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競走馬の世界ランキングであるワールドベストレースホースランキングの発表に合わせて、昨年からJRAとNARから主要競走の年間レースレーティングが発表されるようになった。レーティングとはレースにおける着順、着差、負担重量の関係性を数値に置き換えたもので、先着した方がレーティングの数値が大きくなり、同様に着差は大きい方が、負担重量は重い方が数値が大きくなる。数値が大きければ大きいほど強いということで、この単純明快さがレーティング・システムの優れたところではある。レースレーティングは当該レースの上位4頭のレーティングの平均値でレース毎に算出され、年間レースレーティングは上位4頭の年度末までに得たレーティングの平均となる。レースのレベルの年度末での確定評価と考えればいい。この年間レースレーティングの3年間の平均をパターンレースレーティングといい、これと直近の年間レースレーティングが115を超え、日本グレード格付け管理委員会及びアジアパターン委員会の承認を得られればG1格付けを得ることができる。牝馬限定戦、2歳戦に関してはそれぞれ5点のアローワンスが認められる。正式なグレードに関してはレーティング以外にも要件があるので、地方競馬主催のほとんどの重賞は正式なグレードを得ていない。下表はJRAとNARから発表された年間レースレーティング一覧からダート主要競走を抜粋したもの。格付けの安定という点から、降格に関してはさまざまに緩衝措置があり、レーティングが115を下回ったら即座に降格とはならないが、現時点で堂々とG1を名乗れるのはチャンピオンズカップ-G1だけになってしまった。芝競馬は世界の年間レースレーティング・トップ10に4競走もランクイン──ジャパンカップ-G1(年間レースレーティング=124.50)、天皇賞(秋)-G1(123.75)、安田記念-G1(123.25)、有馬記念-G1(122.75)──しているというのに、ダート競馬はわずかずつとはいえ退潮傾向にあるのではないだろうか。もっとも、ダート競馬のレーティングはジャパンカップダートのクロフネUSAが125、ドバイワールドカップ-G1のヴィクトワールピサ122、同2着トランセンド121と、この3頭しか120以上を得たものがいない。どれだけ強くても120未満という不文律でもあるのかしらんといえるほど、天井が決まっている感もあるので、そうなるとおのずとレースレーティングもこぢんまりとしたものにならざるを得ない。 以上の傾向と、トップクラスの中東遠征が常態化すると、このレースは選手権的な場から新鋭の躍進の場へと変化していくと考えるのが無理がない。◎ヘリオスは3歳時の去勢が転機となったか、4歳で急上昇を示した。オルフェーヴル産駒には女傑ラッキーライラックと入れ替わるように牡馬の活躍馬が相次いでおり、昨年後半からの牡馬のグレード勝ちはオーソリティのアルゼンチン共和国杯-G2、バイオスパークの福島記念-G3、オセアグレイトのステイヤーズS-G2、ジャスティンのカペラS-G3、ショウリュウイクゾの日経新春杯-G2、ラーゴムのきさらぎ賞-G3と、それまでの年間2、3勝ペースとは明らかに勢いが違う。また、ジャスティンは東京スプリントと東京盃に勝ってダートの開拓者となった。こういったノーザンテーストCAN的な万能ぶりは種牡馬オルフェーヴルの隠し属性のひとつと見ることができる。母の父はクロフネUSAの父でもあるフレンチデピュティUSAで、その父はノーザンダンサー系のダート担当ともいえるデピュティミニスター。サンデーサイレンスUSAとデピュティミニスターの組み合わせではゴールドドリーム(ゴールドアリュール×フレンチデピュティUSA)、サクセスブロッケン(母がサンデーサイレンスUSA×デピュティミニスター)、カネヒキリ(フジキセキ×デピュティミニスター)らの大物がこのレースにも実績を残した。祖母がフジキセキ産駒なので、近頃はやりのサンデーサイレンスUSA3×4の近交となる。3代母シャンランIREの産駒にフラワーCのショウナンタレント、共同通信杯のショウナンアルバ、青葉賞-G32着のショウナンパルフェがいる。6代母デスレイの娘シュートアラインは愛オークス-G1、ヨークシャーオークス-G1に勝ち、その孫に米2冠馬サンダーガルチUSAが出ている。デピュティミニスターの父ヴァイスリージェントとオルフェーヴルが4×3で持つノーザンテーストCANはいずれもカナダの大オーナー・ブリーダー、E.P.テイラーの手になるノーザンダンサー直仔の傑作。これらが血統表に並んだ際には若干の能力の底上げが期待できる。 |
| ダート主要競走の年間レースレーティングとその3年平均 | ||||||||
| 2020年 実施日 | レース名 | 競馬場 | 距離 | 年間レースレーティング | 3年平均 (2018〜2020) | |||
| 2018 | 2019 | 2020 | ||||||
| 1月29日 | 川崎記念 | 川崎 | 2100 | 112.50 | 111.75 | 110.00 | 111.42 | |
| 2月21日 | フェブラリーS-G1 | 東京 | 1600 | 114.25 | 111.75 | 112.75 | 112.92 | |
| 5月5日 | かしわ記念 | 船橋 | 1600 | 115.25 | 113.50 | 113.50 | 114.08 | |
| 6月24日 | 帝王賞 | 大井 | 2000 | 114.00 | 114.25 | 116.50 | 114.92 | |
| 7月8日 | ジャパンダートダービー | 3歳 | 大井 | 2000 | 112.50 | 110.25 | 105.00 | 109.25 |
| 10月12日 | マイルチャンピオンシップ南部杯 | 盛岡 | 1600 | 114.50 | 112.50 | 113.50 | 113.50 | |
| 11月3日 | JBCクラシック | 大井 | 2000 | 115.00 | 111.25 | 114.75 | 113.67 | |
| 11月3日 | JBCスプリント | 大井 | 1200 | 111.00 | 106.75 | 112.00 | 109.92 | |
| 11月3日 | JBCレディスクラシック | 牝馬 | 大井 | 1800 | 105.75 | 104.50 | 103.75 | 104.67 |
| 12月5日 | チャンピオンズカップ-G1 | 中京 | 1800 | 113.75 | 116.75 | 115.00 | 115.17 | |
| 12月16日 | 全日本2歳優駿L | 2歳 | 川崎 | 1600 | 105.75 | 105.75 | 101.50 | 104.33 |
| 12月29日 | 東京大賞典-G1 | 大井 | 2000 | 115.50 | 113.75 | 110.75 | 113.33 | |
| ※JBC3競走は持ち回り(2019年=浦和、2018年=京都)で距離も変更あり | ||||||||
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アグネスタキオン産駒で京都記念に勝ったアドマイヤオーラはわずか5世代を残しただけで死んだが、産駒からは兵庫チャンピオンシップのクロスクリーガー、さきたま杯のノボバカラをはじめ、ダートで活躍するものが続出した。○アルクトスは父の最後から2番目の世代、産駒数でいえば実質的なラストクロップに相当する2015年生まれ。母の父シンボリクリスエスUSAは直仔にサクセスブロッケンがいるほかチャンピオンズカップ-G1のルヴァンスレーヴもいて、そのパワーがダートで生きる場合も多い。シーキングザゴールド産駒の祖母はアシュランドS-G1・2着、ブラックアイドスーザンS-G2・2着など米国の3歳牝馬戦線のトップクラスで善戦を繰り返した。 ▲カフェファラオUSAは3歳春までは大スター候補と見られたが、その後は走ったり走らなかったり。まだサンプル数は少ないが、父系のエンパイアメーカーUSA的な落差の大きさが強調されている面はあるのかもしれない。それがいい方に出ればG1でも力負けすることはない。母メアリズフォリーズは芝8.5FのミセスリヴィアS-G2の勝ち馬。本馬の兄ナイトプラウラー、姉リーガルグローリーはいずれも米重賞勝ち馬。 △レッドルゼルの父ロードカナロアの産駒は昨年、日、豪、愛、港でグレード勝ち馬を出した。ダートG1も時間の問題だろう。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2021.2.21
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