2019フェブラリーS


成功をもたらす匙加減

 10年前のこのレースは1着サクセスブロッケンの祖母の父がデピュティミニスター、2着カジノドライヴUSAの母の父がデピュティミニスター、3着カネヒキリの母の父がデピュティミニスターだった。フレンチデピュティUSA経由以外は日本でそれほど活躍しているわけでもないデピュティミニスターの血を受けた馬が不思議に上位に集中した。そして、その年4着のエスポワールシチーによりフェブラリーS-G1デビューを果たしたゴールドアリュール産駒は以降4勝2着3回の好成績を収めて現在に至る。このようにこのレースはほかのG1以上に血統的傾向の偏りが強そうなので、過去10年3着以内となった馬について、4代血統表をほぐして種牡馬ごとの延べ出現回数を下表に示した。同じ馬が2度3着以内に入っていれば2回、3度なら3回数えるということになる。雑なやり方ではあるが、これにより、フェブラリーS-G1の重要血統が抽出されたことになる。次にこのリストにある馬名を出走馬の4代血統表上に探し、該当したものを数えていく。父の代でも4代目でも1回出現すれば同じ1点だが、たとえばゴールドアリュールが父なら、祖父サンデーサイレンスUSA、曽祖父ヘイロー、高祖父ヘイルトゥリーズンとその父系ごと加点されて影響力の強さは反映される。また、ゴールドアリュールの場合は血統表中にあるアンダースタンディング、ヌレエフ、ノーザンダンサー、ホスティジとそれだけで8点を得てしまうことになるが、その産駒の好成績を考えれば問題はない。かくして、簡易式即席ドサージュ法により出走馬を評価することが可能になった。


フェブラリーS過去10年の重要血統
順位種牡馬産地生年出現数
1Mr. ProspectorUSA197024
2Hail to ReasonUSA195818
3HaloUSA196916
3Northern DancerCAN196116
5サンデーサイレンスUSAUSA198614
6Raise a NativeUSA196112
6UnderstandingUSA196312
8NureyevUSA197711
9Deputy MinisterCAN19799
9Seattle SlewUSA19749
11RobertoUSA19698
12A.P. IndyUSA19897
12ゴールドアリュールJPN19997
12HostageUSA19797
12Vice RegentCAN19677
16Pleasant ColonyUSA19786
17NijinskyCAN19675
17SecretariatUSA19705
19ブライアンズタイムUSAUSA19854
19DanzigUSA19774
19FappianoUSA19774
19フォーティナイナーUSAUSA19854
19GraustarkUSA19634
19His MajestyUSA19684
19Never BendUSA19604
19Stage Door JohnnyUSA19654
19Storm BirdCAN19784
28Bold ReasoningUSA19683
28DroneUSA19663
28Hold Your PeaceUSA19693
28カンパラGBGB19763
28NashuaUSA19523
28Seeking the GoldUSA19853
28トニービンIREIRE19833
28UnbridledUSA19873
28What a PleasureUSA19653
過去10年3着以内となった馬の4代血統表にある種牡馬の延べ出現回数

 点数の上位を列記すると以下のようになる。

12点ゴールドドリーム
11点サンライズノヴァ
10点サクセスエナジー
8点コパノキッキング
7点オメガパフューム
7点ノボバカラ
7点ワンダーリーデル

 これらが近10年のフェブラリーSのトレンドに沿った血統を備えているということになる。上位2頭はゴールドアリュール産駒であり、特にゴールドドリームは自身の2度の連対で加点している。それを踏まえると、期せずして高得点となった◎サクセスエナジーの評価はいくらか割り増しして考える必要がある。3代目に並ぶ種牡馬はサンデーサイレンスUSA、プレズントコロニー、トニービンIRE、デピュティミニスターと全馬が重要血統リスト上にあり、4代目もヘイロー、ヒズマジェスティ、カンパラGB、ヌレエフ、ヴァイスリージェント、プレズントコロニーと過半数が該当する。簡易式即席ドサージュ法的には価値の高い血統構成といえる。リスト筆頭のミスタープロスペクターの血を持たない点がスピード面の弱みとなる可能性はあるが、そこはプレズントコロニー3×4やトニービンIRE、ヌレエフといった大レース向きの血を持つことで相殺できる。そして、もうひとつの大きなセールスポイントは牝系にあり、祖母アワーミスレッグスUSAの産駒サクセスビューティはフィリーズレビューに勝ち、その産駒、つまり本馬のイトコにあたるサクセスブロッケンはジャパンダートダービーと冒頭に記したように2009年のこのレース、東京大賞典に勝った。キンシャサノキセキAUS産駒からは佐賀記念のヒラボクラターシュが本馬に続く2頭目のダート重賞勝ち馬となっており、父系の勢いもある。

 ○ゴールドドリームは秋の2戦いずれも3歳勢(当時)に敗れたが、東京大賞典-G1は3歳12月1600〜2200mのエージアローワンス(2kg)よりも3歳に有利な設定の57kg対55kgの戦いであったぶんの負けということができる。ゴールドアリュール産駒らしい勝負に行っての淡泊な面があるにもかかわらず、1年間パーフェクト連対を続けているのは地力の高さがあればこそ。簡易式即席ドサージュ法的にはゴールドアリュール産駒である点以外にも、母の父がデピュティミニスター直仔、3代母の父がミスタープロスペクターであることが強みとなる。そして、それ以上に4代母ナンバー(ニジンスキー×スペシャル)が父の母の父ヌレエフ(ノーザンダンサー×スペシャル)の半妹という4分の3同血の扱いが美しい。

 同じ父の産駒▲サンライズノヴァは米2冠の母の父サンダーガルチUSAを通じてミスタープロスペクター、ストームバード、祖母の父リアルシャダイ経由でロベルトと重要血統が母からも3本入る。同じヤナガワ牧場生まれで同じオーナー、同じ厩舎、同じ午年の2007年フェブラリーS勝ち馬サンライズバッカスは本馬の祖母でフラワーCに勝ったリアルサファイヤの産駒。要するに叔父ですな。3代母ワールドサファイヤの曾孫に日本テレビ盃などダート重賞5勝、JBCクラシックでも2着となったマコトスパルビエロがおり、5代母クニノボリの子孫にはスプリングSのメジロフレーム、京都大賞典のメジロカーラなどがいる。1925年生まれの米国産馬ダイシングUSAに遡る牝系。ちなみに今回の出走馬で戦前輸入の牝系出身は本馬のほか1924年生まれの豪州産馬ファッションメードAUSに遡るメイショウウタゲ、1903年生まれの英国産馬ビューチフルドリーマーGBに遡るワンダーリーデルの3頭だけ。

 △コパノキッキングUSAは母が日本血統の米国産馬。日本へは里帰りとも逆輸入ともいえる血統で、結果、デピュティミニスター系×サンデーサイレンスUSA系のこのレースにふさわしい配合となった。母は本馬を産んだあとインドへ渡っているので、本馬がフロリダのセリでコパさんの目に留まって日本に渡ったのはそれだけで奇跡的なことなのかもしれない。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2019.2.17
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