2019高松宮記念


父を追い父を超える日

 種牡馬ロードカナロアは初年度産駒が3歳を迎えた昨年、牝馬アーモンドアイが桜花賞-G1、優駿牝馬-G1、秋華賞-G1の牝馬三冠とジャパンC-G1に勝ち、牡馬のステルヴィオはマイルチャンピオンシップ-G1に勝った。暮れには2歳のサートゥルナーリアがホープフルS-G1に勝ち、1600m、2000m、2400m、2歳戦と1年でほとんどのカテゴリを制圧してしまった。このあたりの万能ぶりは父キングカメハメハの資質を受け継いでいるためだろう。そのような驚きの一方で自身に似たスプリンターの登場も待望されていたのであるが、このタイミングで満を持して登場したのが◎ダノンスマッシュということになる。父と同じケイアイファームで父と同じ3月に生まれた同馬は、父と同じ安田隆行厩舎に入厩した。その後の成績は下表の通り。父より早く一線級に上がった印象があるが、重賞初制覇は父と同じ3歳11月の京阪杯-G3となり、同様に前哨戦のシルクロードS-G3に勝ってここに臨むことになった。ロードカナロアは初めての高松宮記念-G1では3着に敗れ、函館スプリント-G3、セントウルS-G2も2着に終わり、次のスプリンターズS-G1のレコード勝ちから無敵となって香港スプリント-G1、翌年の高松宮記念-G1、安田記念-G1、2度目のスプリンターズS-G1と香港スプリント-G1など短距離界を制圧した。ここで初挑戦のスプリントG1に勝てば父をひとつ超えることになる。母のスピニングワイルドキャットUSAはダンチヒ系の快足ハードスパンUSAの娘で米国のダート8.5Fで1勝。祖母のハリウッドワイルドキャットが名牝で、ハリウッドオークス-G1、ブリーダーズCディスタフ-G1、ゲイムリーH-G1の3つのG1に勝った。特にブリーダーズCディスタフ-G1は鞭を落としたエディー・デラフーセイ騎手の素手による鼓舞に応えて前年の同レースの覇者パセアナをハナ差退けたことで有名なレースだ。ハリウッドワイルドキャットの産駒にはBCマイル-G1勝ち馬ウォーチャント、ジュライS-G2勝ち馬イヴァンデニソヴィッチがいて、孫のデーニッシュダイナフォーマーはシングスピールS-G3に勝った。クリスエス産駒のハリウッドワイルドキャットはロベルト×ミスタープロスペクターのニックスの走りといえる存在で、そこにキングマンボ系の父を配合することでミスタープロスペクター4×4となる。それに挟まれているのがストームキャットとダンチヒというノーザンダンサー系の米国スピード血統、特にダンチヒ系ハードスパンUSAのパワフルなスピードの影響力は大きい。父より早くG1に勝ち、かつ、このレースの父仔制覇達成の可能性は高い。


最初の高松宮記念G1までの父と仔の対照表
ロードカナロア牡 鹿毛 2008年3月11日生 新ひだか産ダノンスマッシュ牡 鹿毛 2015年3月6日生 新ひだか産
 日付 レース着順距離騎手タイム通過順馬体重
2017/09/022歳新馬21400戸崎1:23.0[1][2][1]466
09/242歳未勝利11400福永1:21.9[7][7][5]462
日付 レース着順距離騎手タイム通過順馬体重10/15もみじS11400福永1:23.4[3][3][3]462
2010/12/052歳新馬11200古川吉1:08.4[1][1][1]48612/17朝日杯FSG151600福永1:34.0(13)[13][13]470
2011/01/05ジュニアC21600蛯名1:35.1[4][1][1][1]4802018/03/17ファルコンSG371400戸崎1:22.6(13)[12][13]466
01/293歳500万下21400福永1:22.1[1][1][1]48204/14アーリントンCG351600北村友1:33.8[8][2][3]466
04/16ドラセナ賞50011200北村友1:08.3[1][1][1]48005/06NHKマイルCG171600北村友1:33.2[1][2](2)470
05/14葵S11200北村友1:09.3[2][2][2]48607/21函館日刊スポ杯160011200北村友1:08.4[3][3][2]470
11/06京洛S11200福永1:08.0[6][6][7]49608/26キーンランドCG321200北村友1:09.8[2][3][2]472
11/26京阪杯G311200福永1:08.1[2][4][3]49811/25京阪杯G311200北村友1:08.0[4][3]470
2012/01/28シルクロードSG311200福永1:08.3[8][9][9]5002019/01/27シルクロードSG311200北村友1:08.3[5][5]474
03/29高松宮記念G131200福永1:10.4[4][4]50003/24高松宮記念G11200北村友   

 ミスタープロスペクターが生まれたのが1970年。それから50年近く経過した今、ひと口にミスタープロスペクター系といっても分枝による違いは大きい。力のキングマンボ系とするとゴーンウエスト系は捉えどころのなさがひとつの特徴とはいえる。ゴーンウエスト直仔のブリーダーズCスプリント-G1勝ち馬スペイツタウンはそれでも強靭なスプリントという点ではっきりしたスペシャリストとしての資質を示していたが、種牡馬になると良い意味でゴーンウエスト系らしさを発揮して長い距離に向いたり芝をこなしたり、さまざまな産駒を送り出した。そういった意味ではこの父らしい快足を受け継いだ○モズスーパーフレアは貴重な存在。父系がミスタープロスペクター、父の母の父がストームキャット、母の父の父がダンチヒという構成はダノンスマッシュと同じ。こちらは祖母の父がミスタープロスペクターと相性の良いインリアリティ系のヴァリッドアピールという点でより米国血統らしい色合いとなっている。半姉サクリスティはダート6FのオールドハットS-G3に勝ち、姪のカフィラはオーストラリアでG2勝ちがある。3代母ビッドギャルの産駒にはハッチスンS-G2勝ち馬ヴァリッドウェイジャー、孫にテストS-G1など米G1・3勝のジャージーガール、シガーマイルH-G1のパージ、曾孫にシガーマイルH-G1のジャージータウンらがいるファミリーで、5代母フールミーノットの産駒フーリッシュプレジャーは1975年のケンタッキーダービー馬。

 ▲ミスターメロディの父スキャットダディは昨年の米三冠馬ジャスティファイを出した。仮にジャスティファイがいなくても名種牡馬と呼ばれるに十分な多くの活躍馬を送っていて、2015年に早世したのが惜しまれる。ロードカナロアやスペイツタウンが、父系がミスタープロスペクター系で母の父ストームキャットという形になっているのと逆に、こちらは父系がヨハネスブルグUSA、ヘネシーUSAを経てストームキャットに遡り、母の父がミスタープロスペクター。ストームキャットとミスタープロスペクターの組み合わせはどんな配列でも走るというわけでもないだろうが、30年も40年も血統が残るのにはそれなりに理由があるということになる。3代母がラスヴィルヘネスS-G1勝ち馬のクールアライヴァルだから、佐賀記念のクーリンガーや兵庫ジュニアグランプリのゴーイングパワーでお馴染みのファミリー。

 △ラブカンプーにも父仔制覇がかかる。父のショウナンカンプが勝ったのは2002年なので旧コースだったが、サクラバクシンオーから続くスプリントの系譜をつなぐ貴重な存在であることには変わりない。母の父マイネルラヴもスプリンターズS勝ち馬で、そういったスプリント特化型の血が昨秋のスプリンターズS-G1・2着という健闘に結びついた。ノーザンテースト、ニジンスキー、ザミンストレルというE.P.テイラー・ブランドのノーザンダンサー系の血が3本潜んでいるのが配合上の妙味。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2019.3.24
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