2019宝塚記念


得たりやおうとて2勝目掴む

 4月の香港のクイーンエリザベス2世C-G1はウインブライトが勝ち、5月の安田記念-G1はインディチャンプが勝った。どちらもステイゴールド産駒で、古馬芝2000mのG1も性の限定のない古馬芝1600mのG1もともに初めての勝利となった。同産駒の最近のG1勝ちはレインボーラインによる昨年の天皇賞(春)-G1、アドマイヤリードによる一昨年のヴィクトリアマイル-G1があり、ドリームジャーニーの2006年朝日杯フューチュリティS以来、これまでのG1級勝利は10頭で22勝にのぼる。そのうち宝塚記念-G1は5勝を占めて特異に得意な傾向を示していたのだが、2014年のゴールドシップを最後に好走例がない。2015年2月に死んだステイゴールドには3歳の産駒にハルノナゴリ(現役未勝利)1頭がいるだけで、インディチャンプらの4歳世代が実質的なラストクロップ。最晩年の傾向の変化の一環としての宝塚記念-G1離れなのか、あるいは偶然なのか、そのあたりが悩みどころとはいえる。ステイゴールドは母が阪神3歳Sとマイルチャンピオンシップの勝ち馬サッカーボーイの全妹であり、サッカーボーイはディクタスFR×ノーザンテーストCANの配合なので、ステイゴールドを含むその関係を「サッカーボーイ血統」としてこのレースでの成績を下表にまとめた。ドリームジャーニー以降のステイゴールド時代があまりに強い印象を残したので近年が不振に陥ったように映るが、サッカーボーイ血統の勝利ということではヒシミラクルからドリームジャーニーまで6年かかったこともあるので、ゴールドシップから5年目にあたる今年であれば、見限るのは早計ということになる。むしろ、異分野進出も果たしたステイゴールドの勢いを買うのが正しいといえないだろうか。
 ◎エタリオウはインディチャンプと同じ父の実質的な最終世代。父が最初に宝塚記念に出走したのと同じ4歳で、父がそのとき既に3勝を挙げていた点、天皇賞(春)で2着になっていた点で劣るが、東京優駿-G1に間に合って4着になり、菊花賞-G1でも2着と好走しているのは父に勝る。1勝のままここまでたどり着いたのはある意味とてもステイゴールドらしい。母のホットチャチャUSAは芝9Fのクイーンエリザベス2世チャレンジカップS-G1など芝とオールウェザーの重賞4つを含む6勝を米国で挙げた。その父カクタスリッジはアーリントンワシントンフューチュリティ-G3に勝ち、ヘネシーUSA-G1を経てストームキャットに遡る。ホットチャチャUSAが産駒唯一のG1勝ち馬となる。祖母の父は米国の異系血統ブロードブラッシュで、ブロードアピールUSAの父として、最近ではワグネリアンの祖母の父として知られる存在。3代母ロングターム以前が米国の富豪フィップス家のオーナーブリーディングによって育てられた牝系で、4代母インフィニトはイエローリボンS-G1で3着となり、5代母クリアシーリングの子孫には英1000ギニー-G1のクイックアズライトニング、フリゼットS-G1のエデュケイティドリスク、ブリーダーズCディスタフ-G1のインサイドインフォメーションなど多くの名牝が現れた。休眠牝系から突如現れた活躍牝馬という点ではサンデーサイレンスUSAの母やシンボリクリスエスUSAの母、ジェンティルドンナの母にも似ていて、成功すると桁違いという場合もある。一見ごった煮的ながら、よく見ると良血を集められていて、特にストームキャット、アクアク、プライヴェートアカウントらはサンデーサイレンスUSAの良さを引き立てる。


サッカーボーイ血統の活躍
年度着順人気馬名性齢備考
1993イクノディクタス牝6父ディクタスFR×母の父ノーザンテーストCAN
199511ゴーゴーゼット牡4父サッカーボーイ
1998ステイゴールド牡4母がサッカーボーイの全妹
1999ステイゴールド牡5母がサッカーボーイの全妹
1110インターフラッグ牡6父ノーザンテーストCAN×母の父ディクタスFR
2000ステイゴールド牡6母がサッカーボーイの全妹
2001ステイゴールド牡7母がサッカーボーイの全妹
2002ツルマルボーイ牡4母の父サッカーボーイ
2003ヒシミラクル牡4父サッカーボーイ
ツルマルボーイ牡5母の父サッカーボーイ
1111バランスオブゲーム牡4祖母がサッカーボーイの全妹
2004ツルマルボーイ牡6母の父サッカーボーイ
2006バランスオブゲーム牡7祖母がサッカーボーイの全妹
13アイポッパー牡6父サッカーボーイ
2008ドリームパスポート牡5祖母がサッカーボーイの全妹
2009ドリームジャーニー牡5父ステイゴールド
2010ナカヤマフェスタ牡4父ステイゴールド
ドリームジャーニー牡6父ステイゴールド
201110ドリームジャーニー牡7父ステイゴールド
2012オルフェーヴル牡4父ステイゴールド
13ナカヤマナイト牡4父ステイゴールド
2013ゴールドシップ牡4父ステイゴールド
フェノーメノ牡4父ステイゴールド
ナカヤマナイト牡5父ステイゴールド
20141ゴールドシップ牡5父ステイゴールド
7フェイムゲーム牡4祖母がサッカーボーイの全妹
201511ショウナンパンドラ牝4祖母がサッカーボーイの全妹
1415オーシャンブルー牡7父ステイゴールド
151ゴールドシップ牡6父ステイゴールド
20161712フェイムゲーム牡6祖母がサッカーボーイの全妹
20177レインボーライン牡4父ステイゴールド
20187パフォーマプロミス牡6父ステイゴールド
2019  エタリオウ牡4父ステイゴールド
  ショウナンバッハ牡8父ステイゴールド
  スティッフェリオ牡5父ステイゴールド

 サンデーサイレンスUSA系にはタイトル獲得後に不振ではないが勝ち切るでもないという停滞モードに入ってしまうものが少なくないが、みんなが強くて質も似ているとなると、確かに1頭が独走することは難しい。○レイデオロはサンデーサイレンスUSAの血を持たないので、そういった同質性のしがらみにとらわれる恐れがない。その一方で、祖母がディープインパクトの半姉であるから、ディープインパクト的な良さも備えている。そのような都合の良い解釈が可能だ。

 上に示したサンデーサイレンスUSA系、とりわけディープインパクトの牡駒の停滞の例では▲マカヒキが典型的だが、皐月賞馬アルアインが2年近くをかけて再びG1勝ちを果たしたのを見ると、2016年9月のニエル賞-G2以降勝っていない本馬も時間的にはそろそろ復活があってもいいころではないかと思える。同じディープインパクト×フレンチデピュティUSAのショウナンパンドラは牝馬なので同じようには扱えないかもしれないが、このレースで3着となり、秋にはジャパンC-G1に勝った。

 キセキはレイデオロに先着したことがなく、スワーヴリチャードはキセキに先着したことがないがレイデオロにはドバイシーマクラシック-G1で先着して一矢を報いた。△アルアインはそれらの3頭いずれにも先着したことがある。このあたりの決定力はさすがディープインパクト直仔といえよう。距離延長以上に2度続けてのG1好走があるかどうかが課題となりそうだが、この母も休眠牝系から突如現れたG1勝ち牝馬。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2019.6.23
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