2020マイルチャンピオンシップ


世代間性別間種牡馬別抗争

 G1・8勝のアーモンドアイ、無敗の三冠馬コントレイル、無敗の三冠牝馬デアリングタクトが揃う来週のジャパンカップ-G1は空前の夢の対決となりそうだが、今回もその相似形というか、対決の軸が似ているところがあって、ひょっとすると今回の結果が来週を占う意味も帯びてくるのかもしれない。このところG1で最強の属性は古馬牝馬。それを代表するのはいうまでもなくグランアレグリアだろう。3歳牡馬代表は2度の敗北から立ち直って毎日王冠-G2で古馬を一蹴したサリオス。3歳牝馬代表はこのコースでG1勝ちのあるレシステンシアとなる。これら3頭にジャパンカップ-G1三強が投影されるとしても、そこからはみ出す対決がもうひとつある。こと阪神芝1600mに限った種牡馬成績では、万能ディープインパクトに対してダイワメジャーがよく抵抗していて、G1に限れば比率でいえばダイワメジャーが優れているのではないかと考えて精査した結果が下表。結論としてはやはりディープインパクトの方が優れているというものだった。それはそれとして、5頭出しのディープインパクト対2頭出しのダイワメジャーの種牡馬対決はなかなかに興味深いものだ。
 同世代のアドマイヤマーズとグランアレグリアはこれまで3度対決があって、そのいずれもが1600m戦だった。昨年の朝日杯フューチュリティS-G1とNHKマイルカップ-G1ではアドマイヤマーズが勝ってグランアレグリアは3着と4位降着5着。この春の安田記念-G1では逆にグランアレグリアが勝ち、アドマイヤマーズは6着に敗れている。これはアドマイヤマーズ自身に休み明けがひと息という傾向があるにしても、◎グランアレグリアの成長曲線が急上昇に向いているということで、目下の勢いは何者にも止められないのではないだろうか。実際、アーモンドアイでも止められなかったんですからね。母のタピッツフライUASは2014年から2016年まで北米リーディングサイアーの座に君臨したタピットの産駒で、その中では比較的珍しい芝の活躍馬。現役時は逃げ差し自在の機動力を武器にいずれも芝8FのジャストアゲームS-G1、ファーストレディS-G1、ハニーフォックスS-G2と3つの重賞に勝った。そこにディープインパクトの瞬発力が上乗せされたということで、グランアレグリアは父母の配合イメージのいいとこ取りを実現させている。タピットは父系がエーピーインディ、シアトルスルーを経てボールドルーラーに遡るだけでなく、ボールドルーラー5×4×5の近交になっていて、母の父がミスタープロスペクター、3代母の父がニジンスキーと、それぞれ早い時期からサンデーサイレンスUSAとの相性の良さがいわれた血脈で構成されていることにはなる。祖母はニジンスキー系マーリン産駒とかなりマイナー血統だが、4代母ピンクダヴの孫にはフローラSに勝ち優駿牝馬2着のベッラレイアがいる。母の父タピットの重賞勝ち馬は日本では今のところ本馬とマーメイドS-G3のサラス(父オルフェーヴル)の2頭しかいないが、リーディングサイアーはそのまま母の父としても好成績を残すことが多いので、今後は母の父欄にその名を見る頻度も増えることになるだろう。


種牡馬両雄のJRA芝1600m成績
ディープインパクト項目
(芝1600m)
ダイワメジャー
1着2着3着着外勝率連対率1着2着3着着外勝率連対率
11554317.2%25.0%阪神G1423349.3%14.0%
209149015.0%21.8%阪神重賞675508.8%19.1%
110858347314.6%26.0%阪神全競走3036352448.7%19.1%
22161715910.3%17.8%全G1745757.7%12.1%
68565138912.1%22.0%全重賞2022221947.8%16.3%
476404360217513.9%25.8%全競走17917018613439.5%18.6%
【桜花賞】マルセリーナ、ジェンティルドンナ、アユ
サン、ハープスター、グランアレグリア【阪神JF】
ジョワドヴィーヴル、ショウナンアデラ、ダノンファ
ンタジー【朝日杯FS】ダノンプラチナ、サトノアレ
ス、ダノンプレミアム
阪神
芝1600m
G1勝ち馬
【桜花賞】レーヌミノル【阪神JF】メジャーエンブ
レム、レシステンシア【朝日杯FS】アドマイヤマ
ーズ

 グランアレグリアの上昇ぶりに押されがちな○アドマイヤマーズは早熟かというとそうでもなさそうで、父ダイワメジャーの成績だけ見ても天皇賞(秋)と1度目のマイルチャンピオンシップ-G1に勝ったのが5歳時、安田記念-G1と2度目のマイルチャンピオンシップ-G1に勝ったのは6歳時だった。当時のワールドサラブレッドレースホースランキング上のレーティングは5歳時、6歳時ともに121に達していて、一方、息子は香港マイル-G1に勝ったにもかかわらず118にとどまったので、逆にいえば父同様に121レベルまで伸びる余地が残されている可能性もある。母ヴィアメディチIREは愛国産で1600mのリウレイ賞-G3に勝った。マキアヴェリアン直仔メディチアンが父で母の父がシングスピールIREという配合はヘイロー4×4となるなかなか美しいもので、ダイワメジャーとの配合ではヘイローの近交が継続されて3×5×5となり、それ以上にノーザンテーストCANが3代目、ストームバードが4代目とE.P.テイラー・ブランドのノーザンダンサー直仔が重なる点が能力の底上げに寄与しているように見える。

 このようなたとえが適切かどうかは分からないが、コントレイルがシンボリルドルフだとすると、▲サリオスはビゼンニシキとなるのか、あるいは異世代対決を制してこちらの分野で独自の地位を築くのか、今回は正念場なのかもしれない。父は中長距離部門での反ディープインパクト連合の旗手ではあるので、今回は舞台を替えて違うディープインパクト直仔に立ち向かうことになる。母のサロミナはディアナ賞-G1(独オークス)とハンブルク牝馬賞-G3に勝った。先週のエリザベス女王杯-G1では2歳上の半姉サラキアが5番人気ながらラッキーライラックにクビ差まで迫っているので、ドイツ血統の底力というべきか、そこにサンデーサイレンスUSA系種牡馬が配されたときの爆発力には侮りがたいものがある。その父ロミタスはオイロパ賞-G1、バーデン大賞-G1など2400mのG1に3勝した名馬。7代母ズライカはマンハッタンカフェの3代母、ブエナビスタの4代母でもある日本でお馴染みの牝系。ドイツの歴史的名牝シュヴァルツゴルトに遡る名門だ。

 △レシステンシアはもう1頭のダイワメジャー産駒。母はアルゼンチンの芝2200mのフィルベルトレレナ大賞-G1の勝ち馬で、曾祖母プルマはホルヘデアチュチャ大賞-G1などに勝った亜2歳牝馬チャンピオン。アルゼンチン血統だが、配合の骨組みはデインヒルUSA×サドラーズウェルズというポピュラーな欧州型を踏襲している。1990年代からシャトルサイアーとして南北両半球をつないだデインヒルUSAが、アルゼンチン経由で北半球に還流し、同い年のサンデーサイレンスUSAの子孫と出合った点がドラマ的。


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