2020優駿牝馬


ロベルト×Mr.プロスペクターの成功

 先週の京王杯スプリングC-G2に勝ったダノンスマッシュの祖母がハリウッドワイルドキャットといい、1990年生まれのこの牝馬は2歳春にデビューして8月のソロリティS-G3まで4連勝、3歳夏のハリウッドオークス-G1から秋のブリーダーズCディスタフ-G1まで5連勝した。その血統は父がロベルト直仔クリスエス、母の父がミスタープロスペクターというもので、これがロベルト×ミスタープロスペクターの成功の始まりだった。1991年に生まれたチョウカイキャロルはブライアンズタイムUSA×ミスタープロスペクター牝馬の配合で、年明けにデビューすると条件戦でオフサイドトラップの2着、フラワーC3着を経て、忘れな草賞と優駿牝馬を連勝した。ロベルトは1969年生まれで英ダービー-G1、ベンソン&ヘッジズゴールドカップ-G1(今の英インターナショナルS-G1)などに勝った。ミスタープロスペクターは1970年生まれで14戦7勝のスプリンターでグレードレースは2着2回3着1回で勝っていない。対照的な2頭だが、どちらも母の父が米2冠の名馬ナシュアである点が共通している。以降、ロベルト×ミスタープロスペクター配合のバリエーションからは下表に示したように多くの重賞勝ち馬が現れた。◎デアリングタクトはロベルトが父系4代目、ミスタープロスペクターが母系の4代目まで遠ざかっているので、もうかなり影響は弱まっているかもしれないし、逆に20数年を経ても効果があるということかもしれない。あるいはサンデーサイレンスUSA4×3の近交の方が大きな意味を持つのかもしれない。余談だが、名馬の近交は大体において生誕30年を経過すると大きな成功例が増えてくるようで、サンデーサイレンスUSA生誕30年にあたる2016年の交配から生まれたデアリングタクトはサンデーサイレンスUSA近交馬として最初のG1勝ちを果たした。母のデアリングバードは1戦未勝利だが、祖母デアリングハートはディープインパクトと同世代のサンデーサイレンスUSA産駒で、3歳時は桜花賞3着、NHKマイルC2着の活躍を示したあと、4歳時にクイーンSと府中牝馬S、翌年にも府中牝馬S-G3に勝った。高松宮記念とスプリンターズSに勝ったビリーヴと同じサンデーサイレンスUSA×ダンチヒの配合だから、かなりスピードに偏った血統なのは事実だろう。それを中長距離に対応できるようにするのが菊花賞-G1とジャパンカップ-G1に勝った父エピファネイアの力であり、ロベルト×ミスタープロスペクターのニックスの力と思う。


ロベルト系×ミスタープロスペクター系の成功例
種牡馬名生年その父重賞勝ち馬生年毛色母の父主な勝ち鞍
ブライアンズタイムUSA1985Robertoチョウカイキャロル1991Mr. Prospector1994優駿牝馬
ビッグゴールド1998鹿Mr. Prospector2002中山金杯
ノーリーズン1999鹿Mr. Prospector2002皐月賞
トーセンブライト2001鹿ジェイドロバリーUSA2010兵庫ゴールドT
フリオーソ2004Mr. Prospector2010帝王賞
バーディバーディ2007黒鹿Seeking the Gold2010兵庫Chp.
レーザーバレット2008鹿Mr. Prospector2016オーバルスプリント
マヤノトップガン1992ブライアンズタイムUSAメイショウトウコン2002黒鹿ジェイドロバリーUSA2007東海S-G2
グラスワンダーUSA1995Silver Hawkマイネルスケルツィ2003鹿Machiavellian2006ニュージーランドT
タニノギムレット1999ブライアンズタイムUSAヒラボクロイヤル2004黒鹿Mr. Prospector2007青葉賞
ゴールドアグリ2004鹿ヘクタープロテクターUSA2006新潟2歳S
ミッドサマーフェア2009青鹿Kingmambo2012フローラS-G2
ブラックスピネル2013黒鹿アグネスデジタルUSA2017東京新聞杯-G3
シンボリクリスエスUSA1999Kris S.ストロングリターン2006鹿Smart Strike2012安田記念-G1
サンカルロ2006黒鹿Crafty Prospector2012阪神カップ-G2
ランフォルセ2006青鹿Machiavellian2013浦和記念
パワーストラグル2006黒鹿アフリートCAN2010白山大賞典
スクリーンヒーロー2004グラスワンダーUSAミュゼエイリアン2012鹿エルコンドルパサーUSA2015毎日杯-G3
ウインマリリン2017Fusaichi Pegasus2020フローラS-G2
エピファネイア2010シンボリクリスエスUSAデアリングタクト2017青鹿キングカメハメハ2020桜花賞-G1

 ○ウインマリリンもロベルト×ミスタープロスペクターで、こちらは父系がロベルトにしてはメジャーなシルヴァーホークに発して、グラスワンダーUSA、スクリーンヒーローと下ってきた。母の父フサイチペガサスはミスタープロスペクター晩年の傑作といえるケンタッキーダービー馬。そのオーストラリア供用時の産駒が母コスモチェーロで、日本に輸入されて唯一の勝利を芝2400mで挙げ、産駒ウインマーレライはラジオNIKKEI賞-G3に勝った。祖母ショーウォンはボールドルーラー系のマイナー種牡馬ブエナショアの娘だが、産駒にアデレイドギニーズ-G3のクラシックアルア、同ショーブルー、孫にクイーンズランドオークス-G1・3着のヴィットリアがいる。3代母エイプリルワンダーは1959年生まれで1965年にVRCダービー馬オールウェイズゼアを生み、その後1983年に24歳で祖母を生んでいて、ファロスとフェアウェイの全兄弟3×3、レディジョセフィン4×5の古色蒼然たる近交からなるタイムリープ的配合。キズナなどでもそうだが、このような血統表中の年代的ギャップが不思議な活力を生む場合があるようだ。

 ゴールドシップは札幌2歳S-G3で初年度産駒ブラックホールとサトノゴールドが1、2着を占めた。種牡馬としての同期スタートにキズナとエピファネイア、リアルインパクトらが揃っていたことを考えると昨年の新種牡馬ランキング4位は悪くない。今年最初のブラックタイプウイナーとなった▲ウインマイティーは母がTCK女王盃とマリーンCで3着となったアオバコリン。この牝系は牝馬が活躍する例が多く、4代母で愛オークス-G1・2着のアーカディナの子孫には、牡馬相手に愛セントレジャー-G1を制したダークロモンド、天皇賞(秋)のヘヴンリーロマンス、5代母でアラバマS勝ち馬のナタシュカの子孫からは優駿牝馬のシルクプリマドンナが出ている。もちろん、この牝系を代表するオイロパ賞-G1のゴールドアンドアイボリー、ジョーマクグラス記念S-G1のグレゴリアンら牡馬の活躍馬もいる。父の母の父の祖父メジロアサマと、祖母の父ロモンドの母の父ポーカーを経由して米国の名牝ラトロワンヌの血が出合う点、父からノーザンテーストCANとザミンストレル、3代母の父ゴールデンフリースからニジンスキーとE.P.テイラー・ブランドのノーザンダンサー血脈を受けている点がこの血統の見せ場といえよう。

 オルフェーヴル産駒の△ホウオウピースフルはサンデーサイレンスUSA3×4に、E.P.テイラーのノーザンテーストCANとトライマイベストUSA=エルグランセニョールの全兄弟を組み合わせた今日的配合。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2020.5.24
©Keiba Book