2020有馬記念


走れ特急ライラック

 オルフェーヴル産駒のグレード勝利は初年度産駒が2歳を迎えた2017年に3勝、2018年に2勝、2019年にも2勝というペースだったが、2020年に入ると上半期で3勝、11月に入るとオーソリティのアルゼンチン共和国杯-G2、ラッキーライラックのエリザベス女王杯-G1、バイオスパークの福島記念-G3、オセアグレイトのステイヤーズS-G2、ジャスティンのカペラS-G3と毎週重賞に勝っていると思わされるほどの量産体制に入った。ジャスティンはダートで春に東京スプリント、10月には東京盃にも勝っている。サイアーランキング上のオルフェーヴルはこれまでベスト20は外さないが、ベスト10に入ることもないという立ち位置だったが、この好成績により12月22日現在で総合4位という自己ベストの順位にある。
 初年度産駒として阪神ジュベナイルフィリーズ-G1で最初にG1勝ちを果たした◎ラッキーライラックは3歳時こそG1勝ちは叶わなかったが、チューリップ賞-G2に勝ち、4歳時はエリザベス女王杯-G1、5歳の今年は春に大阪杯-G1、秋にはエリザベス女王杯-G1に勝った。古馬になってからはG1しか勝っていないのはステイゴールド〜オルフェーヴル系の独特の傾向が更に進んで、本気を出したときだけ勝つということになっているのかもしれない。アーモンドアイと同世代という厳しい境遇にあって、ここまでG1・4勝を積み上げたのは大変なことだ。下表にある有馬記念で実績を挙げた種牡馬のうち、今回も出走馬があるのはステイゴールドのほかディープインパクトとハービンジャーだけ。有馬記念勝ち馬で有馬記念サイアーでもあるのはディープインパクト、ハーツクライとシンボリルドルフということになるが、オルフェーヴルの今の勢いなら、それらに続く可能性は高いのではないだろうか。また、牝馬の時代といえる近年の傾向を受けて、ディープインパクトにはジェンティルドンナ、ハーツクライにはリスグラシューと父娘制覇が目立つ。ラッキーライラックの母ライラックスアンドレースUSAはフォーティナイナーUSA系フラワーアリーの産駒で、3歳4月にオールウェザー8.5FのアシュランドS-G1を逃げ切って生涯唯一のG1勝ちを果たしている。祖母リファインメントはシアトルスルー産駒、3代母ステラマドリッドUSAはアリダーの娘でエイコーンS-G1など2、3歳時に米G1に4勝を挙げた名牝。その娘には最優秀古牝馬ダイヤモンドビコー、孫に兵庫チャンピオンシップのバーナードループ、曾孫にマイルチャンピオンシップ-G1のミッキーアイル、NHKマイルカップ-G1のアエロリットがいる。4代母マイジュリエットも米重賞6勝の名牝で、5代母マイビューパーズからは子孫にハーツクライらが出た。これだけの名門なので、母のG1タイトルはひとつあれば十分ということもできる。ミスタープロスペクター、シアトルスルー、アリダーという米国的マッチョ血統を重ねたことが牡馬顔負けの馬格とパワーにつながっているとして、尻尾は紛れもなくオルフェーヴルの娘だと感じさせる。そんなことを思いながら足掛け4年楽しませてもらいました。


種牡馬別有馬記念の30年
順位種牡馬名1着2着3着着外勝ち馬
1サンデーサイレンスUSA55936マンハッタンカフェ(牡3)、ゼンノロブロイ(牡4)、
ハーツクライ(牡4)、ディープインパクト(牡4)
2ステイゴールド41215ドリームジャーニー(牡5)、オルフェーヴル(牡3)、
ゴールドシップ(牡3)、オルフェーヴル(牡5)
3ブライアンズタイムUSA30010ナリタブライアン(牡3)、マヤノトップガン(牡3)、
シルクジャスティス(牡3)
4ディープインパクト20120ジェンティルドンナ(牝5)、サトノダイヤモンド(牡3)
5Silver Hawk2001グラスワンダーUSA(牡3)、グラスワンダーUSA(牡4)
5Kris S.2001シンボリクリスエスUSA(牡3)、シンボリクリスエスUSA
(牡4)
7ハーツクライ11212リスグラシュー(牝5)
8ブラックタイド1111キタサンブラック(牡5)
9アグネスタキオン1101ダイワスカーレット(牝4)
10ネオユニヴァース1106ヴィクトワールピサ(牡3)
11スクリーンヒーロー1010ゴールドアクター(牡4)
12オペラハウスGB1018テイエムオペラオー(牡4)
13Rainbow Quest1000サクラローレル(牡5)
13ノノアルコUSA1000ダイユウサク(牡6)
13ダンシングキャップUSA1000オグリキャップ(牡5)
16ハービンジャーGB1001ブラストワンピース(牡3)
16メジロイーグル1001メジロパーマー(牡5)
18シンボリルドルフ1005トウカイテイオー(牡5)

 過去30年を遡って宝塚記念と有馬記念の両方に勝ったのはリスグラシュー、ゴールドシップ、オルフェーヴル、ドリームジャーニー、ディープインパクト、テイエムオペラオー、グラスワンダー、マヤノトップガン、メジロパーマーの9頭。割合としてかなり多いのは、レース形態にそれなりに共通点があるからだろう。○クロノジェネシスは凱旋門賞-G1馬バゴFR産駒として菊花賞-G1のビッグウィーク以来9年ぶりのG1勝ち馬となった。ニアルコス家の名血を詰め込んだ牝系に名馬ナシュワンを配されたバゴはサンデーサイレンスUSAのサポートが見込める日本ではもっと継続的な成功があっていいように思うが、ブラッシンググルーム系がもはや覇権を握るほどのアクティヴな父系ではないということなのかもしれない。クロフネ産駒の母クロノロジストはダート1700mで1勝を挙げたのみだが、娘のノームコアは今月13日の香港カップ-G1を快勝した。ノームコアはまた札幌記念-G2でラッキーライラックを破っているので、ラッキーライラックから見れば目の上のたんこぶ姉妹ということになる。

 勝ち馬では過去30年でダイユウサク14番人気、メジロパーマー15番人気、マツリダゴッホ9番人気と大穴の例があり、2、3着ならより頻繁に人気薄の台頭がある。4歳時のステイゴールドは11番人気で3着となっている。実力馬ばかりが集まっているはずなのにこんなことになるのは、やはりシーズンの終わりゆえか。ずっと一線級で走るのは大変なことなのだ。▲バビットは快進撃を続けて菊花賞-G1で頭を打った格好。しかし、父は宝塚記念-G1に勝ち、日本馬として凱旋門賞-G1に最も近づいたナカヤマフェスタだ。ステイゴールド系でも屈指の底力を期待できるこの父の産駒がこのまま引き下がるとは思えない。牝系はエーピーインディやレモンドロップキッドが出る名門ゲイミサイル系だ。

 △オーソリティは母がエピファネイアの全妹で、父系祖父ステイゴールド、祖母の父スペシャルウィークを経由したサンデーサイレンスUSA3×4の近交を持つ。ゴールドシップが3歳で勝ったときには同じ父の人気薄オーシャンブルーが2着になった。そんなこともあるかもしれない。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2020.12.27
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