2019安田記念


大物マイナー血統の再発見

 ディープインパクトにはストームキャット牝馬やフレンチデピュティUSA牝馬など、複数のG1勝ち馬が出るような相性の良い配合パターンの定番がある反面、ジェンティルドンナの母の父がベルトリーニだったり、サトノダイヤモンドの母の父がオーペンだったり、ダノンプレミアムの母の父がインティカーブだったり、珍しいというかマイナーというか、そんな相手からもしばしば大物が現れている。最新の日本ダービー馬ロジャーバローズの母の父リブレッティストも自身はジャックルマロワ賞-G1やムーランドロンシャン賞-G1に勝った一流マイラーだったが、種牡馬としても母の父としてもわずかな数の重賞勝ち馬を出していた程度で一流とはいいがたい成績だった。サンデーサイレンスUSAもワットラック牝馬からジェニュイン、ウェルデコレイティド牝馬からエアシャカール、ベルボライド牝馬からはマツリダゴッホなどを出した例があるが、それをも上回る多様な血統から走る馬を出しているのがディープインパクトだ。それだけサンデーサイレンスUSAの時代以上に多様な血統の優れた牝馬が世界中から集められるようになったということではあるが、それに応えて結果を出すのは実力以外の何物でもない。その実力に期待して、更に珍しい組み合わせがないかと探すまでもなく出てくるのがデピュティミニスター牝馬の仔である◎サングレーザーということになる。フレンチデピュティUSA牝馬との相性はショウナンパンドラやマカヒキによって証明ずみであり、その産駒クロフネUSAを父に持つ牝馬からもステファノスやシャイニングレイらの活躍馬が現れている。しかし、逆にフレンチデピュティUSAから遡ってその父で1979年生まれのデピュティミニスターの娘となると、年代的にもう試される数そのものが少ない。そのため、超大物同士だが珍しい組み合わせということになる。デピュティミニスターは2歳時の大活躍により1981年のカナダの年度代表馬となり、種牡馬としても大成功し1997年と1998年には北米リーディングサイアーの座に就いた。母の父としても同様に成功し、2007年には北米リーディングブルードメアサイアーとなった。ただし、力とスピードの血統なので日本ではダート血統と捉えられることが多く、実際にカネヒキリやカジノドライヴの母の父として成功したわけだが、今年になって娘の産駒から日本で初の芝G1勝ち馬が現れた。高松宮記念-G1勝ちのミスターメロディUSAは父がストームキャット系スキャットダディだから完全な米国血統。短距離なので芝でもダートでも関係なかったという面もあるにせよ、デピュティミニスターにとっての日本の芝というひとつの壁が破られたのは事実。強力な上位馬にひと泡吹かせるには、ディープインパクト産駒としてもこれくらいユニークな血統でなければならない。母自身は未勝利だが、祖母ウィッチフルシンキングはパッカーアップS-G2など芝重賞に4勝しており、産駒に福島牝馬Sのロフティーエイム、JBCレディスクラシックのメーデイアが出た。


20年にわたる母の父デピュティミニスターの実績(娘の産駒のG1勝利)
馬名馬名産地生年毛色主なG1勝利
バハミアンパイレートBahamian Pirate米国1995センHousebusterナンソープS(芝5f)
レダットーレRedattore伯国1995鹿Roi NormandシューメイカーBCマイル(芝8f)
カンペシノCampesino亜国1997Careafolie5月25日大賞(芝2400m)
リクエストフォーパロールRequest for Parole米国1999黒鹿Judge T CユナイティドネイションズH(芝11f)
サラヴァSarava米国1999黒鹿Wild AgainベルモントS(ダ12f)
マジストレッティMagistretti米国2000鹿DiesisマンノウォーS(芝11f)
ハーフブライドルドHalfbridled米国2001黒鹿UnbridledBCジュヴェナイルフィリーズ(ダ8.5f)
カネヒキリ日本2002フジキセキジャパンカップダート(ダ1800m)
ボブアンドジョンBob and John米国2003青鹿Seeking the GoldウッドメモリアルS(ダ9f)
ジャジルJazil米国2003鹿Seeking the GoldベルモントS(ダ12f)
ラグズトゥリッチズRags to Riches米国2004A.P. IndyベルモントS(ダ12f)
カーリンCurlin米国2004Smart Strikeドバイワールドカップ(ダ2000m)
テリングTelling米国2004鹿A.P. Indyソードダンサー招待S(芝12f)
ディキシーチャッターDixie Chatter米国2005鹿Dixie UnionノーフォークS(AW8.5f)
パーシステントリーUSAPersistently米国2006Smoke Glackenパーソナルエンスン招待S(ダ10f)
トゥオナーアンドサーヴTo Honor and Serve米国2008鹿BernardiniウッドウォードS(ダ9f)
タピザーTapizar米国2008鹿TapitBCダートマイル(ダ8f)
ゴールデンチケットGolden Ticket米国2009黒鹿SpeightstownトラヴァーズS(ダ10f)
ストロングマンデイトStrong Mandate米国2011鹿TiznowホープフルS(ダ7f)
ゴットラッキーGot Lucky米国2011黒鹿A.P. IndyスピンスターS(ダ9f)
ヴィーイーデイV. E. Day米国2011English ChannelトラヴァーズS(ダ10f)
ザビッグビーストThe Bid Beast米国2011鹿Yes It's TrueキングズビショップS(ダ7f)
アンジェラレネAngela Renee米国2012鹿BernardiniシャンデリアS(ダ8.5f)
フロステッドFrosted米国2012TapitホイットニーS(ダ9f)
スプリングクオリティSpring Quality米国2012セン鹿Quality RoadマンハッタンS(芝10f)
エイベルタスマンAbel Tasman米国2014鹿Quality Roadケンタッキーオークス(ダ9f)
ヘヴンリーラヴHeavenly Love米国2015鹿Malibu MoonアルシバイアディーズS(ダ8.5f)
マヌカロサリナManuca Rosalina亜国2015鹿Manipulatorセレクシオンドポトランカス大賞(ダ2000m)
ミスターメロディUSA米国2015鹿毛Scat Daddy高松宮記念(芝1200m)
シッピカンハーバーSippican Harbor米国2016黒鹿OrbスピナウェイS(ダ7f)

 ○ダノンプレミアムは着実に第2のピークへ向かっていて、3歳時を2戦にとどめたことが現状から見るに結果的には良かったといえるのではないか。5代母クリスタルパレスの子孫に英ダービー馬ロイヤルパレスや英セントレジャー-G1のライトキャヴァルリー、英1000ギニー-G1のフェアリーフットステップスらが出るクラシックファミリー。祖母の父デインヒルUSAの存在もこの距離のG1では心強い。

 ▲アーモンドアイは末脚という点では最も強烈な印象を残した桜花賞-G1と同じ距離に戻るので、どれほどのパフォーマンスを見せてくれるのかは当然楽しみ。ただ、古馬になると、若いときのように常時まじめにいることは難しくなってくる可能性はある。

 △ケイアイノーテックは母が日本で唯一のスマーティジョーンズの重賞勝ち産駒という希少さがあり、本馬が母の父として世界で唯一のG1勝ち馬という点でもディープインパクト珍品配合のカテゴリーに入る。米2冠馬スマーティジョーンズはイルーシヴクオリティを経てゴーンウエストに遡る。ミスタープロスペクター系随一の多芸多才な系統だけに、まだ秘めた引き出しがあるかもしれない。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2019.6.2
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