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IFHA(国際競馬統括機関連盟)が年頭に発表している「ロンジン・ワールドトップ100G1レース」というリスト(https://www.ifhaonline.org/resources/WTGradedRanking/LWGRank.asp?batch=3)があって、これは世界の3歳およびそれ以上のG1レースを年間レースレーティングが高い順にランキングしたもの。1位は年間レースレーティング[126.25]の凱旋門賞-G1(勝ち馬ヴァルトガイスト)、2位[125.75]キングジョージ6世&クイーンエリザベスS-G1(エネイブル)、3位[124.25]プリンスオブウェールズS-G1(クリスタルオーシャン)、4位[123.00]エクリプスS-G1(エネイブル)と仏英の競走が続き、その次に5位[122.25]宝塚記念-G1(リスグラシュー)、6位タイとして[122.00]有馬記念-G1(リスグラシュー)が来る。これは驚くべきかというとそうでもなくて、昔からレーティング的な評価が高いのが宝塚記念-G1の特徴のひとつ。分かりやすいように勝ち馬の名を書いたが、年間レースレーティングは上位4頭の最終レーティングの平均なので、1年を終えて振り返ってみて、どれだけ強い馬が出走かつ上位を占めていたかが問われる。これらのうち牝馬エネイブルが2つのレースに勝ち、同じく牝馬リスグラシューも2つ。最高級のG1の上から6分の4を牝馬が勝った。凱旋門賞-G1にしても2着にエネイブルが入っていたがゆえにレースレーティングが高くなったといえる。ちなみに6位タイ英インターナショナルS-G1は牡馬のジャパンが勝ったが、6位タイのクイーンエリザベスS-G1は豪の名牝ウィンクス、9位[121.75]コックスプレート-G1はリスグラシューが制している。こうしてみると2019年は牝馬の年であったと断定することが可能だ。 コロナ禍に見舞われた今年、クラシックを中心に日程変更を強いられた欧米とは対照的に、日本の競馬は無観客ながらスケジュール通りに進められた。そういった中で、性の限定がない古馬G1は高松宮記念-G1、大阪杯-G1、安田記念-G1を牝馬が制した。局地的に前年以上の牝馬優位の傾向が続いているようだ。危機のときには牝馬が強いという説もあるが、コロナ禍はヒトの危機なので実際には関係ないのかもしれない。ずっと前から牝馬は強いし。2015年生まれ最初のG1勝ち馬である◎ラッキーライラックは、大阪杯-G1に勝ってこの世代ではアーモンドアイ、モズスーパーフレアに続く性の縛りのないG1の3頭目の勝ち馬となった。1世代で3頭出るのはジェンティルドンナ、ストレイトガール、サンビスタの2009年生世代以来。これより上はウオッカ、ダイワスカーレット、アストンマーチャン、スリープレスナイトを擁した2004年生まれだけだ。父のオルフェーヴルは2012年のこのレースの勝ち馬。サッカーボーイの母ダイナサッシュの血を引くものは、下表の牝系父系混載の変則的な系統図で示した通り過去のこのレースで大活躍しており、特にステイゴールド直仔は2009年から2014年の6年で5勝を挙げた。ステイゴールド直仔はもう現5歳が実質的な最終世代。ラッキーライラックには宝塚記念血統の世襲に道をつけるという重要なミッションもある。アシュランドS-G1に勝った母はトラヴァーズS-G1勝ち馬フラワーアリーの産駒。その父系はディストーティドヒューマーを経てフォーティナイナーUSAに遡る。祖母リファインメントはシアトルスルー産駒、3代母でエイコーンS-G1など米G1・4勝の名牝ステラマドリッドUSAはアリダー産駒と典型的な米国血統を集めた。オルフェーヴルを彷彿とさせる見た目でありつつ、それを拡大してよりパワフルにしたような体つきは米国クラシック血統の積み重ねゆえだろう。 |
| ダイナサッシュ家の宝塚記念実績(牡牝混合系統図) |
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ダイナサッシュ(牝、1979、父ノーザンテーストCAN) サッカーボーイ(牡、1985、父ディクタスFR) | ツルマルガール(牝、1991) | | ツルマルボーイ(牡、1998、父ダンスインザダーク)2002[2]、2003[2] | ヒシミラクル(牡、1999)2003[1] ベルベットサッシュ(牝、1986、父ディクタスFR) | ホールオブフェーム(牝、1991、父アレミロードUSA) | バランスオブゲーム(牡、1999、父フサイチコンコルド)2006[3] ゴールデンサッシュ(牝、1988、父ディクタスFR) ステイゴールド(牡、1994、父サンデーサイレンスUSA)1998[2]、1999[3] | ドリームジャーニー(牡、2004)2009[1] | ナカヤマフェスタ(牡、2006)2010[1] | オルフェーヴル(牡、2008)2012[1] | | ラッキーライラック(牝、2015) | ゴールドシップ(牡、2009)2013[1]、2014[1] | スティッフェリオ(牡、2014) | アフリカンゴールド(牡、2015) キューティゴールド(牝、2004、父フレンチデピュティUSA) ショウナンパンドラ(牝、2011、父ディープインパクト)2015[3] ( )内に父名があるのは牝系統 |
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○グローリーヴェイズは実際に香港ヴァーズ-G1でラッキーライラックに0秒6先着している。2012年ジャパンカップ-G1でオルフェーヴルがジェンティルドンナに敗れたように、ステイゴールドが切れ味で負ける相手はディープインパクトである場合が多い。スウェプトオーヴァーボードUSA産駒の母メジロツボネは芝1200mと芝1400mで2勝ずつ、合計4勝を挙げたスプリンターだが、祖母メジロルバートはメジロライアン産駒、3代母は三冠牝馬メジロラモーヌというメジロ牧場の歴史を凝縮したボトムラインなので、このようにステイヤーとして完成されれば信頼性の高いレースを続けるはずだ。 ステイゴールド直仔▲スティッフェリオは4歳11月と5歳2月にG3を連勝した。続いてG1に挑むと完敗し、秋にはオールカマー-G2に勝ったがG1では2桁着順に終わった。しかし、6歳を迎えるとアメリカJCC-G2・8着、日経賞-G2・3着と上昇を示し、天皇賞(春)-G1では2着となって初めてのG1連対を果たした。父は4歳春には天皇賞で2着となっていたから、父とは違う道程をたどっての遅い出世だが、フィエールマンにハナ差なら値千金といえるだろう。母シリアスアティテュードは2歳時にチェヴァリーパークS-G1に勝ち、4歳秋にも加G1ニアークティックSに勝った。いずれも芝6Fのレースなので成績的にはスプリンターだが、その父ムトトはキングジョージ6世&クイーンエリザベスS-G1勝ち馬で、バステッドに遡る貴重な英国ステイヤー血統。これからまだ伸びる余地がある。 昨年の1〜3着馬の父はハーツクライ、ルーラーシップ、ハーツクライ。いずれもその母の父はトニービンIREだ。一昨年3着のノーブルマーズがジャングルポケット産駒だったり、2011年にブエナビスタを抑えて勝ったアーネストリーの母の父がトニービンIREだったり、これは隠れた穴血統かもしれない。ルーラーシップ産駒△ダンビュライトは2016年の勝ち馬マリアライト、水曜日に帝王賞に勝ったクリソベリルがイトコ。実績と勢いを備えている。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2020.6.29
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