|
先週のジャパンカップではアーモンドアイがめでたくG1・9勝目を挙げ、日本調教馬としての記録を更新して有終の美を飾った。スポーツ紙や一般紙の多くが「芝G1・8勝の新記録」「芝G1・9勝のアーモンドアイ」と報じたのは、ダートではホッコータルマエがG1とJpn1を合わせて10勝、コパノリッキーは同じく11勝しているのを踏まえてのことだが、Jpn1を記録としてG1と同等に扱うのは間違っている。グレード/グループ格付けのそもそもの理念は異なる地域の異なる条件の競走の価値を、誰もが理解しうるひとつの物差しでセリ名簿上に示すというものであり、正しい格付け表記はセリ名簿という一種の広告において、その公正と公平を保つ命綱だ。「G」が公(おおやけ)のものであるなら、「Jpn」は国内の都合に合わせた私的な格付けと考えるべきで、日本が国際セリ名簿基準委員会でパート1に認定された2007年以来、GとJpnの二重グレードの問題は続いてきた。JRAの競走は2010年にグレード獲得の要件を満たしてすべてのJpn表記を廃したが、地方競馬の主催レースは東京大賞典が2011年にG1格を取得したのみで、その他のいわゆる「統一ダートグレード競走」はJpn表記を続けている。当初は日本競馬の問題だったのが、地方競馬の問題になってしまったこと、予想や馬券に関しては二重グレードでも大きな不便がないことで放置されてきた。しかし、これにより直接の被害を受けるのは馬とその関係者で、G1相当のパフォーマンスによって勝利を得たのにG1勝ちの称号は得られない、あるいは逆にG1と同等のレベルにあると考えたのに、実際にはレースレーティングが不足していて実質の伴わないタイトルと化していたという、より深刻な問題が潜在している恐れもある。 |
| G1に勝ったヌレエフの近交馬 | |||||||
| 馬名 | 性 | 生年 | 父 | 母 | 母の父 | ヌレエフ | 主な勝ち鞍 |
| ミッキーロケット | 牡 | 2013 | キングカメハメハ | マネーキャントバイミーラヴIRE | Pivotal | S4×M4 | 宝塚記念-G1 |
| メールドグラース | 牡 | 2015 | ルーラーシップ | グレイシアブルー | サンデーサイレンスUSA | S5×M3 | コーフィールドカップ-G1 |
| アーモンドアイ | 牝 | 2015 | ロードカナロア | フサイチパンドラ | サンデーサイレンスUSA | S5×M3 | ジャパンカップ-G1他 |
| クリソベリル | 牡 | 2016 | ゴールドアリュール | クリソプレーズ | エルコンドルパサーUSA | S3×M5 | チャンピオンズカップ-G1 |
| ※日本産馬のみを対象。ヌレエフの近交の欄のSは父方、Mは母方の何世代目かを示す。 | |||||||
|
○カフェファラオUSAの父は2015年の米三冠馬でトラヴァーズSで2着に敗れたあとブリーダーズカップクラシック-G1に勝った。現3歳世代が初年度産駒で、今のところフランスで芝G1勝ち馬を出したり、実は日本で一番活躍していたりするのではないかという不思議な成績を残している。サンプル数は少ないながらも、勝つときは強く、負けが後を引かずという父系の祖エンパイアメーカーUSAを極端にしたような傾向が見られる。今の日本にクリソベリルを力で負かせる馬がいるとは考えづらいが、ひょっとするとその可能性を秘めているかもしれないのが本馬。代々名種牡馬が配合されてきたこと以外は地味な牝系だが、母メアリズフォリーズが突如G2とG3に勝つと、その産駒にもG32勝のナイトプラウラー、レイクプラシッドS-G2のほかG3・2勝のリーガルグローリー、そして本馬が現れた。この休眠牝系の突然の爆発力にも侮りがたいものがある。 サンデーサイレンスUSA系でも特に芝志向が強いと考えられたのがハーツクライだが、米国のヨシダが2018年にG1ウッドワードS-G1に勝つと、昨年9月にロードゴラッソがシリウスS-G3に勝ち、今年は3月にスワーヴアラミスがマーチS-G3に、8月には▲タイムフライヤーがエルムS-G3に勝った。タイムフライヤーの場合はブライアンズタイムUSA産駒の母タイムトラベリングが、JBCクラシック連覇や帝王賞勝ちのあるダートの名馬タイムパラドックスの全妹という背景があり、芝G1のタイトルを背負ってのダート転向だった。タイムパラドックスは重賞初制覇が6歳という遅咲きだったので、こちらも5歳を迎えてダートの素質開花があるのかもしれない。 △ゴールドドリームは昨年のこのレースでクリソベリルにクビ差まで迫った。クリソベリルが勝ったレースで2馬身未満の着差はこのときだけ。ゴールドアリュール産駒なら7歳で老け込むということもないだろう。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2020.12.6
©Keiba Book