2020朝日杯フューチュリティS


困ったときのディープ頼み

 種牡馬ディープインパクトは2010年に初年度産駒が2歳を迎え、ダノンバラードやリアルインパクトの活躍により2歳種牡馬ランキングにおいて初登場1位となった。以後、ダイワメジャーに6615万円差で首位を譲った2015年を除いてずっと首位を守ってきた。例年は先行するキングカメハメハやダイワメジャーを高額賞金レースの増える晩秋から暮れにかけて差し切るという形を繰り返してきたが、今年は新種牡馬のモーリスとドゥラメンテが健闘し、ディープインパクトがモーリスを捉えて首位に立ったのは11月上旬のことだった。いつもの勝ちパターンだが、今年は差す相手が新世代になった。下表の勝利数は上位拮抗しているが、出走回数は新世代よりも明らかに少なく、現2歳世代を含めて残り3クロップの晩年を迎えて量より質の追求に向かっていると見ることもできる。ディープインパクトが首位に立っていた期間、中央2歳戦で稼いだ賞金でいうとピークは7億2818万円の2017年で、これはダノンプレミアム世代。次が昨年の7億336万円で、いうまでもなくコントレイル世代だった。全体が優れた世代はピークも高いということで、今回の結果でただちに先を占うことはできなくても、1年が終わって12月13日現在で4億円台の収得賞金をどこまで伸ばせるかによって、来年のクラシック戦線の構図も見えてくるようにはなるだろう。
 ここまで芝のオープン、重賞は26レースが行われ、その印象だけでいうと、ダノンプレミアムやコントレイルのような存在はまだ見ないといえるように思う。そのように超大物はいなくとも、いわゆる平年並みの大物を出せるところもディープインパクトの優秀さであり、産駒がデビューした2010年以降先週までの産駒の2歳重賞勝ちの数25は2位タイのダイワメジャーとハーツクライの各11を足したよりも多く、同期間の阪神芝1600mの重賞は18のうち7をディープインパクト産駒が勝っている。迷った時のディープインパクト。今回はこの作戦で行きたい。◎ロードマックスの母パーフェクトトリビュートGBは2歳7月のプリンセスマーガレットS-G3で3着となり、3歳春に6Fのリステッドと7FのチャートウェルフィリーズS-G3を連勝した。その後は4歳で引退するまで9戦してさっぱりだったので、早熟でピークの短い馬だったようだ。祖母パーフェクトスピリットはインヴィンシブルスピリット産駒、3代母バレエソサイアティはサドラーズウェルズの娘で、産駒ファーストロウはチェスターヴァーズ-G3・3着馬。4代母ギディオンはクイーンメアリーS-G3に勝ったスプリンターで産駒に英2000ギニー-G1、愛2000ギニー-G1ともに2着のエンリケがいる。ドバウィはドバイミレニアム直仔で母の父がシャーリーハイツ系デプロイ、祖母の父がダンシングブレーヴUSAという血統。祖母の父インヴィンシブルスピリットはダンチヒ系グリーンデザート直仔でその母ラッファはクリスの娘のディアヌ賞-G1勝ち馬。いずれも新旧の欧州血統をうまくミックスして現在まで活力を保っている種牡馬であり、母の血統はごつごつと大粒の宝石を集めて固めたような構成。ここからディープインパクトによって引き出されるものは大きいのではないだろうか。


2歳種牡馬ランキング(勝利度数順)
順位 種牡馬名産地1着2着3着着外出走
回数
連対率重賞
勝利
収得賞金
(千円)
1 ディープインパクト早来312317721430.3781411,872
1ドゥラメンテ安平3120131382020.252 340,997
3 キズナ新冠3023261542330.227 333,283
4モーリス日高2935201482320.276 357,958
5 エピファネイア安平2220241532190.192 284,481
6 ロードカナロア新ひだか2016121361840.196 232,653
7 ルーラーシップ安平1615221492020.1531222,497
8 ハーツクライ千歳152510921420.282 199,670
8 ヘニーヒューズ米国151812831280.258 167,645
10 ダイワメジャー千歳1411121191560.1601197,115
12リオンディーズ安平1216201331810.155 174,726
15 キングカメハメハ早来11101153850.247 162,942
19 マジェスティックウォリアーUSA米国910958860.221 103,716
39 Frankel英国43215240.292 42,910
52 バゴFR仏国21453600.050154,721
52 Gleneagles愛国203160.333141,385
52 Invincible Spirit愛国200021.000 17,338
115 プリサイスエンドUSA米国00234360.000 18,640
中央12月13日現在。太字は出走馬の父。☆は新種牡馬

 ○レッドベルオーブは全兄レッドベルジュールに続いてデイリー杯2歳S-G2の兄弟制覇を達成した。兄は朝日杯フューチュリティS-G1で10着に終わっていて、そのようになるのかもしれないが、同じ轍は踏まないと考える方が妥当だろう。ディープインパクト×アンブライドルズソング×ストームキャットの配合は、三冠馬コントレイルのディープインパクト×アンブライドルズソング×ティズナウ×ストームキャットに通じるもので、祖母キャットチャットは米G2ナッソーカウンティSに勝ち、産駒のインランジェリーはスピンスターS-G1に勝った。3代母フォーンチャッターは1993年のブリーダーズCジュヴェナイルフィリーズ-G1に勝ち米最優秀2歳牝馬に選ばれている。コントレイルとよく似た血統が2歳でも大活躍という出来過ぎた話があるのかということだが、牡牝の無敗三冠達成、白毛のG1勝利など、今年の競馬はそのようなことが当たり前に起きているようにも思える。

 ▲モントライゼはかつて2歳種牡馬ランキングでたびたびディープインパクトを脅かし、一度は逆転も果たしたダイワメジャーの産駒。伯父にエクリプスS-G1、ロッキンジS-G1に勝った名マイラーで名種牡馬のメディチアンがいる。母の父ネイフは名馬ナシュワンの年の離れた半弟で、自身、英チャンピオンS-G1、ドバイシーマクラシック-G1などG1・4勝の名馬。父の母の父がノーザンテーストCAN、祖母の父がストームバードなので、血統表の3代目にカナダの大オーナー・ブリーダー、E.P.テイラーの手になるノーザンダンサー直仔の傑作が並ぶことになる。今どきは4代目、5代目に出てくることも多くなった名前なので、3代目で並んで疑似近交をなすこのような例は貴重だ。

 △ホウオウアマゾンの父キングカメハメハもかつてディープインパクトと2歳、総合ともに種牡馬ランキング上で争い、今年は母の父として常勝サンデーサイレンスUSAに代わってランキングのトップに立っている。一方で、産駒チュウワウィザードがチャンピオンズC-G1に勝つなど、ここ一番では大物らしい存在感を示している。母のヒカルアマランサスは京都牝馬S-G3に勝ちヴィクトリアマイル-G1・2着となった活躍馬。3代母カーリーナはディアヌ賞-G1(仏オークス)勝ち馬。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2020.12.20
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