2020スプリンターズS


スプリント部門制圧を目指す大種牡馬

 日本ではコントレイルが現れ、欧州ではファンシーブルーがG1・2勝、オーストラリアでもフィアースインパクトが3つ目のG1勝ちを収めて今年もディープインパクト産駒の勢いはとどまるところを知らないが、そんな大種牡馬でも意のままにならないのがスプリント部門。下表の通り、高松宮記念-G1とスプリンターズS-G1には産駒が延べ21回挑んで2着3回、3着は2回あるもののまだ勝利がない。1代遡ってサンデーサイレンスUSAの両レースの成績を見ると、産駒デビューから3年後の1997年、2世代目のチアズサイレンスが高松宮杯に初挑戦、2000年にディヴァインライトが高松宮記念2着、2003年にスティンガーの同3着を経て、2002年のスプリンターズSをビリーヴが制した。産駒デビューから数えると偉大なサンデーサイレンスUSAでも8年かかったことになる。それでもその後はビリーヴの高松宮記念、デュランダルのスプリンターズS、アドマイヤマックス、オレハマッテルゼ、スズカフェニックスの高松宮記念を上乗せし、合計6勝の記録を残した。サンデーサイレンスUSA産駒の両レースへの出走数は初挑戦から最後まで14年で延べ44頭。ディープインパクト産駒は7年で21頭だから挑戦のペースとしては同じようなもの。国内芝G1完全制覇に向けてはそろそろスプリント部門も攻略しておきたいところだろう。
 ◎グランアレグリアは安田記念-G1でアーモンドアイに21/2馬身差をつけた。3着以下もインディチャンプ、ノームコア、ケイアイノーテック、アドマイヤマーズとG1勝ち馬が続いており、レースのレベルは大変な高さといえる。ワールドベストレースホースランキング掲載に1点足りない119のレーティングにとどまったのは不思議というほかないが、この上半期に限ればアーモンドアイを上回る評価を得てしかるべきだろう。それだけに今回の出走馬では実力はずば抜けていて、あとはスプリント部門でもレーティングの額面通りのパフォーマンスが可能かどうかということだけが焦点になる。母のタピッツフライUSAはタピット産駒にもたまに現れる芝馬で、ジャストアゲームS-G1、ファーストレディS-G1、ハニーフォックスS-G2と芝8Fの重賞に3勝している。逃げ差し自在の機動力もタピットらしくないといえばらしくないが、差しに回った際のグランアレグリアの決め手にはタピットらしさを見ることもできるだろう。祖母のフライングマーリンはニジンスキー系マーリン産駒で、こちらは米国で走ってダート1勝、その後3勝を芝で挙げている。3代母モーニングダヴがミスタープロスペクター系フォーチュネイトプロスペクト。4代母ピンクダヴの孫に優駿牝馬2着のベッラレイアがおり、5代母パーフェクトピジョンの産駒ゴールデンフェザントUSAはジャパンカップに勝った。母の配合はニジンスキー4×4、ミスタープロスペクター4×5×5、セクレタリアト5×5という米国色の強いもので、この辺りはG1レベルのスプリントへの対応を後押ししそうだ。


ディープインパクト産駒のスプリントG1挑戦史
馬名生年母の父レース着順人気オッズ
リアルインパクト2008Meadowlake2014高松宮記念G19716.7
フィエロ2009デインヒルUSA2017高松宮記念G15712.3
ウリウリ2010フレンチデピュティUSA2015スプリンターズSG1535.0
2016高松宮記念G1947.9
2016スプリンターズSG1131029.8
レッドオーヴァル2010Smart Strike2014高松宮記念G114923.2
2014スプリンターズSG13513.8
2015高松宮記念G114820.4
2015スプリンターズSG171231.5
サトノルパン2011ダンシングブレーヴUSA2016高松宮記念G118826.5
2016スプリンターズSG171497.3
ミッキーアイル2011ロックオブジブラルタルIRE2015高松宮記念G1335.2
2015スプリンターズSG1446.5
2016高松宮記念G1223.9
2016スプリンターズSG1228.2
アレスバローズ2012トニービンIRE2018スプリンターズSG114613.5
2019高松宮記念G19714.2
2019スプリンターズSG1101155.0
シャイニングレイ2012クロフネUSA2018高松宮記念G112832.6
ブランボヌール2013サクラバクシンオー2016スプリンターズSG111614.0
グランアレグリア2016Tapit2020高松宮記念G1224.1

 2015年に早世したスキャットダディはその年に生まれた産駒から高松宮記念のミスターメロディUSAと米三冠馬ジャスティファイを送っている。ヨハネスブルグUSAからヘネシーUSAを経てストームキャットへと遡るこの父系の発展する力というのはまだまだ保たれているようで、サンデーサイレンスUSAの血が広く浸透している日本においては第一に注目すべき父系といえるかもしれない。○エイティーンガールはヨハネスブルグUSA16歳時の種付け。同じ世代には佐賀記念に勝ったナムラカメタローもいるので、ちょっとしたリバイバル世代ということができる。アグネスタキオン産駒の母センターグランタスはダート1800mで1勝。ヘクタープロテクターUSA産駒の祖母センターライジングは4歳牝馬特別(東)を含む4勝を挙げた活躍馬。3代母ダイナオレンジはノーザンテーストCANの娘で新潟記念など8勝を挙げた。優駿牝馬のシャダイアイバーや安田記念のエアジハードが出るサワーオレンジUSA系。アグネスタキオン牝馬とストームキャット系種牡馬の組み合わせにはかしわ記念を6番人気で勝ったワイドファラオ、セントウルS-G2を10番人気で勝ったアクティブミノルらがおり、人気薄でも大駆けの期待できる破壊力を秘めている。ストームキャットとサンデーサイレンスUSAの組み合わせにミスタープロスペクター4×5、更にストームバードとノーザンテーストCANというカナダのE.P.テイラーの手になるノーザンダンサー直仔が4代目に並ぶあたりは字面を一見した以上に現代的な流行を取り入れた血統といえる。

 ▲ビアンフェは2016年にキーンランドC-G3に勝ち、勢いに乗って挑んだここで11着に敗れたディープインパクト産駒ブランボヌールの半弟。父がキズナに替わったことで、母の父サクラバクシンオーに頼っていたスプリントの要素がストームキャットによって補強されたともいえる。キズナ産駒が距離の長短、芝・ダートと様々な適性を示すのはストームキャットやダマスカスといった母が持つ血による面も大きそうで、そういった守備範囲の広さによって、あるいはディープインパクトより先にスプリントG1制覇を達成してしまうのかもしれない。

 △ダノンスマッシュは父ロードカナロアの歩んだ道を辿っているようで、なかなか父に追い付けない現状だが、G34勝のあとG22勝と着実にレベルアップは果たしてきた。母の父ハードスパンUSAはケンタッキーダービー-G1・2着、祖母ハリウッドワイルドキャットはブリーダーズCディスタフ-G1勝ち馬という底力のある血統。いつG1レベルに上昇しても驚けない。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2020.10.4
©Keiba Book