2019マイルチャンピオンシップ


ディープインパクト尽くしの旨み

 芝G1におけるディープインパクト産駒の多頭数出しはすっかり日常的な光景となっていて、今年は高松宮記念-G1・1頭、大阪杯-G1・4頭、桜花賞-G1・5頭、皐月賞-G1・3頭、天皇賞(春)-G1・2頭、NHKマイルC-G1・2頭、ヴィクトリアマイル-G1・7頭、優駿牝馬-G1・5頭、東京優駿-G1・4頭、安田記念-G1・4頭、宝塚記念-G1・2頭、スプリンターズS-G1・1頭、秋華賞-G1・5頭、菊花賞-G1・3頭、天皇賞(秋)-G1・6頭、エリザベス女王杯-G1・5頭と延べ59頭を送り込んで大阪杯-G1、桜花賞-G1、天皇賞(春)-G1、優駿牝馬-G1、東京優駿-G1、菊花賞-G1に勝った。このレースにも毎年多数の産駒が出走していて、最多の2016年は8頭だった。その年はミッキーアイルが逃げ切っており、8頭も出れば勝てるだろうという考えも成り立ち得るが、競馬は量ではなく質なので、6頭出走して3、4、5、6、7着に並んだ昨年のような例もある。このレースに安田記念-G1とヴィクトリアマイル-G1を加えた古馬芝1600mのG1において1〜3着となったディープインパクト産駒は以下の表1の通り。出走機会が25レースで3着以内が24回だから、平均すると1頭は必ず馬券に絡むことになる。優秀な成績ではあるが、特にこの距離カテゴリーで優れているのかというとそうでもなくて、表2に示した通り実際のところは他とそう変わらない。この部門のディープインパクト産駒が他より優れているのは単勝回収率で、109.2%と100を超えるのはマイルのカテゴリーだけ。古馬芝G1全体でディープインパクト産駒の単勝回収率は78.4%だから、人気薄が勝つ場合があるのが特徴といえる。表1の勝利時の単勝オッズも過半数が7番人気以下、10倍以上の高配当となっており、思い切った穴狙いがこのレースでのディープインパクト買いの秘訣といえる。
 ◎レッドオルガは今年海外でG1勝ちを果たしたディアドラやリスグラシューと同じ2014年生まれの牝馬。ディープインパクト産駒としては牝馬ながら皐月賞で1番人気となったファンディーナと同世代となる。ダンシングブレーヴUSA産駒の母エリモピクシーはオープンのファイナルSなど7勝を挙げ、京都牝馬Sなど重賞の3着が3回ある。産駒はスワンS、デイリー杯2歳S-G2のリディル、デイリー杯2歳S-G2など重賞6勝のクラレント、マイラーズC-G2、関屋記念-G3のレッドアリオン、京阪杯-G3のサトノルパン、ヴィクトリアマイル-G1・3着のレッドアヴァンセ、NHKマイルC-G1・3着のレッドヴェイロンとほとんどが重賞勝ちか入着の実績を残しており、京都の重賞が多いのも目をひくところ。祖母のエリモシューテングはテスコボーイGB産駒で忘れな草賞など2勝。産駒エリモシックはエリザベス女王杯に勝った。ヴェイグリーノーブル産駒の3代母デプグリーフUSAの産駒には金鯱賞のパッシングパワー、孫には函館記念3連覇のエリモハリアー、日経新春杯のエリモダンディーがいる。エリモシックのエリザベス女王杯は1997年のことだからもう20年以上G1級から遠ざかっていることになる。母の父としてのダンシングブレーヴUSAの第一線での活躍が期待できるのも本馬とその弟のレッドヴェイロンくらいになってしまった。なお、昨年のこのレースでは全姉レッドアヴァンセが13番人気ながら勝ったステルヴィオから0秒3差の7着となっている。


表1) 古馬1600mG1におけるディープインパクト産駒の活躍
馬名生年母の父年度レース着順馬場人気単オッズ馬体重増減
リアルインパクト2008Meadowlake2011安田記念1929.3494-2
ドナウブルー2008Bertolini2012ヴィクトリアM2714.043212
2012マイルChp.3511.14342
マルセリーナ2008Marju2012ヴィクトリアM336.84482
ダノンシャーク2008Caerleon2013安田記念31237.24520
2013マイルChp.313.84448
2014マイルChp.1818.14442
トーセンラー2008Lycius2013マイルChp.124.74604
ヴァンセンヌ2009ニホンピロウィナー2011安田記念236.6502-6
ヴィルシーナ2009Machiavellian2013ヴィクトリアM113.1450-6
2014ヴィクトリアM11128.3456-4
フィエロ2009デインヒルUSA2014マイルChp.235.6508-2
2015マイルChp.225.15060
2016安田記念3629.5500-8
ショウナンパンドラ2011フレンチデピュティUSA2016ヴィクトリアM324.4446-10
ミッキーアイル2011ロックオブジブラルタルIRE2016マイルChp.135.9484-2
サトノアラジン2011Storm Cat2017安田記念1712.45284
ミッキークイーン2012Gold Away2016ヴィクトリアM213.44320
ジュールポレール2013エリシオFR2017ヴィクトリアM3717.5452-2
2018ヴィクトリアM1819.4460-6
レッドアヴァンセ2013ダンシングブレーヴUSA2018ヴィクトリアM3712.14484
サングレーザー2014Deputy Minister2017マイルChp.3715.04826
アルアイン2014Essence of Dubai2018マイルChp.346.65208
プリモシーン2015Fastnet Rock2019ヴィクトリアM246.44980

表2) ディープインパクト産駒の芝古馬GT距離別成績
距離1着2着3着着外勝率連対率3着内率
S 1200m022160.0000.1000.200
M 1600m8610870.0720.1260.216
 I 2000m273420.0370.1670.222
L 2200〜2500m8610720.0830.1460.250
E 3200m121130.0590.1760.235
2011年安田記念から2019年エリザベス女王杯まで

 その0秒1だけ前にいて3着となったのが○アルアイン。こちらはそこそこの穴人気となりそうだが、G1・2勝目の壁を破ったディープインパクト牡駒ということではエイシンヒカリ、リアルインパクト、ミッキーアイル、サトノダイヤモンド、トーセンスターダム、サクソンウォリアー、フィアースインパクトに続く存在となった。母はブリーダーズCフィリー&メアスプリント-G1など米重賞に4勝しており、休眠牝系から突如現れた一流馬。その父エッセンスオブドバイの唯一のG1勝ち産駒でもある貴重な存在で、グレイトアバヴやヒズマジェスティといった異系の血が入っている点も奥の深さを感じさせる。

 ▲ダノンキングリーはディープインパクト×ストームキャットの組み合わせ。これは香港カップ-G1のエイシンヒカリ、東京優駿-G1のキズナ、ドバイターフ-G1のリアルスティール、安田記念-G1のサトノアラジン、優駿牝馬-G1のラヴズオンリーユー、エリザベス女王杯-G1のラキシス、桜花賞-G1のアユサンと同じ当代最高ともいえるニックス。母は米でダート5.5Fの牝馬限定未勝利に1勝を挙げただけだが、産駒ダノンレジェンドUSAはJBCスプリントなど短距離のダートグレード競走に9勝を挙げた名スプリンター。祖母のカレシングはBCジュヴェナイルフィリーズ-G1など米重賞3勝を挙げていて、産駒ウエストコーストはトラヴァーズS-G1など米G12勝の名馬。活気ある牝系に大物続出の配合を重ねた正統派の良血。

 △ダノンプレミアムは5代母クリスタルパレスに遡る1960年代から1980年代にかけての名門牝系にデインヒルUSAやクラフティプロスペクター、レッドランサムといった現代的な血を重ねた。同じ誕生日の最優秀2歳牝馬は先週1年11カ月ぶりのG1勝ちを果たした。こちらもそれに続きたいところ。


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