2019ホープフルS


希望に満ちた心の叫び

 1着アグネスタキオン、2着ジャングルポケット、3着クロフネで決着し、4着がそこから5馬身離された2000年のラジオたんぱ杯3歳Sの内容は、その時点でも、その後のそれら3頭の活躍を見ても素晴らしいもので、それまでも毎年ハイレベルだったこのレースの前身にプレミアをつけた。そして何年かがたち、名前をホープフルSと替えてコースも替え、格付けもG3からG2に、そして一昨年からは遂にG1となった。出走馬が出世するレースなのか、レース自体が出世しているのかよく分からないが、両方の意味で出世レースということはできる。ただし、実際にこれまでのところ、コース替わりとG2格上げ以降の出走馬はレイデオロとサートゥルナーリアの名前があるために何とか水準を保っていると見るのが妥当なところで、レースを重ねていないものが多い2歳戦の格付けの点での評価の難しさを示している。
 阪神で行われていたころを含めて過去10年、単勝1倍台の1番人気馬は下表の通り2015年ロードクエストが2着となった以外はヴィクトワールピサ、エピファネイア、レイデオロ、サートゥルナーリアとすべて勝っている。クロフネUSAでも負けた「3歳S」当時と違って圧倒的1番人気馬の信頼度が格段に上がっており、これは近年の素質馬が潰し合いを避けてレースを選択することも影響しているだろう。このように番狂わせの起きにくい状況ではあっても、今年後半のハーツクライ産駒の勢いには逆転の期待をかけるに十分なものがあると思う。6月に宝塚記念-G1を勝ったリスグラシューは10月にはオーストラリアへ遠征してコックスプレート-G1を制覇。11月にはスワーヴリチャードがジャパンカップ-G1を制し、12月には朝日杯フューチュリティS-G1をサリオスが圧勝、翌週にはリスグラシューが有馬記念-G1で圧倒的なパフォーマンスを示した。一方、大阪杯-G1、桜花賞-G1、天皇賞(春)-G1、優駿牝馬-G1、東京優駿-G1と春に大活躍したディープインパクト産駒の下半期のG1勝ちは菊花賞-G1のワールドプレミアのみ。流れはハーツクライにありということで◎ワーケアの逆転に期待した。母のチェリーコレクトIREは3歳春にイタリアでレジナエレナ賞-G2(伊1000ギニー)と伊オークス-G2に連勝した活躍馬。その父オラトリオはデインヒルUSA直仔で、2歳時にジャンリュックラガルデール賞-G1、3歳夏にエクリプスS-G1、秋に愛チャンピオンS-G1とG1・3勝の名馬で、その母の父がヴェイグリーノーブルだから、血統的影響は自身の競走成績よりステイヤー色が濃くなりそうだ。祖母はエルナンドFR×カーリアンというニジンスキー系の仏ダービー馬同士の配合でニジンスキー3×3の近交馬。祖母の産駒シーオブクラスは愛オークス-G1、ヨークシャーオークス-G1に勝ち、凱旋門賞-G1で2着となった。母の血統の欧州色の濃さでは系統こそ違えリスグラシューに匹敵するものがあり、ステイヤーと見るのが妥当。その点では本格化はまだ先である可能性が高いが、リスグラシューも2歳時にはアルテミスS-G3に勝ち、阪神ジュベナイルフィリーズ-G1で2着となっていた。そのあたりは距離と素質でカバーできるだろう。


ホープフルSは本当に出世レースなのかどうなのか
場所
馬名
単オ
ッズ
その他の主な成績
2009阪神 1ヴィクトワールピサ11.6ネオユニヴァースドバイワールドCG1
2コスモファントム26.4Stphen Got Even中山金杯G3
3ダノンシャンティ727.8フジキセキNHKマイルCG1
2010阪神G31ダノンバラード46.9ディープインパクトアメリカJCCG2
2オールアズワン23.9ネオユニヴァース札幌2歳SG3
3コティリオン511.8ディープインパクト2着NHKマイルCG1
2011阪神G31アダムスピーク410.0ディープインパクト1000万下
2ゴールドシップ35.9ステイゴールド有馬記念G1
3グランデッツァ23.5アグネスタキオンスプリングSG2
2012阪神G31エピファネイア11.9シンボリクリスエスUSAジャパンカップG1
2バッドボーイ522.0マンハッタンカフェ3着毎日杯G3
3キズナ22.9ディープインパクト東京優駿G1
2013阪神G31ワンアンドオンリー713.7ハーツクライ東京優駿G1
2アズマシャトル822.7ゼンノロブロイ小倉記念G3
3サトノアラジン13.2ディープインパクト安田記念G1
2014中山G21シャイニングレイ24.5ディープインパクトCBC賞G3
2コメート830.5ブラックタイド 
3ブラックバゴ930.8バゴFR2着京成杯G3
2015中山G21ハートレー37.4ディープインパクト3着メトロポリタンS
2ロードクエスト11.9マツリダゴッホスワンSG2
3バティスティーニ23.4キングカメハメハ1000万下
2016中山G21レイデオロ11.5キングカメハメハ東京優駿G1
2マイネルスフェーン847.3ステイゴールド3着京成杯G3
3グローブシアター25.3キングカメハメハ1600万下
2017中山G11タイムフライヤー14.2ハーツクライ2着武蔵野SG3
2ジャンダルム46.2Kitten's Joyデイリー杯2歳SG2
3ステイフーリッシュ822.9ステイゴールド京都新聞杯G2
2018中山G11サートゥルナーリア11.8ロードカナロア皐月賞G1
2アドマイヤジャスタ26.2ジャスタウェィ2着すみれSL
3ニシノデイジー36.6ハービンジャーGB札幌2歳SG3
2012年まではラジオNIKKEI杯2歳S

 ○コントレイルは2014年の朝日杯フューチュリティS-G1勝ち馬ダノンプラチナ、今年のデイリー杯2歳S-G2勝ち馬レッドベルジュールと同じディープインパクト×アンブライドルズソングの組み合わせ。この母の父とサンデーサイレンスUSA系種牡馬の組み合わせではジャパンカップ-G1のスワーヴリチャードや菊花賞-G1のトーホウジャッカルがいる。アンブライドルズソングはブリーダーズCジュヴェナイル-G1に勝ち、3歳時もフロリダダービー-G1とウッドメモリアルS-G1を制してケンタッキーダービー-G1で1番人気となり5着に敗れた。ダービーまでの早熟な急上昇振りが種牡馬としての成功を示唆していたようで、種牡馬としても、母の父としても、種牡馬の父としても成功している。母ロードクロサイトUSAはJRAで7戦未勝利だが、祖母フォークロアは2歳9月にメイトロンS-G1を14馬身差で圧勝し、続く10月のブリーダーズCジュヴェナイルフィリーズ-G1も勝った天才少女。3歳緒戦のサンタイネスS-G2で故障して引退した。その父は名馬ティズナウ、3代母の父はストームキャットと米国を代表する異系血統と主流血統を重ねられている。

 ステイゴールド系はドリームジャーニー、オルフェーヴル、オーシャンブルー、ゴールドシップと4頭が種牡馬として暮れの中山に帰ってきた。ドリームジャーニーは朝日杯FS-G1と有馬記念-G1、オルフェーヴルは有馬記念-G1・2回、ゴールドシップは皐月賞-G1と有馬記念-G1、同3着2回、オーシャンブルーは10番人気の有馬記念-G1・2着がある。ドリームジャーニー産駒の▲ヴェルトライゼンデは兄ワールドプレミアが菊花賞-G1を制して先週の有馬記念-G1でも3着と母方の勢いもある。△オーソリティは母がエピファネイアの全妹で、リオンディーズ、サートゥルナーリアの半姉だから、この時期は大得意。ゴールドシップ産駒のブラックホール、オーシャンブルー産駒のクリノブレーヴも母系からミスタープロスペクターが入り、スピード対応力あり。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2019.12.28
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