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エリザベス女王杯が阪神競馬場で行われたことは過去に1回だけある。今回と同じように京都競馬場のスタンド改築工事にともない1979年の第4回が阪神芝2400mで争われた。旧阪神の2400mというと最初のコーナーまでが随分慌ただしいことになるが、不良馬場での18頭立てのレースは1番人気のアグネスレディーを2番人気のミスカブラヤが大外から差し切った。ミスカブラヤは2冠馬カブラヤオーの全妹。その前年の第3回には2冠馬キタノカチドキの半妹リードスワローが勝っているので、名馬の妹が強いというこのレースに特徴的な傾向はこのころ既にできつつあった。エリザベス女王杯はそれまでの世代限定2400m戦から1996年に3歳以上の2200m戦となり、阪神競馬場は1991年に直線の坂ができ、2006年には外回りコースができて現在の姿になった。それぞれが時代とともに変化しているので、現在の阪神2200mで行われるエリザベス女王杯-G1は今回が初めてということになる。阪神2200mの重賞は何かの代替でない限り宝塚記念-G1しかない。季節が違うし性の限定もあるが、参考にするには最も適している。下表に示した種牡馬別成績で明らかなように、ステイゴールド直仔の活躍が目立つ。もともと宝塚記念はボイズィーボーイGB産駒カツラギエース、パーシャンボールド産駒パーシャンボーイGB、ビッグストーン産駒メイショウドトウIREなどいろいろな、むしろマイナーと呼べる血統が活躍する傾向が強く、逆にディープインパクト直仔がマリアライト1頭しか勝っていないということもある中で、4頭で5勝を挙げたステイゴールドの適性は特異なものだといえる。そうはいっても2015年に死んで現役産駒も減っていく以上、期待はその後継者に積み替える必要がある。今回はオルフェーヴル産駒が2頭、ゴールドシップ産駒が1頭出走している。生まれが1年早く、種牡馬入りが2年早いオルフェーヴルは既にG1も2頭で4勝の実績を残している。一方のゴールドシップは重賞勝ちがブラックホールによる昨年の札幌2歳S-G3ひとつだけ。ステイゴールド×メジロマックイーンのよく似た配合の2頭の比較では今のところゴールドシップの劣勢が明らかだ。しかし、見方を替えれば追う立場にあるわけで、現役時代の成績にしても、オルフェーヴルは宝塚記念-G1を1回しか勝っていないが、ゴールドシップは2回勝っている。また、オルフェーヴルはジェンティルドンナに勝ったことがないが、ゴールドシップはジェンティルドンナを2度、それもこの舞台で負かしたことがある。このようにゴールドシップの方が優れた点はいくつもある。◎ウインマイティーはゴールドシップ産駒としてクラシックで馬券圏内に食い込んだ今のところ唯一の存在。母アオバコリンはTCK女王盃とマリーンCで3着となった活躍馬。その父カコイーシーズUSAは4歳時に米国のターフクラシック-G1でG1勝ちを果たしているが、3歳時のキングジョージ6世&クイーンエリザベスS-G1で同世代の名馬ナシュワンにクビ差まで迫ったのが競走生活のピークであったかもしれない。アリダー直仔だけに種牡馬としてはコンサートボーイをはじめダートの活躍馬を多く送り出したが、娘のフィジーガールがステイゴールドとの配合で中山記念-G2のナカヤマナイトを出している。先日のJBCスプリントでは娘の産駒サブノジュニアがJRA勢を一蹴する見事な差し切りを果たしており、ちょっと勢いに乗っていると見ることもできるし、宝塚記念-G1に似合うマイナー性を担う部分でもある。牝系は3代母の産駒に愛1000ギニー-G1・2着で米国のスワニーリヴァーH-G3に勝ったジュリーラルースがおり、その産駒にジュリージャルースとマリーンスキー、2頭の米重賞勝ち馬が出た。4代母アルカディナの産駒には愛セントレジャー-G1のダークロモンド、孫には天皇賞(秋)のヘヴンリーロマンスがおり、今後更に発展が見込める活気のあるファミリー。京都外回2200mから阪神内2200mへの変更を千載一遇の好機とできる血統を探せばこの馬となる。 |
| 阪神2200mの種牡馬別重賞勝利数(1981年以降) | ||||||
| 順位 | 種牡馬名 | 1着 | 2着 | 3着 | 着外 | 重賞勝ち馬(特記なければ宝塚記念) |
| 1 | ステイゴールド | 5 | 0 | 0 | 14 | ゴールドシップ2回、オルフェーヴル、 ナカヤマフェスタ、ドリームジャーニー |
| 2 | サンデーサイレンスUSA | 2 | 5 | 6 | 31 | サイレンススズカ、マーベラスサンデー |
| 3 | キングカメハメハ | 2 | 2 | 0 | 18 | ミッキーロケット、ラブリーデイ |
| 4 | ブライアンズタイムUSA | 2 | 1 | 0 | 4 | ダンツフレーム、マヤノトップガン |
| 5 | ミルジョージUSA | 2 | 0 | 1 | 5 | オサイチジョージ、イナリワン |
| 6 | エンドスウィープUSA | 2 | 0 | 0 | 0 | アドマイヤムーン、スイープトウショウ |
| 6 | シャルードUSA | 2 | 0 | 0 | 0 | ビワハヤヒデ(宝塚記念と京都記念) |
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○ラッキーライラックは昨年の京都でこのレースに勝ち、阪神でも阪神ジュベナイルフィリーズ-G1、チューリップ賞-G2、大阪杯-G1に勝っている。この馬の場合は距離やコースといった要素よりも、出し抜けを食らったり他の目標になったり、力上位がゆえに敗れる、ある意味でステイゴールド系らしい自分との戦いが問題となるように思う。そういった面では、手替わりによって何らかの覚醒があると期待することもできる。母ライラックスアンドレースUSAは3歳春にアシュランドS-G1に勝っていて、このようにクラシック路線の序盤にある重賞で素質を示すものは繁殖牝馬としても優れた資質を持つという実例。祖母リファインメントは3歳12月にやっとデビューして2戦で引退しているが、その血統は三冠馬シアトルスルー×名牝ステラマドリッドUSAという最上級のもの。ステラマドリッドUSAの直仔ダイヤモンドビコーから曾孫のミッキーアイルやアエロリットまで日本で大活躍を続ける一族でもある。オルフェーヴルとミスタープロスペクター系牝馬の相性の良さと、メジロアサマの牝祖ラトロワンヌの血が祖母の父シアトルスルーや5代母マイビューパーズにも流れている点は、本馬にも何らかの良い影響を及ぼしていると思う。 冒頭で名馬の妹が強いこのレースの傾向に触れたが、▲ノームコアは自身が名牝で妹クロノジェネシスも名牝。トレンドが牝馬の時代に合わせて変化するのであれば、いつまでも妹ばかりを追っていてはいけないのかもしれない。ハービンジャーGBはモズカッチャンなど2017年のブレークでいつでも大物を出し得る種牡馬としての評価を確立した。ここを勝てば4大場でのG1制覇が達成される。 △エスポワールは青葉賞-G2のアドミラブルの半妹で、菊花賞-G1・2着のアリストテレスのイトコにあたる。祖母グレースアドマイヤの産駒には皐月賞馬ヴィクトリー、阪神大賞典のリンカーンがおり、3代母バレークイーンIREは日本ダービー馬フサイチコンコルドと皐月賞馬アンライバルドを生んだ。4代母は英国の名牝サンプリンセス。血統表5代目にメジロアサマとシアトルスルーの名が並ぶ点はラッキーライラックに通じる部分。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2020.11.15
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