2020皐月賞


SS軍団に切り込むサドラーズウェルズ

 1990年代の輸入競走馬ブームのころ、アイルランドから高い馬を買ってきてもなかなか走らないのがサドラーズウェルズの直仔だった。外国産競走馬、または持込馬として産駒は日本で60頭が出走し、勝ち馬となったのは30頭。重賞勝ち馬はステイヤーズSのサージュウェルズIRE1頭だった。そんなわけでサドラーズウェルズの血は日本に合わないという風評とも定評ともいえる評価がつきまとうことになったのだが、それを覆したのは種牡馬として輸入された直仔でキングジョージ6世&クイーンエリザベスS-G1の勝ち馬オペラハウスGBだろう。1994年から供用されたオペラハウスGBは初年度産駒から南部杯のニホンピロジュピタを出し、その前に2年目の産駒テイエムオペラーが皐月賞に勝った。7年後にはメイショウサムソンが皐月賞と東京優駿を連勝した。稼働時期はサンデーサイレンスUSAとほぼ重なるのだが、サドラーズウェルズ系としてのはっきりとした個性が、サンデーサイレンスUSA時代だからこそ光るということがあった。そういった日本的なサンデーサイレンスUSA的な軽さへのアンチテーゼともいうべきサドラーズウェルズ系の存在感は時代が下っても健在で、インザウイングス、シングスピールIRE、ローエングリンを経て玄孫(4代孫)として生まれたロゴタイプが2013年の皐月賞-G1に勝っている。その後も2016年勝ち馬ディーマジェスティの祖母の父、昨年のサートゥルナーリアの祖母の父として、牝系に入って確かな影響力を及ぼしている。コース形態、レースの性格からして日本ダービー-G1よりも皐月賞-G1の方が力を生かしやすいという面もあるようだ。昨年はサドラーズウェルズの血が潜むものが大挙して出走していたが、今年は精鋭1頭。しかも父系直系からの登場となる。◎ダーリントンホールは2008年の英ダービー馬ニューアプローチから2001年の英ダービー馬ガリレオを経てサドラーズウェルズに遡る。ガリレオはサドラーズウェルズ系で現在最も勢力のある分枝というか、もはやガリレオ系が確立されている感さえある。ニューアプローチはその系統の柱として初年度産駒から英2000ギニー-G1のドーンアプローチ、英オークス-G1のタレントを出し、その後やや勢いを失ったが、2018年にはマサーが英ダービー-G1に勝ち、父系3代制覇を達成した。その母パークイクスプレスはフィーニクスチャンピオンS-G1やナッソーS-G2に勝った活躍馬で、名種牡馬アホヌーラの牝馬の代表産駒でもある。良血ではあるが、やや古風な面もあるので、コンスタントに活躍馬が出るわけではないのかもしれない。母のミスケントンはフランスで1戦未勝利。その父ピヴォタルはナンソープS-G1やキングズスタンドS-G2に勝った名スプリンターで種牡馬としてはマイラー系として大成功している。その父系はポーラーファルコンを経てヌレエフに遡るため、サドラーズウェルズと叔父ヌレエフによる4分の3同血の組み合わせとなり、エルコンドルパサーUSAをはじめ、この血統構成のバリエーションにより成功した例は多い。祖母ドゥザオナーズは芝1200mのモートリー賞-G3勝ち馬。その孫に2018年のメルボルンカップ-G1勝ち馬クロスカウンターがいる活気のある牝系。ディープインパクト、ハーツクライ、ステイゴールドらサンデーサイレンスUSA系の派閥闘争といった趣のある今回、まったくのよそ者といえる血統による一刀両断のシーンはありえる。


皐月賞におけるサドラーズウェルズの健闘
年度天気馬場馬名人気着順 血統表中
サドラーズウェルズの位置(★は直系)
1999テイエムオペラオー5父オペラハウスGBの父
マイネルシアター115父オペラハウスGBの父
2000稍重ピサノガルボ1413父カーネギーIREの父
2001ボーンキング416 母バレークイーンIREの父
2002バランスオブゲーム78 父フサイチコンコルドの母の父
2003小雨ブルーコンコルド1113 父フサイチコンコルドの母の父
2005ヴァーミリアン712 父エルコンドルパサーUSAの母の父
2006メイショウサムソン6父オペラハウスGBの父
2007ヴィクトリー7 祖母バレークイーンIREの父
ナムラマース511 母の父フレンチグローリーIREの父
2009アンライバルド3 母バレークイーンIREの父
2010稍重ゲシュタルト127 祖母フサイチカツラの父
エイシンアポロンUSA411 母 Silk and Scarlet の父
2011デボネア144 母の父シングスピールIREの祖父
トーセンラー57 祖母 Dance Image の父
2012稍重アダムスピーク518 母の父シングスピールIREの祖父
2013ロゴタイプ1父ローエングリンの3代父
エピファネイア2 祖母キロフプリミエールGBの父
サトノネプチューン1314 3代母バレークイーンIREの父
2014クリノカンパニー1718 父の父ミラクルアドマイヤの母の父
2015ミュゼエイリアン117 母の父エルコンドルパサーUSAの母の父
2016ディーマジェスティ8 祖母シンコウエルメスIREの父
リオンディーズ25 祖母キロフプリミエールGBの父
2018稍重ジャンダルムUSA49父 Kitten's Joy の祖父
ジュンヴァルロ1515父 New Approach の祖父
2019サートゥルナーリア1 祖母キロフプリミエールGBの父
アドマイヤマーズ24 祖母の父シングスピールIREの祖父
ブレイキングドーン1311 祖母の父エルコンドルパサーUSAの母の父
シュヴァルツリーゼ712 3代母の父オールドヴィックGBの父
サトノルークス814 母リッスンIREの父
メイショウテンゲン915 祖母パパゴIREの父
ランスオブプラーナ1218父ケープブランコIREの祖父

 ○ヴェルトライゼンデは今をときめくオルフェーヴルの全兄ドリームジャーニーの産駒。同馬の産駒のこのレースへの出走歴は2016年のミライヘノツバサ1例だけで、そのときは12着に終わっているが、それから4年近くがたって、16番人気でダイヤモンドS-G3に勝った。ステイゴールド的意外性を全弟以上に備えているということもできる。母のマンデラはドイツ産で独オークス-G1・3着、フランスの2700mのポモーヌ賞-G1でも3着となった。産駒ワールドエースはゴールドシップが勝った皐月賞-G1で2着。ワールドプレミアは昨年の菊花賞-G1に勝った。それら兄はいずれもディープインパクト産駒だが、祖母の父ビーマイゲストはノーザンテーストCANによく似たノーザンダンサー直仔なので、ノーザンテーストCAN4×3の父とは相性がいいかもしれない。

 ▲コントレイルは東スポ杯2歳S-G3のパフォーマンスとホープフルS-G1のそれを比べると、東京の方が合っている可能性がある。とはいえ、中山を経験し、実際にそれに対応して見せたのだから老婆心に過ぎないのかもしれない。この父と母の父の組み合わせから朝日杯フューチュリティS-G1のダノンプラチナが出たほか、サンデーサイレンスUSA系とアンブライドルズソング牝馬の組み合わせは菊花賞-G1のトーホウジャッカル、ジャパンC-G1のスワーヴリチャードを送る日米合作の最先端血統。

 △サリオスは母サロミナが独オークス-G1勝ち馬。名牝シュヴァルツゴルトに遡るシュレンダーハン牧場のSラインのファミリー。成長力に富み日本での活躍馬も多い。


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