2019東京優駿


王者は引き下がらない

 優駿牝馬終了時点での現3歳2016年生世代の種牡馬別の収得賞金は首位のディープインパクトが19億7869万円で2位ロードカナロアが12億5854万円(2歳時からの累計、JBISサーチによる)。3位ダイワメジャーは9億418万円だから、新鋭ロードカナロアがよくディープインパクトに食らいついていっているようにも見えるし、まだまだディープインパクトの牙城は強固とも見える。皐月賞-G1はロードカナロア産駒のサートゥルナーリアが勝ち、2着がジャスタウェイ産駒のヴェロックス、3着がディープインパクト産駒のダノンキングリーであとは離れた。種牡馬の新しい勢力図の予兆ともいえる結果だったが、牝馬2冠制覇を含め依然として世代トップにあることから考えて、このレースでは直近7年のうちワグネリアン、マカヒキ、キズナ、ディープブリランテの4回勝っているディープインパクトが押し返す番だ。◎ダノンキングリーはJBCスプリントなどダート短距離で重賞9勝を挙げた名馬ダノンレジェンドの半弟。母マイグッドネスUSAは米1勝ながらストームキャットの娘で、ディープインパクト×ストームキャットのこの配合が一気にG1クラスに上り詰める力は先週実例を見せつけられたばかり。キズナが実際にこのレースに勝っただけでなく、ジョッキークラブ賞-G1(仏ダービー)のスタディオブマンやエイシンヒカリなど欧州G1勝ちを果たしている点はディープインパクト産駒の中でも特別といえるだろう。母は米国で6戦1勝だが、ストームキャット直仔にはテイルオブザキャットのようにG1勝ちがなくても種牡馬として大成功するものが少なくないように、競走成績以上の繁殖成績を残す点は牡牝に共通しているともいえ、実際、下表に示したように、この配合の成功例は平均的な牝馬から現れている場合が多い。祖母のカレシングはブリーダーズCジュヴェナイルフィリーズ-G1などに勝った米2歳牝馬チャンピオンで、産駒にはトラヴァーズS-G1勝ち馬ウエストコーストがいる。3代母ラヴィンタッチもブラックアイドスーザンS-G2の2着がある活躍馬。このラヴィンタッチはマイホストとユアホステスの1歳違いの全兄妹3×3、ナスルーラ≒ロイヤルチャージャーの近交など米国馬らしからぬ技巧的配合が仕掛けられていて、それが異色父系マッチョウノとの配合で効果を上げたのがダノンレジェンドであり、一転、日本の主流中の主流との配合でどのような結果につながるかも注目しておきたいところ。


ディープインパクトの成功配合
馬名生年母成績本馬の主な勝ち鞍
ディープインパクト×Storm Cat牝馬
アユサン2010バイザキャットUSA米1勝桜花賞G1
キズナ2010キャットクイルCAN英未勝東京優駿G1、大阪杯G2、ニエル賞G2、京都新聞杯G2、毎日杯G3
ヒラボクディープ2010キャットアリUSA米1勝青葉賞G2
ラキシス2010マジックストームUSA米G2エリザベス女王杯G1、大阪杯G2
エイシンヒカリ2011キャタリナUSA米3勝香港カップG1、イスパーン賞G1、毎日王冠G2、エプソムカップG3
サトノアラジン2011マジックストームUSA米G2安田記念G1、スワンSG2、京王杯スプリングCG2
リアルスティール2012ラヴズオンリーミーUSA不出走ドバイターフG1、毎日王冠G2、共同通信杯G3
Study of Man2015セカンドハピネスUSA仏未勝ジョッキークラブ賞G1、グレフュール賞G2
ダノンキングリー2016マイグッドネスUSA米1勝共同通信杯G3
ラヴズオンリーユー2016ラヴズオンリーミーUSA不出走優駿牝馬G1
ディープインパクト×フレンチデピュティ牝馬
ボレアス2008クロウキャニオン日1勝レパードSG3
ウリウリ2010ウィキウィキ日1勝CBC賞G3、京都牝馬SG3
カミノタサハラ2010クロウキャニオン日1勝弥生賞G2
ショウナンパンドラ2011キューティゴールド日未勝ジャパンカップG1、秋華賞G1、オールカマーG2
マカヒキ2013ウィキウィキ日1勝東京優駿G1、弥生賞G2
アンジュデジール2014ティックルピンク日1勝JBCレディスクラシック
カデナ2014フレンチリヴィエラUSA米G3弥生賞G2、京都2歳SG3
メイショウテンゲン2016メイショウベルーガ日G2弥生賞G2

 ○サートゥルナーリアは菊花賞-G1とジャパンC-G1のエピファネイアの半弟で、朝日杯フューチュリティS-G1のリオンディーズの4分の3弟。母のシーザリオはアメリカンオークス-G1を制して日本調教馬として初の米国G1勝ちを果たしたが、その前には優駿牝馬に勝ち桜花賞で2着となっていた。桜花賞の2着はブエナビスタにもときどき見られたスペシャルウィーク的取りこぼしといえるもので、そのように強いのになぜか負けるときがある傾向はエピファネイアなどにも見られたものだ。ただ、そう思って見るからそう見えるだけなのかもしれない。本馬がそのようなスペシャルウィークのとぼけた面をそぎ落としているならば、この先も無敗を続けるだろう。ただ、皐月賞-G1が思わぬ僅差となった点は、久々とかそういったことではなくて、この血統に秘められた部分が顔をのぞかせたのであれば、何かに足元をすくわれるかもしれない。

 ▲クラージュゲリエは父キングカメハメハが日本ダービー馬で日本ダービー馬の父、母の父タニノギムレットも日本ダービー馬で日本ダービー馬の父、祖母の父サンデーサイレンスUSAはタヤスツヨシからディープインパクトまで6頭の日本ダービー馬を送り出した。半兄プロフェットは京成杯-G3勝ち馬で、祖母は名牝トゥザヴィクトリーの全妹と牝系も筋が通っている。大レースでの隠し味として近年特に存在感を増しているヌレエフも4×4で備えている。ここまでに示したレース振りから察する以上に東京向きかもしれない血統。

 もう一頭のキングカメハメハ直仔△ランフォザローゼスも母の父ディープインパクトが日本ダービー馬にして日本ダービー馬の父、祖母は天皇賞(秋)、優駿牝馬に勝った名牝エアグルーヴで、その父トニービンはウイニングチケットとジャングルポケットの2頭の日本ダービー馬を送った。祖母ダイナカールも優駿牝馬に勝った名牝で、本馬の血統表を見れば昭和から平成にかけての名牝史、名種牡馬史を一瞥しただけで理解できる。2015年の勝ち馬ドゥラメンテとは父が同じイトコ同士で、母の父がサンデーサイレンスUSAからディープインパクトに代わっている部分だけがより現代的な要素。

 ディープインパクト×ストームキャットに次いで優れたニックスがディープインパクト×フレンチデピュティ。メイショウテンゲンは母メイショウベルーガが牡馬相手に京都大賞典-G2と日経新春杯-G2に勝った。祖母はサドラーズウェルズの娘で仏G3・2着馬。4代母の孫には凱旋門賞馬ダンシングブレーヴがいる。重馬場の弥生賞-G2勝ちはデピュティミニスターとサドラーズウェルズの相乗効果といえるが、天候の急変があれば再度の大駆けもあるかもしれない。ロジユニヴァースを思い出そう。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2019.5.26
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