2021天皇賞(秋)


限界を突破する飛行機雲

 ディープインパクト産駒のG1複数勝利記録は牝馬の場合ジェンティルドンナが7勝(2012〜2014年)、グランアレグリア5勝(2019〜2021)、スノーフォール3勝(2021)、2勝はヴィルシーナ(2013、2014)、ショウナンパンドラ(2014、2015)、ミッキークイーン(2015)、マリアライト(2015、2016)、ヴィヴロス(2016、2017)の5頭。牡馬はコントレイルが4勝(2019、2020)、フィエールマン3勝(2018〜2020)、2勝はリアルインパクト(2011〜2015)、ミッキーアイル(2014〜2016)、サトノサイヤモンド(2016)、アルアイン(2017〜2019)、ワールドプレミア(2019〜2021)の5頭。牡馬で最初にG12勝を達成したのは2015年3月のジョージライダーS-G1に勝ったリアルインパクトで、そのころ既に牝馬にはG1複数勝ち産駒が多数出ていて、ディープインパクトの牡駒はその部分の比較で牝馬に劣るのではないかと言われたりもした。しかし、近年はフィエールマン、コントレイルらの出現によって、劣勢を挽回しつつあるようにも見える。ピークの高さと活躍期間の長さが両立するようになってきたのではないだろうか。
 ◎コントレイルはディープインパクト産駒の牡馬としてG1最多勝であるだけでなく、近年はブルードメアサイアーとして大成功しているアンブライドルズソング(下表)の娘の産駒としてもG1最多勝を達成している。現役時のアンブライドルズソングはブリーダーズCジュヴェナイル-G1、フロリダダービー-G1などに勝ったが、ケンタッキーダービー-G1では1番人気に支持されながら5着に終わっている。巨大な馬で、持てるパワーと足元のバランスがとれず、競走生活の後半で精彩を欠いた印象もある。種牡馬としてはソングアンドアプレイヤーからアロゲートまで多くの活躍馬を出し、後継種牡馬にも恵まれてファピアノ〜アンブライドルド系の主流となりつつある。母の父としての成功も目をみはるもので、特に日本ではサンデーサイレンスUSA系全般と相性の良さを示していて、大物も多い。祖母フォークロアはブリーダーズCクラシック-G1連覇のティズナウの娘で、自身ブリーダーズCジュヴェナイルフィリーズ-G1などG1に2勝し、2005年の米最優秀2歳牝馬に選ばれている。3代母コントライヴの孫にはこの夏のトラヴァーズS-G1までG14勝、11月のブリーダーズCクラシック-G1でも有力視されるエッセンシャルクオリティがいる。血統表3代までに、サンデーサイレンスUSA、アンブライドルド、ティズナウとブリーダーズCクラシック-G1勝ち馬の名前が並んでいる。これだけ見ても左回り2000mが最適といってもいいのではないでしょうか。


アンブライドルズソングの母の父としての成功
馬名産地毛色生年G1勝利
General Quartersジェネラルクオーターズ2006Sky MesaWRターフクラシックS-G1など2勝
Once Were Wildワンスワーワイルド黒鹿2006ヨハネスブルグUSAAJCオークス-G1
Mrs Onassisミセスオナシス鹿2007General NediymMRCオークレイプレート-G1
J.B.'s Thunderジェイビーズサンダー鹿2008サンダーガルチUSAブリーダーズフューチュリティ-G1
The Lumber Guyザランバーガイ2009Grand Slamヴォスバーグ招待S-G1
Unbridled Commandアンブライドルドコマンド2009Master Commandハリウッドダービー-G1
Rolling Fogローリングフォグ2010Posseデルマーフューチュリティ-G1
Touristツーリスト黒鹿2011TiznowブリーダーズCマイル-G1など2勝
トーホウジャッカル2011スペシャルウィーク菊花賞-G1
Carpe Diemカルペディエム2012Giant's CausewayブルーグラスS-G1など2勝
ダノンプラチナ2012ディープインパクト朝日杯フューチュリティS-G1
Zabeel Princeザビールプリンスセン2013Lope de Vegaイスパーン賞-G1
Leofricレオフリック2013Candy RideクラークH-G1
Gift Boxギフトボックス2013Twirling CandyサンタアニタH-G1
Sixties Songシックスティーズソング黒鹿2013Sixties Iconカルロスペレグリーニ大賞-G1など3勝
Voodoo Songヴードゥーソング2014English ChannelフォースターデイヴH-G1
Unique Bellaユニークベラ2014TapitクレメントL.ハーシュS-G1など3勝
Capezzanoカペッツァーノ鹿セン2014BernardiniアルマクトゥームチャレンジラウンドV-G1
Hot King Prawnホットキングプローンセン2014DenmanセンテナリースプリントC-G1
スワーヴリチャード2014ハーツクライジャパンC-G1など2勝
Civil Unionシヴィルユニオン鹿2015War FrontフラワーボウルS-G1
Moonshine Memoriesムーンシャインメモリーズ鹿2015Malibu MoonシャンデリアS-G1など2勝
Magnum Moonマグナムムーン鹿2015Malibu Moonアーカンソーダービー-G1
Restless Riderレストレスライダー2016Distorted HumorアルシバイアディーズS-G1
Volatileヴォラタイル2016ViolenceA.G.ヴァンダービルトH-G1
Maxim Rateマキシムレート2016Exchange RateゲイムリーS-G1
コントレイル青鹿2017ディープインパクト東京優駿-G1など4勝
Maracujaマラクジャ2018Honor CodeCCAオークス-G1

 ○グランアレグリアは母の父がタピット。こちらもコントレイル同様にディープインパクト×北米チャンピオンサイアーの組み合わせ。タピットは若いぶんブルードメアサイアーとしてはまだこれからで、本馬がその代表的存在といえる。タピット産駒が特に12FのベルモントS-G1で強いことや、祖母の父マーリンが北米芝G1で4勝を挙げたニジンスキー系のステイヤーで、母がニジンスキー4×4となること、5代母パーフェクトピジョンの産駒にはジャパンC-G1のゴールデンフェザントUSAがいることなどを考えると、2000mの距離に問題があるとは思えない。

 ディープインパクト直仔が6頭で孫が2頭という今どきのG1らしい偏りを示す出走馬の構成。対抗勢力としてはエピファネイア×ハーツクライの▲エフフォーリアに魅力がある。エピファネイアはジャパンC-G1と菊花賞-G1の勝ち馬だが、その父シンボリクリスエスUSA、母の父スペシャルウィークは秋の天皇賞に勝っている。祖母ケイティーズファーストUSAの孫にはジャパンC-G1のアドマイヤムーンがおり、愛1000ギニー-G1に勝った3代母ケイティーズの娘には名牝ヒシアマゾンUSAがいる。

 ハーツクライ産駒の5歳といえば、ジャスタウェイ、シュヴァルグラン、スワーヴリチャード、リスグラシューらに見るように世界レベルの大仕事を成し遂げることがある。△ヒシイグアスは母ラリズARGが1000mの亜G3に2勝し、南米版ブリーダーズCといえるエストレラススプリント大賞-G1(ダート1000m)で2着となったスプリンター。ずっとアルゼンチンで育った牝系で、祖母のレインボウコーナー×サザンヘイローのパターンは京都大賞典-G2で復活を遂げた日本ダービー馬マカヒキと同じ。ヘイロー3×5も共通する。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2021.10.31
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