2018安田記念


ディープ血統の新展開

 安田記念-G1がスタートする15時間ほど前には英ダービー-G1に日本産馬として初めて、しかも本命としてディープインパクト産駒のサクソンウォリアーが出走する。とはいっても日本のクラシックのクライマックスは過ぎたのでG1を種牡馬単位で振り返ってみると(下表)、ディープインパクトの分厚い業績はさすがというほかない。次にハーツクライが続いて大御所が上位を固め、そしてロードカナロアとオルフェーヴルの新鋭、更には異色のトーセンファントムが並ぶリストはなかなか健康的で発展性も感じさせるものになっている。今回もそれを反映してディープインパクト3頭対ハーツクライ2頭の戦いと見ていい。過去のこのレースでディープインパクト産駒はリアルインパクトとサトノアラジンが勝って通算(2.1.2.24)。対してハーツクライはジャスタウェイの1戦1勝となる。今年の日本での産駒のG1・3勝がすべて東京、うち2つが1600mだから、傾向としては明らかにディープインパクトの方に分がある。
 ディープインパクト産駒、特に牡馬はG1適時期とでもいえばいいのか、急速に上昇してG1勝ちまで突っ走るタイミングがあり、それを逃さず捉えるのが肝要。◎サングレーザーは母の父がデピュティミニスター。これまでディープインパクトはフレンチデピュティUSA牝馬との間にマカヒキ、ショウナンパンドラのG1勝ち馬を出しているので、フレンチデピュティUSAの父である米国の大物デピュティミニスターとの相性が悪いわけはないと考えられる。母の父としてのデピュティミニスターはこれまで日本でカネヒキリとサクセスブロッケンを出していて、G1勝ち馬以外ではカジノドライヴもいる。ディーゼルエンジン的な力の血統なのでどうしても適性はダートに向かうわけだが、ハービンジャー産駒に活躍の場が広がってきた昨今の馬場事情に鑑みれば、ディープインパクト産駒といえども、瞬発力だけでなく馬力で押す要素も必要となってくるだろう。そこで、フレンチデピュティUSAよりも遅れてデピュティミニスターの成功の目も出てくる。祖母のウィッチフルシンキングはG1にこそ届かなかったが、パッカーアップS-G2など8〜9Fの芝重賞に4勝した活躍馬。産駒メーデイアはJBCレディスクラシックなど6つのダートグレード競走に勝ち、ロフティーエイムは福島牝馬Sに勝った。ワグネリアンの祖母が根岸Sなどダート重賞5勝のブロードアピールUSA、ケイアイノーテックの母ケイアイガーベラはプロキオンS-G3とカペラS-G3など全9勝をダートで挙げていたことなどを考えると、今年のディープインパクト産駒のテーマはダート血統との融合という点にあるのかもしれない。


本年5月末までの種牡馬別GT成績
種牡馬名1着2着3着着外主な成績
ディープインパクト43436東京優駿(ワグネリアン)、NHKマイルC(ケイアイノー
テック)、ヴィクトリアマイル(ジュールポレール)、2000
ギニー
(サクソンウォリアー)、2着:ドバイターフ(ヴィブロ
ス)、2着:NHKマイルC(ギベオン)、2着:フューチュリティ
S(トーセンスターダム)、3着:ドバイターフ(リアルスティ
ール)、3着:大阪杯(アルアイン)、3着:ヴィクトリアマイル
(レッドアヴァンセ)、3着:ドゥームベンC(アンビシャス)
ハーツクライ22013大阪杯(スワーヴリチャード)、ターフクラシックS(ヨシ
ダ)、2着:天皇賞(春)(シュヴァルグラン)、2着:ヴィクトリ
アマイル(リスグラシュー)
ロードカナロア2005優駿牝馬(アーモンドアイ)、桜花賞(アーモンドアイ)
オルフェーヴル1211皐月賞(エポカドーロ)、2着:東京優駿(エポカドーロ)、
2着:桜花賞(ラッキーライラック)、3着:優駿牝馬(ラッキ
ーライラック)
トーセンファントム1113フューチュリティS(ブレイブスマッシュ)、2着:ニューマー
ケットH(ブレイブスマッシュ)、3着:C.F.オーS(ブレイブ
スマッシュ)
トワイニングUSA1000フェブラリーS(ノンコノユメ)
アドマイヤムーン1002高松宮記念(ファインニードル)
ステイゴールド1007天皇賞(春)(レインボーライン)
ルーラーシップ02172着:皐月賞(サンリヴァル)、2着:優駿牝馬(リリーノーブ
ル)、3着:桜花賞(リリーノーブル)
キングカメハメハ01292着:高松宮記念(レッツゴードンキ)、3着:東京優駿(コズ
ミックフォース)、3着:NHKマイルC(レッドヴェイロン)
ハービンジャーGB01142着:大阪杯(ペルシアンナイト)、3着:ドバイターフ(ディア
ドラ)
ゴールドアリュール01032着:フェブラリーS(ゴールドドリーム)
ディープスカイ00103着:天皇賞(春)(クリンチャー)
シニスターミニスターUSA00113着:フェブラリーS(インカンテーション)
スクリーンヒーロー00133着:皐月賞(ジェネラーレウーノ)
ダイワメジャー00153着:高松宮記念(ナックビーナス)
※日本での産駒の海外成績を含む

 対するハーツクライ産駒の○スワーヴリチャードも母ピラミマUSAは完全な米国血統。母の父は初年度産駒のソングアンドプレイヤーから昨年のドバイワールドC-G1勝ち馬アロゲイトまで多くの名馬名牝を送り出してきたアンブライドルズソング。祖母キャリアコレクションはソレントS-G2に勝ちBCジュヴェナイルフィリーズ-G1で2着となった活躍馬で、その父はシアトルスルー直仔のジェネラルミーティング。ミスタープロスペクター系×シアトルスルー系という成功パターンを踏襲している。ミスタープロスペクター系牝馬と父の組み合わせからは米G1勝ちのヨシダとジャパンC-G1のシュヴァルグランが出ていて、今どきミスタープロスペクター系という捉え方はざっくりし過ぎている気もするが、これはこれで成長の余地という点で大きな可能性のある配合。

 タイキシャトルUSAが勝った雨中の不良馬場のこのレースで2着に粘ったのが香港のオリエンタルエクスプレスIREだった。同じヨン氏の持ち馬として来日した▲ウエスタンエクスプレスAUSは20年ぶりの香港発特急となるわけだが、父系曽祖父がともにノーザンダンサーという以外は、何の血統的な縁もない。グリーンデザート直仔の欧州血統だったオリエンタルエクスプレスIREに対して、こちらは豪チャンピオンサイアー2回のエンコスタデラゴ産駒で母の父がサートリストラム系というオーストラリア血統だ。半兄ホワイトフライアーズは豪G2勝ち馬で、3代母の孫にAJCダービーやザBMWに勝った名馬ドクターグレイス、ほかにもサウスオーストラリアンオークス-G1のエイジア、イースターH-G1のカルヴィーンらのG1勝ち馬がいる活気のあるファミリー。エンコスタデラゴ産駒というと思い出されるのは来日を2度計画して果たせなかった香港の名スプリンター・セイクリッドキングダム。こちらは密かに10年ぶりの悲願ということになるのかもしれない。

 ブラストワンピースが日本ダービー-G1に勝てなかったので、△ペルシアンナイトは今のところハービンジャーGB産駒として牡馬唯一のG1勝ち馬という希少な地位を守っている。マーメイドS3着、秋華賞4着の母オリエントチャームがゴールドアリュールの全妹で、サンデーサイレンスUSA×ヌレエフという配合だからマイル対応の瞬発力にも不足がない。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2018.6.3
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