは現役唯一の阪神芝3200mの勝ち馬。母スウィートリーズンUSAは2歳時に5¾馬身差で圧勝したスピナウェイS-G1など2、3歳時G1・3勝の名牝。祖母リヴァーモアレスリーはクリムズンサタン3×3の強烈なスプリント配合だが、超長距離ゆえの血統的逆張りもありだろう。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2021.5.2
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