2019ヴィクトリアマイル


東京1600で踊る勇者

 先週のこの欄ではNHKマイルC-G1がいかに荒れるかを述べたが、実は過去10年のこのレースはそれに輪をかけて荒れている。過去10年の馬券圏内延べ30頭の集計は

 NHKマイルCヴィクトリアM
5人気以下15頭18頭
人気の平均5.976.07
複勝平均590円735円

 と3つの項目においてヴィクトリアマイル-G1の方が荒れていることを示している。2015年のストレイトガール5番人気→ケイアイエレガント12番人気→ミナレット18番人気が平均を大きく押し上げてのものだが、それがなくても高水準の荒れ方となっている点にご留意いただきたい。
 このレースの最多勝種牡馬は4勝のフジキセキで、それを3勝で追うのがディープインパクト。ヴィルシーナの2勝目は11番人気、昨年のジュールポレールは8番人気だから狙いを間違えなければ高配当の可能性もある。◎レッドオルガはエリモピクシーの7番仔。エリモピクシーはエリザベス女王杯など4勝を挙げたエリモシックの全妹で、自身も重賞勝ちこそなかったがオープンのファイナルSに勝ったほか京都牝馬S、愛知杯、福島牝馬Sでそれぞれ3着となった実績がある。エリモシックの産駒にブラックタイプ(上級競走入着歴)を得たものが出なかったのとは対照的に、こちらは産駒4頭が重賞に11勝、競走年齢に達した全8頭中7頭がブラックタイプを得ている。下表に示したのはきょうだいの東京1600mでの全成績で、2番仔クラレントを筆頭に多くの実績を積み上げながら画龍点睛を欠くというのか、G1勝ちだけがない。本馬はこのきょうだいの中で重賞勝ちはないが、こと東京1600mの適性という点では4戦して4着以下なしと馬券圏内から落ちたことがない。母のダンシングブレーヴUSA×テスコボーイGBという配合は前者が1983年、後者が1963年生まれで、20世紀的というか古さを否めないが、ディープインパクト産駒でいうとキズナの母キャットクイルはストームキャット1983年×ダマスカス1964年だった。年代のギャップが遺伝的な活力につながるということがあるのかもしれないという気はしないでもない。祖母のエリモシューテングは忘れな草賞の勝ち馬。ヴェイグリーノーブル産駒の3代母デプグリーフUSAの仔には金鯱賞のパッシングパワー、孫には日経新春杯のエリモダンディー、函館記念3連覇のエリモハリアーらが出たえりも農場の主力牝系のひとつだ。


エリモピクシー産駒の東京1600m成績 (6.1.8.11)
年月日レース名頭数馬場着順馬名性齢斤量
2011/06/05安田記念G1187リディル牡458アグネスタキオン
2012/05/06NHKマイルCG118クラレント牡357ダンスインザダーク
2012/10/20富士SG318クラレント牡354ダンスインザダーク
2012/11/25キャピタルS184クラレント牡356ダンスインザダーク
2013/02/03東京新聞杯G316クラレント牡456ダンスインザダーク
2013/05/05NHKマイルCG1184レッドアリオン牡357アグネスタキオン
2013/10/19富士SG3156レッドアリオン牡354アグネスタキオン
2013/11/23キャピタルS187レッドアリオン牡355アグネスタキオン
2014/02/17東京新聞杯G316クラレント牡557ダンスインザダーク
2014/05/11NHKマイルCG1189サトノルパン牡357ディープインパクト
2014/06/08安田記念G11710クラレント牡558ダンスインザダーク
2014/10/25富士SG316レッドアリオン牡456アグネスタキオン
2015/06/07安田記念G117クラレント牡658ダンスインザダーク
2015/06/07安田記念G1178レッドアリオン牡558アグネスタキオン
2016/06/05安田記念G1128クラレント牡758ダンスインザダーク
2016/06/05安田記念G11210レッドアリオン牡658アグネスタキオン
2017/06/04安田記念G1189クラレント牡858ダンスインザダーク
2017/11/18ユートピアS1600万13レッドアヴァンセ牝455ディープインパクト
2018/05/06湘南S1600万12レッドオルガ牝455ディープインパクト
2018/05/06NHKマイルCG118レッドヴェイロン牡357キングカメハメハ
2018/05/13ヴィクトリアマイルG118レッドアヴァンセ牝555ディープインパクト
2018/06/10多摩川S1600万9レッドオルガ牝455ディープインパクト
2018/10/07鷹巣山特別1000万9レッドヴェイロン牡355キングカメハメハ
2018/10/20富士SG318レッドアヴァンセ牝554ディープインパクト
2018/10/28紅葉S1600万11レッドオルガ牝455ディープインパクト
2019/02/03東京新聞杯G315レッドオルガ牝554ディープインパクト

 ○ラッキーライラックはアーモンドアイに出会ってから……というよりも、エポカドーロの成績からも分かる通りオルフェーヴル産駒は急上昇期と停滞期がはっきりしているように見える。その後の上昇期があるのかどうかは今後の経過を観察する必要があるが、牡馬相手の準G1ともいえる中山記念-G2・2着の実績をそのままスライドさせてここなら上位と捉えるのは少し危険かもしれない。そのぶん割り引いての対抗ということになる。母のライラックスアンドレースUSAは米国の3歳早春の重要なG1であるアシュランドS-G1に勝ち、2番仔ラルクは1600mから2400mで3勝を挙げてフランスに渡った。祖母はシアトルスルー産駒。アリダー産駒の3代母ステラマドリッドUSAが名牝で、エイコーンS-G1など米G1に4勝し、娘にダイヤモンドビコー、孫に兵庫ジュニアグランプリ2着のマキャヴィティ、曾孫にマイルチャンピオンシップ-G1のミッキーアイルとNHKマイルC-G1のアエロリットが出た。4代母マイジュリエットも名牝で、牡馬相手のヴォスバーグH-G2を含め米重賞に6勝を挙げ、産駒にシュヴィーH-G1のティズジュリエットが出た。5代母マイビューパーズの曾孫にドバイシーマクラシック-G1のハーツクライがいる。

 中山記念でラッキーライラックを差し切ったステイゴールド産駒ウインブライトはその後クイーンエリザベス2世カップ-G1を快勝。父仔による香港G1制覇となった。オルフェーヴル産駒キラーが1世代上のステイゴールド産駒というのはあり得る話で、牝馬の場合は上下の波が大きいので▲クロコスミアがそろそろ上げ潮に乗って穴を開けるころかもしれない。母デヴェロッペは紫苑S2着、クイーンC4着のある活躍馬で、3代母アルヴォラGBの産駒にはスプリントC-G1のディクタットGBがいて、4代母パークアピールはチェヴァリーパークS-G1など2歳G1に2勝し、産駒ケープクロスは大種牡馬となった。父ステイゴールドの祖母の父がノーザンテーストCANであり、母の父ボストンハーバーUSAのブルードメアサイアーがヴァイスリージェントであるので、4代目にE.P.テイラー・ブランドのノーザンダンサー直仔が並ぶことになる。このあたりはサンデーサイレンスUSA時代の隠し味として有効。

 G1の穴はG1勝ち馬と終わってから気付くことはよくある。なるべくなら走る前に気付きたい。△レッツゴードンキは過去3度挑戦して(10)(11)(6)着だが、キングカメハメハ産駒は2011年の勝ち馬アパパネと3着レディアルバローザ、2015年2着で波乱を演出したケイアイエレガントなど人気の有無にかかわらず実績がある。母マルトクは6歳10月まで32戦して5勝。今回はそれを超える33戦目。母の日の記念の勝利となるかも。


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