2019大阪杯


あの一撃をもう一度

 ロンジン・ワールドベストレースホースランキングの年度表彰と同時に発表される「ワールドトップ100G1(3歳以上)」というものがあって、これは各国G1が年間レースレーティング(上位4頭の最終レーティングの平均)の高い順に並べられている。2018年度は首位の凱旋門賞-G1[125.00](年間レースレーティング)から97位タイのサンタアニタダービー-G1[116.25]まで103のレースが選ばれている。選ばれているというかレーティングに沿って自動的にリスト化されているのだが、日本からは7位タイ(以下タイ略)ジャパンC-G1[122.50]、17位天皇賞(秋)-G1[120.75]、17位有馬記念-G1[120.75]、47位大阪杯-G1[118.25]、52位天皇賞(春)-G1[118.00、62位安田記念-G1[117.50]、67位マイルチャンピオンシップ-G1[117.25]、67位東京優駿-G1[117.25]、67位菊花賞-G1[117.25]、76位宝塚記念-G1[117.00]の10レースが入った。新参の大阪杯-G1が本邦第4位となっているのもそれだけ2000mの競走が重要ということではある。ランクインした103を距離カテゴリー別に分けると、S(1000〜1300m)17、M(1301〜1899m)37、I(1900〜2100m)26、L(2101〜2700m)19、E(2701m+)4となっていて、I=2000mはMコラムに次いで重要なレースが多いということになる。単純に1600mと2400mの中間の距離なので、米国ではケンタッキーダービー-G1やブリーダーズCクラシック-G1などが10Fで争われ、英国でも過去10〜20年の間にチャンピオンS-G1やプリンスオブウェールズS-G1といった10FのG1の地位は相対的に上昇している。
 産駒の芝2000mの重賞勝ち鞍数で種牡馬をランク付けすると、過去10年(2009年1月1日〜2019年3月24日)でディープインパクト、キングカメハメハ、ステイゴールド、ハーツクライ、マンハッタンカフェの順位となり、これはおおむね芝の全重賞を対象にした場合と同じ。それでも、2000mで少しだけでも優れているのはないかと、それを探ったのが下表。右の囲みの全芝重賞の成績よりも芝2000mの重賞での成績が優れているものを太字にした。ロードカナロアの2000m重賞2勝はアーモンドアイの秋華賞-G1とサートゥルナーリアのホープフルS-G1という特別な例であるから、圧倒的な勝利数を誇るディープインパクトを別にすれば、ある程度の数が揃って2000mが得意といえるのはハービンジャーGBが第一、次いでキングカメハメハとなる。ハービンジャーGBはレコードでケープブランコを11馬身ち切ったキングジョージY世&クイーンエリザベスS-G1を含め5つの重賞勝ちがすべて12F以上のステイヤーであり、血統構成も古風ともいえる欧州中長距離系を集めている。それでも一昨年来のG1勝ちは1600m、2000m、2200m、2500mとM、I、L部門を揃えてしまった。◎ブラストワンピースは有馬記念-G1の一撃が印象的だが、2000mの新潟記念-G3の勝ち方も素晴らしいものだった。母の父がキングカメハメハ、更に祖母の父フジキセキ経由で父には最高のサポート血脈であるサンデーサイレンスUSAが入っているので2000mの適性や機動力が補強されているだろうし、キセキのつくる流れなら内回りのスローで脚を余して泣くこともない。母ツルマルワンピースは未勝利、りんどう賞と連勝し、阪神ジュベナイルフィリーズ-G1でもレーヴディソールから0秒4差の5着となった素質馬。祖母ツルマルグラマーはファンタジーSで2着となった。3代母エラティスUSAは名馬エルグランセニョールの娘で、産駒に日経賞に勝ち、天皇賞(春)、菊花賞で2着となったアルナスラインを生んだ。4代母の父グロースターク、父系曽祖父の母の父ヒズマジェスティと血統表の5代目にリボー系の大物全兄弟が並んでいるあたりもスケールの大きさを感じさせないではいられない。


芝2000mでの重賞成績 (2009.1.1〜2019.3.24、出走馬の父を対象)
種牡馬名芝2000mのGレースG1
勝ち
芝全Gレース
1着2着3着着外勝率連対率3着率勝率連対率3着率
ディープインパクト4738322780.1190.2150.29670.1070.2150.316
キングカメハメハ2616221680.1120.1810.27640.0910.1660.255
ステイゴールド1720171680.0770.1670.24320.0930.1660.229
ハービンジャー896500.1100.2330.31510.0860.1550.224
ロードカナロア20040.3330.3330.33320.1820.2600.286
オルフェーヴル10050.1670.1670.16710.1720.3450.379
ルーラーシップ023190.0000.0830.20800.0420.1350.260
    キングカメハメハ系2818251910.1070.1760.27160.1030.1780.259
ステイゴールド系1820171730.0790.1670.24130.1180.1930.253

 大レースで人気のないディープインパクト産駒ほど怖いものはなく、○サングレーザーは昨年のG2勝ちからG1好走、更に海外遠征で経験を積んだことでその上昇カーブは継続中と見ていい。母の父デピュティミニスターは米国の主流血統のひとつであるが、じかに入るとダート血統、直仔フレンチデピュティUSA経由なら芝OKという面があった。母の父としてのデピュティミニスターはそれまでも鳴尾記念のマルカダイシスやフィリーズレビューのサクセスビューティといった芝馬を出してはいたが、やはりカネヒキリに代表的なダート志向の強さは否定できないところがあった。それが先週はミスターメロディが高松宮記念-G1でついにG1勝ちを果たし、これでひとつの壁は破ったと見ていいのかもしれない。祖母のウィッチフルシンキングはパッカーアップS-G2(芝9F)など米重賞4勝の芝馬で、産駒にJBCレディスクラシックのメーデイア、福島牝馬Sのロフティーエイム、孫に共同通信杯-G3・3着のエイムアンドエンドがいて活気のある牝系。

 一昨年のマイルチャンピオンシップ-G1を勝った▲ペルシアンナイトは中山記念-G2・5着を経てこのレースでは2着。今年はマイルチャンピオンシップ-G1・2着から香港マイル-G1・5着、金鯱賞-G2・4着を挟んでここへ。マイルチャンピオンシップ-G1はわずかな差だし、香港マイル-G1は相手が世界ランカー・ビューティージェネレーションでは完敗も仕方なしと見ておきたい。ただ、ハービンジャーGBは“キングジョージ”圧勝の2週間後に故障により電撃引退していて、トップレベルでの能力維持がどの程度できたのかは不明に終わったし、そういわれればと産駒の成績を見ると一度G1勝ちなどのピークに達したものは、その後に落ち込まないまでも善戦止まりが多い。ブラストワンピースにもいえることだが、そういった部分での疑いは残る。

 キングカメハメハはルーラーシップ、ロードカナロアらの後継種牡馬が結果を出し、このあともドゥラメンテをはじめとした大物が控えていて、目下の父系の勢いとしてはサンデーサイレンスUSA系をも凌ぐ。直仔△エアウィンザーは京都金杯-G3など重賞3勝のエアスピネルの全弟。母エアメサイアは秋華賞に勝ったほか、優駿牝馬、ヴィクトリアマイルで2着。兄もG1になると2、3着が多く、それが一族全体の傾向としてつきまとうが、いつでもG1勝ちができるポテンシャルを持っているのも事実だ。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2019.3.31
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