2019阪神ジュベナイルフィリーズ


再びピークを迎えたハーツクライ

 ハーツクライ産駒がこれまで最も活躍したのは2014年で、ジャスタウェイがドバイターフ-G1と安田記念-G1、ワンアンドオンリーが東京優駿-G1、ヌーヴォレコルトが優駿牝馬-G1、アドマイヤラクティがコーフィールドカップ-G1を制して、これら5つのG1を含め合計13のグレード勝ちを果たした。昨年は米国でヨシダがターフクラシック-G1とウッドワードS-G1に勝ち、スワーヴリチャードが大阪杯-G1、リスグラシューがエリザベス女王杯-G1に勝ってG1は4勝。グレード勝ちは9に達した。その再上昇の勢いは今年に入っても続いていて、リスグラシューは宝塚記念-G1とコックスプレート-G1を制し、スワーヴリチャードはジャパンカップ-G1で復活した。これでグレード勝ちの数は9を数え既に昨年に並んだ。今年の大きな特徴は2歳の早いうちから活躍するものが増えたことで、現時点での2歳グレード3勝は自己新記録となる。下表に示したように、2歳重賞勝ち馬はその後クラシックで活躍するもの、海外で活躍するもの、伸び悩むものとさまざまだが、可能性としては2歳で活躍して更に大きく飛躍するハーツクライ産駒像は示されているわけだ。
 ◎ウーマンズハートはハーツクライ産駒最速の2歳8月に重賞勝ちを達成した。母のレディオブパーシャはドバイのプリンセス・ハヤの勝負服で走り、ダート1200mと芝1200mで合計2勝を挙げたが、2着と3着の多い馬で、24戦して2着5回、3着は8回あった。その半兄ラッキーナインはドバウィ産駒で香港スプリント-G1、シンガポールのクリスフライヤー国際スプリント-G1などG1・3勝を挙げた香港の名スプリンター。ストーミングホームGB産駒の半弟サドンストームは京王杯2歳S-G2、京阪杯-G3、シルクロードS-G3で2着となり、同じくティーハーフは函館スプリント-G3に勝った。このように母もおじたちも種牡馬は違えどみなスプリンターという実績を残していて、これは祖母ビールジャントGBの父グリーンデザートのダンチヒ系スプリンターとしての特徴が強く出ているのだろう。3代母ベルジーニアスは2歳時に愛国で7FのモイグレアスタッドS-G1でG1勝ちをしており、レイズアネイティヴ4×3の近交馬であるこちらからの影響もスピード強化に働くのは確かなところだろう。本馬の母の父シャマーダルはジャイアンツコーズウェイ直仔で2歳時にデューハーストS-G1、3歳時にはプールデッセデプーラン-G1(仏2000ギニー)、ジョッキークラブ賞-G1(仏ダービー)、セントジェームズパレスS-G1と4つのG1に勝った名馬。種牡馬としてもジョッキークラブ賞-G1のロペデヴェガ、エクリプスS-G1のムハドラムらを出してそこそこ成功しており、日本では先日の京阪杯-G3に勝ったライトオンキューが初めての重賞勝ち産駒となった。シャマーダル自身にはグローリアスソングとクドフォリという名牝を経由したヘイロー5×4の近交があり、これはヘイロー系を更に重ねることになるサンデーサイレンスUSA系との配合では瞬発力の面で好影響を及ぼしている可能性がある。ヘイローを別にしてもストームバード、ミスタープロスペクターとハーツクライとの相性の良さが明らかになっている血を持ち、ほぼ隙のない名血ばかりで構成されていることがプラスなのは間違いのないところだろう。そして、母系に潜んだグリーンデザートの役割も、ただスピードを伝えるだけにはとどまらないものがありそうだ。


例年以上の勢いを示す2歳ハーツクライ産駒
年度場所レース名距離馬名母の父人気単勝その後の主な成績
2012東京アルテミスS1600コレクターアイテムネットオークションUSAStorm Bird12.7鷹巣山特別(1000万)
2013阪神ラジオNIKKEI杯2歳S-G32000ワンアンドオンリーヴァーチュタイキシャトルUSA713.7東京優駿-G1
2014京都ラジオNIKKEI杯京都2歳S-G32000ベルラップベルスリーブシンボリクリスエスUSA619.5 
2015札幌札幌2歳S-G31800アドマイヤエイカンペルヴィアンリリーフレンチデピュティUSA25.72着ステイヤーズS-G2
2016東京アルテミスS-G31600リスグラシューリリサイドFRAmerican Post12.4コックスプレート-G1
2017京都ラジオNIKKEI杯京都2歳S-G32000グレイルプラチナチャリスGBロックオブジブラルタルIRE24.83着オールカマー
2017中山ホープフル-G12000タイムフライヤータイムトラベリングブライアンズタイムUSA14.22着武蔵野S-G3
2019新潟新潟2歳S-G31600ウーマンズハートレディオブパーシャShamardal12.1 
2019東京サウジアラビア-G31600サリオスサロミナGERLomitas11.5 
2019京都ラジオNIKKEI杯京都2歳S-G32000マイラプソディテディーズプロミスUSASalt Lake11.5 

 同じ父の○クラヴァシュドールは母の父がジャイアンツコーズウェイなのでウーマンズハートに似た構成になっている。こちらの母はストームバード3×4の近交馬で、ミスタープロスペクターの血も祖母の父サンダーガルチUSA経由で入った。ストームバードの近交に加えて5代母の父としてニジンスキーが入る点も、カナダの大オーナーブリーダー・E.P.テイラー生産のノーザンダンサー同士を集めているという点で整った配合と見ることができる。3代母ドリナの娘にはブリーダーズCディスタフ-G1とラブレアS-G1のG1を含め米グレード7勝の名牝スペインがいる。スペインは祖母パスオブサンダーの全姉でサンダーガルチUSAの牝馬の代表産駒だ。

 ハーツクライの好調さと裏表のように、今年のロードカナロア産駒はまだ重賞勝ちがない。昨年は新潟2歳S-G3をケイデンスコール、小倉2歳S-G3と京王杯2歳S-G2をファンタジスト、そしてホープフルS-G1をサートゥルナーリアが勝っていたのに比べると不振といわざるをえない。種付け頭数がずっと250頭以上で推移している以上、よくいわれる種牡馬入り3年目の落ち込みは当たらない。ちょっとした出遅れでしかない可能性もある。▲ボンボヤージは京阪杯-G3で死んでしまったファンタジストの全妹。兄同様、ロードカナロア、ディープインパクト、デインヒルUSAという配合種牡馬の並びは最先端といえるもの。母の父としてのディープインパクトはキングカメハメハ系ルーラーシップとの間に菊花賞馬キセキを送っている。3代母ディアーミミUSAの産駒にはラカナダS-G2、エルエンシノS-G2など米G2・2勝のフリートレイディ、孫にはブリーダーズCジュヴェナイル-G1のミッドシップマン、曾孫にはメトロポリタンH-G1のフロステッドがいる。4代母カーニヴァルプリンセスの産駒サルスはフォレ賞-G1に勝ち、種牡馬としても成功した。何よりも、血統表3代目に上から順にキングマンボ、ストームキャット、サンデーサイレンスUSA、デインヒルUSAと米日欧豪の大種牡馬が並んでいるスケールの大きさが魅力。

 △リアアメリアは今回唯一のディープインパクト直仔。キズナ産駒が3頭、ワールドエース産駒が3頭と数の上では孫世代が優勢になっていて、牝馬戦らしい時代の先取り感が強いが、何頭出ていようと勝つのは1頭ということもいえる。母の父がアンブライドルズソング直仔である点が先進性。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2019.12.8
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