2020大阪杯


目覚めよさまよえる日本ダービー馬

 グレードレースの昇格に際しては当該レースの過去3年間の上位4頭の年間最終レーティングの平均が評価の対象となる。大阪杯はずっと昔から準G1といっていいレベルにあったが、実際に2017年からG1に昇格するためには2014年から2016年までの3年間で基準を満たすレーティングを獲得していたということになる。あくまでレースのレベルが評価の対象となるので勝ち馬だけが強くてもダメだが、下表に示した通り大阪杯をG1に押し上げたのはディープインパクト産駒の力ということが一目瞭然だ。キタサンブラックの父ブラックタイドはディープインパクトの全兄なので、G1昇格後も変わらずディープインパクト血統がこのレースに占める割合は大きく、昨年などは9番人気のディープインパクト産駒が勝ち、2着には母の父ディープインパクトという近未来型が入った。当時の3着馬◎ワグネリアンは今年5歳。昨年の勝ち馬で皐月賞-G1馬のアルアイン、NHKマイルC-G1とマイルチャンピオンシップ-G1に勝ったミッキーアイルなど3歳で活躍したディープインパクト産駒が再上昇を示すのが5歳という場合は多く、タイミングとしては本馬の復活の好機と思われる。ディープインパクトとキングカメハメハの新旧リーディング配合にして、今年はリーディングサイアー×リーディングブルードメアサイアーとなる可能性もあるこの組み合わせは、過去G1で活躍した例にデニムアンドルビーがある程度だが、キングカメハメハの母の父としての仕事が本格化したのはモズカッチャン、インディチャンプ、ブラストワンピースなどここ2、3年のことで、拡大期はこれからと見るのが妥当だろう。祖母のブロードアピールUSAは強烈な追い込みで5つの重賞に勝ったダート短距離での印象があまりにも鮮やかだが、芝でもシルクロードS勝ちがあり、8歳1月にも重賞に勝っていて、そして引退戦となったドバイゴールデンシャヒーン-G1で13頭立て5着に入る力があったことなど、特記すべき資質・才能が幅広かったことは思い出すべき。ブロードアピールUSAの父ブロードブラッシュはアクアクから遠くドミノに遡るアメリカの異系快足血統の代表ともいえる存在で、母の父ヴァリッドアピールはインリアリティからマンノウォーに遡る。そして祖母の父は三冠馬セクレタリアトだから、ノーザンダンサーもミスタープロスペクターも持たずに純アメリカ血統として成立した貴重な存在といえる。そこにキングカメハメハとディープインパクトを重ねての5代アウトの配合なら、3歳がピークの早熟型で終わるとも思えない。ディープインパクト産駒が人気のときにあえて人気薄のディープインパクト産駒を狙う作戦だ。


大阪杯の血統的10年 (fは牝馬)
年・馬場
タイム

馬名

母の父祖母の父
2010テイエムアンコールオペラハウスGBブライアンズタイムUSANijinsky
ゴールデンダリアフジキセキノーザンテーストCANAlleged
1.59.5ドリームジャーニーステイゴールドメジロマックイーンノーザンテーストCAN
2011ヒルノダムールマンハッタンカフェラムタラUSAL'Emigrant
ダークシャドウダンスインザダークPrivate AccountDanzig
1.57.8エイシンフラッシュキングズベストUSAプラティニGERSure Blade
2012ショウナンマイティマンハッタンカフェStorm CatAlleged
稍重フェデラリストエンパイアメーカーUSAサンデーサイレンスUSANijinsky
2.05.5トーセンジョーダンジャングルポケットノーザンテーストCANCrafty Prospector
2013オルフェーヴルステイゴールドメジロマックイーンノーザンテーストCAN
ショウナンマイティマンハッタンカフェStorm CatAlleged
1.59.0エイシンフラッシュキングズベストUSAプラティニGERSure Blade
2014キズナディープインパクトStorm CatDamascus
トウカイパラダイスゴールドアリュールマルゼンスキーファラモンドFR
2.00.3エピファネイアシンボリクリスエスUSAスペシャルウィークSadler's Wells
2015ラキシスfディープインパクトStorm CatFappiano
不良キズナディープインパクトStorm CatDamascus
2.02.9エアソミュールジャングルポケットサンデーサイレンスUSAWell Decorated
2016アンビシャスディープインパクトエルコンドルパサーUSARainbow Quest
キタサンブラックブラックタイドサクラバクシンオージャッジアンジェルーチUSA
1.59.3ショウナンパンドラfディープインパクトフレンチデピュティUSAディクタスFR
2017キタサンブラックブラックタイドサクラバクシンオージャッジアンジェルーチUSA
ステファノスディープインパクトクロフネUSASeeking the Gold
1.58.9ヤマカツエースキングズベストUSAグラスワンダーUSATejabo
2018スワーヴリチャードハーツクライUnbridled's SongGeneral Meeting
ペルシアンナイトハービンジャーGBサンデーサイレンスUSANureyev
1.58.2アルアインディープインパクトEssence of DubaiPulpit
2019アルアインディープインパクトEssence of DubaiPulpit
キセキルーラーシップディープインパクトドクターデヴィアスIRE
2.01.0ワグネリアンディープインパクトキングカメハメハBroad Brush

 ディープインパクト産駒が出走馬の半数の6頭を占めている。切れのディープインパクトに対抗できるのは力のステイゴールドという面があって、オルフェーヴルはその部分もステイゴールドの後継者らしさを示している。○ラッキーライラックは香港ヴァーズ-G1でディープインパクト産駒グローリーヴェイズの2着に敗れた。日本の10分の1計時では0秒6差だが、香港の100分の1計時では0秒55の差。最後の400mではグローリーヴェイズの22.63に対しラッキーライラックは23.22。この差がそのまま着差に現れた。中山記念-G2もダノンキングリーと0秒3差だが、差を詰めかけるとスッと離されてしまって結局同じ上がりタイムだった。このようなディープインパクト産駒との差をどうして逆転できるかとなると、ステイゴールドの大阪杯G2時代を含めた大阪杯-G1と宝塚記念-G1、阪神内回り適性に求めたい。ステイゴールド産駒はこの両レースに28回出走し、ドリームジャーニー(2009大阪杯-G1、2009宝塚記念-G1)、ナカヤマフェスタ(2010宝塚記念-G1)、オルフェーヴル(2012宝塚記念-G1、2013大阪杯-G1)、ゴールドシップ(2013、2014宝塚記念-G1)と7勝を挙げた。勝率25.0%というのは素晴らしい。このステイゴールド〜オルフェーヴルの資質は本馬にも十分に伝わっているように見えるので、ディープインパクト産駒の切れが尽きたところでグイグイ差してくるシーンは十分にあり得る。

 ハービンジャーGBの初年度産駒が3歳を迎えた2015年以降先週までの芝2000mの種牡馬別重賞勝ちランキングを出すと1位ディープインパクト33勝、2位キングカメハメハ18勝、3位ハービンジャーGB9勝となって、ハービンジャーGBの2000mの適性は1600m以下(7位)や2200m以上(10位)より相対的に高いといえる。▲ブラストワンピースは昨年夏にG1水準にある札幌記念-G2に勝っていて、最高レベルのこの距離での強さを示している。母の父としてのキングカメハメハはここまで2200m(モズカッチャン)、2400m(ワグネリアン)、2500m(本馬)、1600m(インディチャンプ)でG1勝ちを果たしている。2000mに勝てば大種牡馬の称号へ残りの1ピースが埋まるといえるのではないか。

 △ダノンキングリーはこのレースに限ってもエリート配合といえるディープインパクト×ストームキャット。1800mの壁を越えられさえすれば当然勝ち負け。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2020.4.5
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