2019皐月賞


カメハメハ王国の逆襲

 2012年から続いてきた1位ディープインパクト、2位キングカメハメハの堅固なツートップがそう簡単に崩れるとは今のところ思えないが、サドラーズウェルズの英愛リーディングは13年連続、サンデーサイレンスUSAの全日本リーディングも13年連続で次に王座を譲った。そのあたりが種牡馬ランキング長期政権の限界といえる。キングカメハメハにはロードカナロア、ルーラーシップという有力な後継種牡馬が既に現れ、2年遅れて種牡馬となったディープインパクトにもこのあとに大物後継候補が控えている。あと5年くらいのうちには、ゆっくりと大きな変化が来るのだろう。キングカメハメハ後継種牡馬の産駒群が稼動を始めたのは2016年。一流の競走成績を持ち、かつサンデーサイレンスUSAの血を持たない非SS型キングカメハメハ系であるルーラーシップとロードカナロアはいずれも初年度産駒からクラシック勝ち馬を送る順調な滑り出しを見せた。下表にある両馬の重賞勝ち産駒10頭のうち、ダノンスマッシュ以外の9頭は母系にサンデーサイレンスUSAの血が入っており、それを活用できる非SS型キングカメハメハ系の強みを存分に生かしたことになる。ディープインパクト系とキングカメハメハ系のそれぞれの資質とは別に、走る馬または優れた繁殖牝馬の多くにサンデーサイレンスUSAの血が流れているという環境が非SS型キングカメハメハ系に有利なのは、過去3年間のトレンドを見るだけでも明らかだろう。
 今回出走するキングカメハメハ系は直仔クラージュゲリエとロードカナロア産駒サートゥルナーリア、ファンタジストの3頭。クラージュゲリエは祖母の父がサンデーサイレンスUSAであり、ロードカナロア産駒2頭は母の父がサンデーサイレンスUSA直仔。◎クラージュゲリエは京成杯-G3勝ち馬プロフェットの半弟。母の父タニノギムレットは日本ダービー馬でウオッカとの父娘制覇も達成している点が強調されるが、皐月賞も極めて惜しい3着だった。サンデーサイレンスUSA産駒の祖母ビスクドールは未勝利だが、産駒アイスドールはクイーン賞3着、バトードールはユニコーンS2着、オウケンビリーヴはクラスターCに勝った。3代母フェアリードールの産駒にはエリザベス女王杯のトゥザヴィクトリー、クイーン賞のビーポジティブ、シンザン記念のサイレントディールがおり、孫にはジャパンC-G1・2着のデニムアンドルビーがいるほか、トゥザヴィクトリーとキングカメハメハの配合によって生まれたトゥザグローリーは有馬記念-G1・3着2回、トゥザワールドは弥生賞-G2に勝ち皐月賞-G1と有馬記念-G1で2着、トーセンビクトリーは中山牝馬S-G3勝ちと中山の重賞に特異な適性を示している。それらがヌレエフ4×3だったのに対してこちらはヌレエフ4×4となるが、キングカメハメハとタニノギムレットの組み合わせならミスタープロスペクター系×ロベルト系のニックスとなり、クラシック向きの底力も備わっているだろう。


拡大を続けるキングカメハメハ王国 (種牡馬入りした産駒一覧)
馬名生年母の父初供用主な産駒など
ケイアイドウソジン2006ブリーダーズフライトUSACutlass2016産駒血統登録頭数 1
スターウォーズ2007レディバラードIREUnbridled2013産駒血統登録頭数 2
タイセイレジェンド2007シャープキックメジロマックイーン2016産駒血統登録頭数 32
トゥザグローリー2007トゥザヴィクトリーサンデーサイレンスUSA2015アギト(浦和)、ファムファタル、メイショウヤシャ
ルーラーシップ2007エアグルーヴトニービンIRE2013キセキ(菊花賞-G1)、ダンビュライト(京都記
念-G2)、テトラドラクマ(クイーンC-G3)
ローズキングダム2007ローズバドサンデーサイレンスUSA2014アンブロシオ、スプリングマン(浦和)
クリーンエコロジー2008スパークルジュエルUSAUnbridled's Song2017初年度産駒血統登録頭数 11
ベルシャザール2008マルカキャンディサンデーサイレンスUSA2015シャイニーロック、グラビテーション(川崎)
ロードカナロア2008レディブラッサムStorm Cat2014アーモンドアイ(ドバイターフ-G1)、ステルヴィ
(マイルチャンピオンシップ-G1)、サートゥル
ナーリア
(ホープフルS-G1)、ファンタジスト
(京王杯2歳S-G2)、ヴァルディゼール(シン
ザン記念-G3)、ケイデンスコール(新潟2歳S
-G3)、ダノンスマッシュ(シルクロードS-G3)
ハタノヴァンクール2009ハタノプリエブライアンズタイムUSA2016産駒血統登録頭数 25
ホッコータルマエ2009マダムチェロキーCherokee Run2017初年度産駒血統登録頭数 110
ラブリーデイ2010ポップコーンジャズダンスインザダーク2017初年度産駒血統登録頭数 101
トゥザワールド2011トゥザヴィクトリーサンデーサイレンスUSA2016産駒血統登録頭数 154
ドゥラメンテ2012アドマイヤグルーヴサンデーサイレンスUSA2017初年度産駒血統登録頭数 187
ミュゼスルタン2012アスクデピュティフレンチデピュティUSA2017初年度産駒血統登録頭数 3
ヤマカツエース2012ヤマカツマリリングラスワンダーUSA2019 
レーヴミストラル2012レーヴドスカーFRHighest Honor2019 
ミッキーロケット2013マネーキャントバイミーラヴIREPivotal2019 
リオンディーズ2013シーザリオスペシャルウィーク2017初年度産駒血統登録頭数 132

 ○サートゥルナーリアはジャパンC-G1のエピファネイア、朝日杯フューチュリティS-G1のリオンディーズの半弟で、母シーザリオは優駿牝馬とアメリカンオークス-G1に勝った名牝。父系のキングマンボと祖母の父サドラーズウェルズのエルコンドルパサーUSA的ニックスはリオンディーズとも共通するが、ロードカナロアの母の父ストームキャットを経由したストームバード、スペシャルウィークの母の父マルゼンスキーを経由したニジンスキーとE.P.テイラー・ブランドのノーザンダンサー直仔が共鳴する点が弟の独自性となる。

 ▲ファンタジストはディープインパクト牝馬にロードカナロアの最先端配合。母の父としてのディープインパクトは非SS型キングカメハメハ系のルーラーシップとの配合によりキセキを送っている。血統表3代目の並び、要するに曽祖父4頭は上から順にキングマンボ、ストームキャット、サンデーサイレンスUSA、デインヒルUSAと1990年代の欧米日豪の大物を集めていて、スケールの大きさを感じさせる。3代母ディアーミミUSAの子孫にブリーダーズCジュヴェナイル-G1のミッドシップマン、ウッドメモリアルS-G1など米G1・3勝のフロステッドらがいる牝系も上質。

 母系のサンデーサイレンスUSA血脈を生かす大物として忘れてならないのがハービンジャーGB。4頭のG1勝ち産駒のうちペルシアンナイト、ブラストワンピース、ディアドラの3頭が母系にサンデーサイレンスUSAの血を持っている。△ニシノデイジーは母の父がサンデーサイレンスUSA直仔の皐月賞馬アグネスタキオン。祖母の父セイウンスカイはサートゥルナーリアの母の父スペシャルウィークに先着して皐月賞馬となった。そして3代母ニシノフラワーは桜花賞のほか、中山のスプリンターズSを電光石火の末脚で制した名牝。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2019.4.14
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