2019桜花賞


誰も散らせぬこの桜

 ディープインパクト産駒はファーストクロップの2011年マルセリーナに始まって、ジェンティルドンナ、アユサン、ハープスターとこのレースの4連覇を果たし、サンデーサイレンスUSAを抜いて桜花賞最多勝種牡馬となった。しかし、2015年には産駒6頭出しで2、3着。2016年も5頭出しで2着、2017年は2頭出しで7着と取消、昨年は6頭出しで4着が最高だった。4連覇中は2011年から順に3頭、4頭、2頭、1頭と効率的だったのに比べると数打っても当たらない状況が続いており、ディープインパクトの名声が上がる一方なのと逆に桜花賞に限った成績は下降しつつある。2015年以降は産駒で1番人気となる馬がいなかったことからも分かるように、個々の能力の問題といえばそれまでだが、出走数が多ければ勝つ確率が上がるということでもない。さて、有力2頭を含む5頭出しの今年はどうなるのでしょうか。
 ディープインパクト産駒が1番人気にも勝ち馬にもならなかったここ4年を振り返ると、2015年は1番人気ルージュバック(父マンハッタンカフェ)、勝ち馬レッツゴードンキ(キングカメハメハ)、2016年は1番人気メジャーエンブレム(ダイワメジャー)、勝ち馬ジュエラー(ヴィクトワールピサ)、2017年は1番人気ソウルスターリング(フランケル)、勝ち馬レーヌミノル(ダイワメジャー)、2018年は1番人気ラッキーライラック(オルフェーヴル)、勝ち馬アーモンドアイ(ロードカナロア)と大体がサンデーサイレンスUSA系かキングカメハメハ系としても2度登場した名前はダイワメジャーだけだから随分バラエティに富んでいる。その方向性に沿って今回の桜花賞未勝利種牡馬はキンシャサノキセキ、クロフネUSA、新種牡馬ジャスタウェイ、バゴFR、ハーツクライ、ハービンジャーGB、マツリダゴッホ、海外繋養馬ルアーヴル、ワークフォースGBの9頭。これらのうち、2、3着のある惜しい種牡馬はクロフネUSA、バゴFR、ハーツクライの3頭となる。特にハーツクライには2014年ヌーヴォレコルトの3着、2017年リスグラシューの2着があって、しかもそれぞれ0秒1の惜敗。周期的にいうと核心に迫りつつあるのではないだろうか。ハーツクライ産駒の◎ノーワンはその牝系が豪華。4代母サニーヴァリーの子孫は本拠地の英愛だけでなく、日本でも大繁栄しており、下表のようにG1級の勝ち馬だけを記載した牝系図でもこれだけのボリュームになる。本格派の欧州血統でステイヤー色も濃いが、それでいて一流馬はクラシックにしっかり間に合う点も特長といえる。ノーワンの母プレイガールIREはカーリアン×サドラーズウェルズで祖母がサンプリンセスだから、1996年の東京優駿をデビュー3戦目で制した天才フサイチコンコルドとまったく同じ血統構成。クールモアの主力種牡馬同士の組み合わせだからこのパターンはアイルランド産馬にたくさんいそうに思えるが、重賞勝ち馬はフサイチコンコルドが世界で唯一という、クールモア血統七不思議があればそのひとつに数えられそうな配合だ。ハーツクライ×フサイチコンコルドと考えれば、優駿牝馬まで追いかけるつもりで狙う手もある。


名門サニーヴァリー系の豪華な40年
Sunny Valley サニーヴァリー(鹿毛、牝、1972年生、愛国産、父Val de Loir)
  Dancing Shadow(鹿、1977、ダンサーズイメージUSA)
  | River Dancer(鹿、1983、Irish River)
  | | Well Head(鹿、1989、Sadler's Wells)
  | | | コンデュイットIRE(栗、牡、2005、Dalakhani)英セントレジャー-G1、
  | | |   キングジョージ6世&クイーンエリザベスS-G1、BCターフ
  | | |   -G1×2
  | | Ballet Shoes(鹿、1990、Ela-Mana-Mou)
  | | | PETRUSHKA(栗、牝、1997、Unfuwain)愛オークス-G1、ヨークシャ
  | | |   ーオークス-G1、オペラ賞-G1
  | | SPECTRUM(鹿、牡、1992、Rainbow Quest)愛2000ギニー-G1、チャ
  | |     ンピオンS-G1
  | Maid of Erin(鹿、1982、Irish River)
  | | エリンバードFR(鹿、1991、Bluebird)伊1000ギニー-G2
  | |   エリンコート(黒鹿、牝、2008、デュランダル)優駿牝馬-G1
  | Ballerina(鹿、1991、ダンシングブレーヴUSA)
  |   MILLENARY(鹿、牡、1997、Rainbow Quest)英セントレジャー-G1
  SUN PRINCESS(鹿、牝、1980、イングリッシュプリンスIRE)英オークス-G1、
  |       英セントレジャー-G1、ヨークシャーオークス-G1
  | PRINCE OF DANCE(鹿、牡、1986、Sadler's Wells)デューハーストS-G1
  | バレークイーンIRE(鹿、1988、Sadler's Wells)
  | | フサイチコンコルド(鹿、牡、1993、Caerleon)東京優駿
  | | グレースアドマイヤ(鹿、1994、トニービンIRE)
  | |   ヴィクトリー(鹿、牡、2004、ブライアンズタイムUSA)皐月賞
  | | アンライバルド(鹿、牡、2006、ネオユニヴァース)皐月賞
  | Stage Struck(鹿、牝、1992、Sadler's Wells)
  |   プレイガールIRE(鹿、牝、1998、Caerleon)
  |     ノーワン(鹿、牝、2016、ハーツクライ)
  Ploy(鹿、1984、ポッセUSA)
  | POLIUTO(鹿、牡、1991、ラストタイクーンIRE)伊2000ギニー-G1
  Elevate(鹿、1985、Ela-Mana-Mou)
  | アドマイヤラピスIRE(栗、1992、Be My Guest)
  |   アドマイヤホープ(栗、牡、2001、フォーティナイナーUSA)全日本2歳優
  |     駿
  SADDLER'S HALL(鹿、牡、1988、Sadler's Wells)コロネーションC-G1

 ○クロノジェネシスは父バゴFRが産駒オウケンサクラにより1戦2着1回、母の父クロフネUSAは娘が11頭出走してホエールキャプチャで2着1回。さらに祖母の全姉フサイチエアデールは1999年の桜花賞2着だから、こちらも桜花賞渇望度は相当に高い。父のバゴFRはニアルコス家の名門牝系に名馬ナシュワンを配合した名血で、サンデーサイレンスUSA牝馬との配合から菊花賞馬ビッグウィークを出しているのだから、サンデーサイレンスUSA系牝馬の配合相手としてハービンジャーGB級の成功の可能性があった種牡馬。その母の父ヌレエフは近年の日本の競馬においてそのパワーが重要度を増してきている。今年で種牡馬入り14年目だが、まだ巻き返しのチャンスはあるだろう。

 ▲ビーチサンバは父クロフネUSA、母フサイチエアデールだから、クロノジェネシスの母とまったく同じ血統構成。叔母ではないけれど叔母同然という近さなので、どうも結果的にクロノジェネシスを見守る位置での着順に終わっている。クロフネUSAとサンデーサイレンスUSAの配合はヴィクトリアマイル-G1に勝ったホエールキャプチャ、朝日杯フューチュリティSのフサイチリシャールらがいる。1600mの適性や早熟性はいわずもがななので、相対的な瞬発力の有無を別にすると、クロフネUSA産駒が桜花賞に勝てていないのはタイミングの問題かあるいは縁の問題としかいえないようにも思える。

 △プールヴィルは2009年のジョッキークラブ賞-G1(仏ダービー)勝ち馬ルアーヴルの産駒。ノヴェール、ラーイ、ブラッシンググルームと遡る父系で、今どきバゴFRと並んでブラッシンググルーム系が2系統も桜花賞に出てきたのは稀有な出来事として記憶しておきたい。母の父ケンダルジャンもケンドール、ケンメア、カラムーン、ゼダーンGBと遡るフランス固有ともいえる貴重なグレイソヴリン系。母ケンホープはグロット賞-G3に勝ち、コロネーションS-G1で2着となった有能なマイラー。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2019.4.7
©Keiba Book