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フリーのフリーハンディキャッパー黒田伊助さんが運営している個人サイト「レーシング・アーカイヴ」http://itasei.web.fc2.com/index.html ではパート1国のG1勝ち馬を父系別にまとめたページがあって、北半球とオセアニアのみならず南アフリカや南米まで網羅している。父系をノーザンダンサー系、ミスタープロスペクター系と呼ぶのは分類としては便利だが、前者は1961年生まれ、後者でも1970年生まれだから、さすがに大雑把に過ぎる。種牡馬も生まれて何十年も過ぎると馬としての実体よりも血統表中における抽象的な存在になってしまうので、父系の個性や資質についていう場合、もう少し近い世代、たとえばサンデーサイレンスUSAの前後を起点とするのが適当なのかもしれない。上記サイト「Gr.1勝ち馬のサイアーライン2019」のページを参照して1980年代生まれの種牡馬を基準に主な父系別にG1勝ち馬の数を数えると、デインヒルUSA系45頭、ストームキャット系42頭、サドラーズウェルズ系45頭(そのうちガリレオ系28頭)。これらが3大勢力といえる。大まかにいえば全部ノーザンダンサー系だ。サンデーサイレンスUSA系19頭がそれに続く。ミスタープロスペクター系はゴーンウエスト系14頭、フォーティナイナーUSA系12頭、マキアヴェリアン系11頭、スマートストライク系9頭、キングマンボ系8頭、シーキングザゴールド系6頭などと分枝が多いため勢力としては分散してしまっている。さて、それら現代の3大父系の共通点として第一に思いつくのはどれも意外に日本で成功していないということ。母の父馬としてはサンデーサイレンスUSA系種牡馬との組み合わせで大成功する場合も少なくないが、父系としては日本は3大父系が成功していない地域にはなる。その成功していない3大父系の中では成功しているのがストームキャット系といえる。これまで日本でG1級競走に勝った馬を下表に示す。サンライズバッカスがフェブラリーSG1に勝ち、これでストームキャット系が日本に根付くのかと思われたが、それ以降12年かけて昨年の高松宮記念G1のミスターメロディまで7頭。2年に1頭強のペースで、ミスターメロディUSAを除くと6頭で3種類のレースにしか勝っておらず、活躍の場がピンポイントというか、守備範囲が極めて狭いといわざるを得ない。しかし、それも考えようで、フェブラリーSG1ならストームキャット系にチャンスがあるともいえる。◎ワイドファラオの父ヘニーヒューズUSAの産駒はアジアエクスプレスUSAとモーニンUSA以外にもファルコンSG3のヘニーハウンドUSA、シリウスSG3のケイアイレオーネがG3勝ちを果たしており、昨年のレパードSではトイガーが3着に入った。ストームキャット系でも、このヘネシーUSAの分枝はスキャットダディの産駒に三冠馬ジャスティファイが出るなどして、ジャイアンツコーズウェイと並んで大きな発展を見せている。母のワイドサファイアは3歳春にエルフィンS、フローラSで2着となるなど素質を示しており、その父アグネスタキオンは母の父としてノンコノユメを出したほか、直仔ディープスカイが種牡馬としてキョウエイギアやサウンドスカイ、モルトベーネ、タマノブリュネットを、アドマイヤオーラがクロスクリーガーやノボバカラ、アルクトスらのダート重賞勝ち馬を送り出している。祖母クイーンソネットはノーザンテーストCAN産駒らしく芝・ダート、距離の長短をよくこなして5勝を挙げ、新潟記念で2着となった。3代母の子孫にはカペラSG3のミリオンディスク、関東オークスのアムールポエジー、ジュニアCのテンクウ、巴賞のモノポールら多くの活躍馬が出ている。パワーのストームキャットにサンデーサイレンスUSAの瞬発力が加わるこの組み合わせはバランスがいいし、ストームキャットの父ストームバードと祖母の父ノーザンテーストCANはいずれもカナダの大オーナーブリーダーであるE.P.テイラー氏の生産馬。両馬の父ノーザンダンサーもテイラーの生産所有馬(馬主名義はウインドフィールズファーム)であり、それだけにノーザンダンサーの血の扱いには余人が真似できないものがあったはずで、実際に現代になってニジンスキー、ヴァイスリージェント、トライマイベストUSAなど、テイラー生産馬を経由したノーザンダンサーの近交の成功例を目にすることがしばしばある。アグネスタキオンの母の父ロイヤルスキーUSAも祖母グリームがテイラーの生産馬だ。 |
| 日本におけるストームキャット系の微妙な活躍 |
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STORM CAT 1983年生 黒鹿毛 米国で8戦4勝、ヤングアメリカSG1 Forest Wildcat 1991 | エーシンフォワードUSA 2005(2010 マイルチャンピオンシップG1) ヘネシーUSA 1993 | ヨハネスブルグUSA 1999 | | Scat Daddy 2004 | | ミスターメロディUSA 2015(2019 高松宮記念G1) | サンライズバッカス 2002(2007 フェブラリーSG1) | ヘニーヒューズUSA 2003 | アジアエクスプレスUSA 2011(2013 朝日杯フューチュリティSG1) | モーニンUSA 2012(2016 フェブラリーSG1) Bernstein 1997 | ゴスホークケンUSA 2005(2007 朝日杯フューチュリティS) Giant's Causeway 1997 エイシンアポロンUSA 2007(2011 マイルチャンピオンシップG1) |
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昨年の産駒のG1勝ちはディープインパクトが海外含め10勝。ハーツクライはその半分の5勝だったが、リスグラシュー、スワーヴリチャード、サリオスらの活躍のインパクトは数的劣勢を感じさせないものだった。○タイムフライヤーはダートに転じて未勝利だが、2018年にはヨシダが米国で芝とダート両方のG1勝ちを果たすなどハーツクライ産駒には常識を打ち破る力を備えたものがいる。本馬は母がジャパンCダートなどダート重賞9勝のタイムパラドックスの全妹。大一番で底力を示す可能性は秘めている。 ▲モズアスコットは父が怪物フランケルでヘネシーUSA産駒の母インディアは米国でコティリオンBCHG2とアゼリBCSG3のいずれもダート8.5Fの重賞を逃げ切った快足。血統表3代目にサドラーズウェルズ、デインヒルUSA、ストームキャットとノーザンダンサー系3大父系が並び、3代母の父もノーザンダンサー直仔のニジンスキー。それをミスワキ4×3でまとめた形。グロースタークとヒズマジェスティのリボー直仔の大物全兄弟が5代目に並ぶ点もG1で物をいいそうだ。 △アルクトスはシンボリクリスエスUSA牝馬とサンデーサイレンスUSA系種牡馬の成功パターン。ヘイロー4×4を豊富なラトロワンヌ血脈が支える構成。祖母コンキスタドレスUSAは米で3歳時にアシュランドSG1でアーベインの2着、ブラックアイドスーザンSG2でセレナズソングの2着と、これは生まれた時代が悪かったとしかいいようがない。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2020.2.23
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