2019優駿牝馬


女神の叫びを聞け

 2018年初めから本年先週までの種牡馬別の国内G1勝ちの数はディープインパクトが9勝でトップを走り、ロードカナロアが7勝で追っている。それらに続くキングカメハメハ、ハーツクライ、ハービンジャーGB、ダイワメジャー、アドマイヤムーンがそれぞれ2勝ずつだから、王者と新鋭の一騎打ちから第2グループが離されて追走している構図となる。第3グループはステイゴールド、オルフェーヴル、ゴールドアリュール、スウェプトオーヴァーボードUSA、シンボリクリスエスUSA、ケイムホームUSA、スキャットダディ、アドマイヤマックス、フランケル、トワイニングUSAの1勝勢。外国繋養馬を除くとロードカナロアの躍進ばかりが目立つ。今回は出走がないが、来週はロードカナロア産駒がG1勝ちをひとつ加える可能性が高く、一方のディープインパクトは過去このレースは(3.3.3.22)の実績を残していて、今回も複数の有力馬を含む5頭出し。上位2頭のマッチレースは当分続きそうだ。
 仮にこの状況に抵抗を見せるものがいるとすれば、現役時代からの流れに従いハーツクライをおいて他にない。同馬の産駒は下表にあるように2014年生まれから過去最多3頭のG1勝ち馬が出現している。2016年生まれの現3歳からはまだG1勝ち馬は現れておらず、重賞勝ちもノーワンによるフィリーズレビュー-G2ひとつだけだが、ハーツクライ産駒の成長の特徴はゆっくり加速してたとえばディープインパクト産駒より後から急上昇というイメージで捉えればよい。◎シャドウディーヴァは新馬戦2着から3戦目で勝ち上がり、ここに来て重賞2着で上昇を示していて、ハーツクライ産駒の大物かもしれない成績を残してきた。母のダイヤモンドディーバGBは英国デビューでオールウェザー2勝、芝1勝、リステッド善戦級の成績で米国に渡り、米国の芝が合ったかキャッシュコールマイル招待S-G2とウイルシャーH-G3に勝ち、2年連続出走したゲイムリーS-G1では2着、3着となった。その父ダンシリはデインヒルUSAの芝中距離部門の優秀な後継種牡馬で、その産駒ハービンジャーGBを通じて日本にも大きな影響を与えている。母の父としても愛オークス-G1のチキータ、ブリーダーズCマイル-G1のエキスパートアイ、ミドルパークS-G1のアステア、ロイヤルオーク賞-G1のアイスブリーズなどスプリンター、マイラー、ステイヤーとさまざまなカテゴリーのG1勝ち馬を送り出している。祖母はアホヌーラ系インディアンリッジ産駒で、3代母クンダリニは南アフリカでブラッドラインクラシック-G1などのG1に勝った。5代母アンジュリの産駒には日本人オーナー芳賀満男氏の持ち馬として1990年から1992年まで愛英米独で18戦し、愛1000ギニー-G1、コロネーションS-G1、エクリプスS-G1、バイエリシェスツフトレネン-G1など4つのG1に勝った名牝クーヨンガがいる。ハーツクライはリファールを持っていて、母にもダンチヒ、ニジンスキー、エルグランセニョールとノーザンダンサーの血が入る。ノーザンダンサー色の強い父の産駒アドマイヤラクティ、ヌーヴォレコルト、リスグラシューなどに似て、距離克服能力が高いと見ていい。


一流ハーツクライ産駒の成長曲線
馬名生年母の父初戦初勝利重賞初勝利キャリアハイ勝利
アドマイヤラクティ2008エリシオFR2歳11月新馬[2]2歳12月2戦目5歳2月ダイヤモンドSG36歳10月コーフィールドCG1
ジャスタウェイ2009Wild Again2歳7月新馬[1]同左3歳2月アーリントンCG35歳3月ドバイデューティフリーG1
ヌーヴォレコルト2011スピニングワールドUSA2歳10月新馬[4]2歳11月2戦目3歳5月優駿牝馬G1同左
ワンアンドオンリー2011タイキシャトルUSA2歳8月新馬[12]2歳9月3戦目2歳12月ラジオNIKKEI杯G33歳6月東京優駿G1
シュヴァルグラン2012Machiavellian2歳9月新馬[2]2歳10月2戦目4歳3月阪神大賞典G25歳11月ジャパンCG1
スワーヴリチャード2014Unbridled's Song2歳9月新馬[2]2歳10月2戦目3歳2月共同通信杯G34歳4月大阪杯G1
リスグラシュー2014American Post2歳8月新馬[2]2歳9月2戦目2歳10月アルテミスSG34歳11月エリザベス女王杯G1
Yoshida2014Canadian Frontier2歳11月未勝[2]3歳4月2戦目3歳10月ヒルプリンスSG34歳9月ウッドワードSG1
タイムフライヤー2015ブライアンズタイムUSA2歳8月新馬[2]2歳9月2戦目2歳12月ホープフルSG1同左

 ダイワメジャー産駒は母の父がオペラハウスGBのメジャーエンブレムでさえ1600m向きだったので9割方マイラーを出すと考えるのが適当だが、中にはアルゼンチン共和国杯-G2・2着のメイショウカドマツやステイヤーズS-G2・3着のプレストウィックのような例もある。○シゲルピンクダイヤは母の父がサドラーズウェルズ系でも特にステイヤー色の濃いハイシャパラル。そして祖母ムーンライトダンスIREは愛インタナショナルS-G3勝ち馬でその父シンダーは凱旋門賞馬。3代母の産駒には愛ダービー-G1のグレイスワローがいる。意外に距離は克服できそうに思えるし、ノーザンテーストCANとザミンストレルのE.P.テイラー・ブランドのノーザンダンサー直仔が父と母から入っている点も大レース向き。

 ビクトリアマイルに勝ったノームコアの半妹が▲クロノジェネシス。父はキングジョージ6世&クイーンエリザベスS-G1のハービンジャーから、凱旋門賞馬バゴに替わった。バゴはその良血が仇となって母系に潜むヌレエフやミスタープロスペクターのスピードがより強く出ることもあるが、菊花賞馬ビッグウィークを出したようにナシュワン直系のステイヤーとしての側面も持っている。この距離で問題となるとすれば、むしろ母の父クロフネUSAの方だろうが、昨年2着のリリーノーブルはクロフネUSAの娘の仔ではあった。祖母インディスユニゾンはシンザン記念に勝ち桜花賞2着となったフサイチエアデールの全妹。この一族はフサイチリシャール、ライラプス、そしてビーチサンバなど、クロフネUSA〜フレンチデピュティUSAによって能力を一段階高められる面もある。

 もう一頭のハーツクライ産駒△ノーワンは母がカーリアン×サドラーズウェルズを経由したノーザンダンサー3×3のフサイチコンコルド配合。日本ダービー馬フサイチコンコルドとの共通点は配合種牡馬だけでなく、牝祖が名牝サンプリンセスであること。サンプリンセスは英オークス-G1、ヨークシャーオークス-G1、英セントレジャー-G1に勝ち、凱旋門賞-G1・2着、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS-G1で3着のある名牝。その子孫にはフサイチコンコルドのほかにも皐月賞馬アンライバルド、同ヴィクトリー、阪神大賞典のリンカーン、デューハーストS-G1のプリンスオブダンスら多くの活躍馬がいる。4代母サニーヴァリーからは更に多くの活躍馬が出ていて、コロネーションC-G1のサドラーズホール、英セントレジャー-G1のミレナリーらのほか、2011年の勝ち馬エリンコートもこのファミリーに属す。こちらもシャドウディーヴァと同様ノーザンダンサーを土台としたハーツクライ産駒で、英愛血統でより整然と組み上げられているようにも見えるだけに、距離延長で一変があるかもしれない。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2019.5.19
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