2018ヴィクトリアマイル


世界に響く心の叫び

 ケイアイノーテックがNHKマイルC-G1に勝つ約16時間前にはイギリスで同じディープインパクト産駒のサクソンウォリアーが英2000ギニー-G1に勝ち、史上初の日本生まれの英国クラシック馬となった。5月8日には仏ダービー-G1の前哨戦であるグレフュール賞-G2をアイルランド生まれのディープインパクト産駒スタディオブマンが快勝しており、これによってディープインパクト産駒が同一年に日・英・仏の3カ国の“ダービー”を制する可能性が出てきた。また、米国チャーチルダウンズ競馬場ではケンタッキーダービー-G1のひとつ前のレース、オールドフォレスターターフクラシックS-G1で日本生まれのハーツクライ産駒ヨシダが4番手から抜け出してG1初制覇を果たしている。これでディープインパクトの国外でのG1勝ち産駒は8頭、ハーツクライは3頭となった。サンデーサイレンスUSAの競走馬としてのデビューから今年で30年となるが、その間に日本の競馬は当時から想像もできないほどに力をつけたことになる。今年5月初めの時点でのサイアーランキングは、ディープインパクトの首位はいつもの年と同じだが、キングカメハメハの定位置だった2位にはハーツクライが食い込んできている。下表の通り、4歳世代スワーヴリチャードが大阪杯に勝ったほか、シュヴァルグランも健在なので、この順位を最後まで守る可能性はあるし、ヨシダも加えた2014年生まれの現4歳世代は、これまでのハーツクライ産駒群の中でも豊作といえることが分かる。
 スタディオブマンはニアルコス家の生産所有馬で、祖母は同家を代表するブリーダーズCマイル-G1連覇などG110勝の名牝ミエスク。◎メイズオブオナーはそのミエスクの曾孫にあたる。母のキャサリンオブアラゴンIREはクールモアグループの所有馬で不出走。本馬が2番仔となる。祖母のモネヴァッシアは産駒に2歳でモイグレアスタッドS-G1、マルセルブサック賞-G1に勝ったランプルスティルツキンを生み、孫にヨークシャーオークス-G1のタペストリー、ドバイターフ-G1のリアルスティールが出た。3代母ミエスクは競走馬として優秀だっただけでなく、産駒キングマンボはムーランドロンシャン賞-G1などマイルG1に3勝、同じくイーストオブザムーンは仏2冠牝馬となり、曾孫で日本生まれのカラコンティーはブリーダーズCマイル-G1など仏米で3つのG1に勝った。母の父ホーリーローマンエンペラーはデインヒルUSA直仔で、2歳時にフィーニクスS-G1、ジャンリュックラガルデール-G1賞に勝った。母にダンチヒの血が入るのはヌーヴォレコルトと同じで、ヌレエフが入るのはヌーヴォレコルト、シュヴァルグランと同じ。欧州風の字面ながら、実質的にはハーツクライと相性の良い米国血統で構成された母ということができ、東京の1600mに適したバランスのスピードと瞬発力と底力を秘めていることが窺える。


ハーツクライ産駒のG1入着歴
馬名生年母の父G1勝ちと入着(3着まで)
アドマイヤラクティ2008エリシオFRコーフィールドC-G1
ウインバリアシオン2008Storm Bird天皇賞(春)-G1・2着、有馬記念-G1・2着、東京優駿
-G1・2着、菊花賞-G1・2着、天皇賞(春)-G1・3着
カレンミロティックセン2008A.P. Indy天皇賞(春)-G1・2着、宝塚記念-G1・2着、天皇賞(春)
-G1・3着
キョウワジャンヌ2008Seeking the Gold秋華賞-G1・2着
ジャスタウェイ2009Wild Againドバイデューティフリー-G1、天皇賞(秋)-G1、安
田記念-G1
、ジャパンC-G1・2着
フェイムゲーム2010アレミロードUSA天皇賞(春)-G1・2着
レッドセシリア2010Selkirk阪神ジュベナイルフィリーズ-G1・3着
ヌーヴォレコルト2011スピニングワールドUSA優駿牝馬-G1、エリザベス女王杯-G1・2着×2、秋華
賞-G1・2着、桜花賞-G1・3着
ワンアンドオンリー2011タイキシャトルUSA東京優駿-G1
シュヴァルグラン2012MachiavellianジャパンC-G1、天皇賞(春)-G1・2着×2、ジャパン
C-G1・3着、有馬記念-G1・3着、天皇賞(春)-G1・3着
Yoshida2014Canadian Frontierターフクラシック-G1
アドマイヤミヤビ2014クロフネUSA優駿牝馬-G1・3着
スワーヴリチャード2014Unbridled's Song大阪杯-G1、東京優駿-G1・2着
リスグラシュー2014American Post桜花賞-G1・2着、秋華賞-G1・2着、阪神ジュベナイル
フィリーズ-G1・2着
タイムフライヤー2015ブライアンズタイムUSAホープフル-G1

 ○リスグラシューは2着の数が1着を上回っている点でハーツクライ産駒らしいとはいえる。母のリリサイドFRはフランスで3歳時に1500mのラカリフォルニア賞、1600mのラカマルゴ賞とラコシェール賞の3つのリステッドレースに勝ったマイラー。その父アメリカンポストは2歳時にジャンリュックラガルデール賞-G1とレーシングポストトロフィー-G1に勝ち、3歳でプールデッセデプーラン-G1(仏2000ギニー)に勝った。種牡馬としてはG1勝ち産駒はクリテリウムドサンクルー-G1のロビンオブナヴァン1頭だけで、母の父としてもリスグラシューが代表馬。これがベーリング×サドラーズウェルズという配合だけに、スピードと切れの面でいくらか不安を生じさせる元となる。

 エリモピクシーの産駒は先週のNHKマイルC-G1でレッドヴェイロンが9番人気ながら3着に入った。父アグネスタキオンのリディルはデイリー杯2歳SとスワンS-G2に勝ち、父ダンスインザダークのクラレントはデイリー杯2歳S-G2のほか、富士S-G3、東京新聞杯-G3、京成杯オータムH-G3、関屋記念-G3、エプソムC-G3に勝ち、安田記念-G1とNHKマイルC-G1で3着。父アグネスタキオンのレッドアリオンはマイラーズC-G2と関屋記念-G3に勝ち、父ディープインパクトのサトノルパンは京阪杯-G3に勝った。レッドヴェイロンだけはキングカメハメハ産駒だが、兄たちはサンデーサイレンスUSA系との配合でおおむねどれも1600mを得意としている。ダンシングブレーヴ産駒のエリモピクシー自身はファイナルSなど7勝を挙げて重賞では京都牝馬Sや愛知杯、福島牝馬Sなどどれも3着に終わっていた。エリザベス女王杯に勝った名牝で全姉のエリモシックには及ばない競走成績ながら、繁殖成績では逆転している。勢いに乗ったときに一気にG1に届くという点でもディープインパクトはサンデーサイレンスUSA後継で随一の存在であり、▲レッドアヴァンセがきょうだい悲願のG1制覇まで急上昇を遂げるかもしれない。

 ディープインパクト、ハーツクライに続いてサイアーランキングの3位にあるのがステイゴールドで、この春は中山グランドジャンプのオジュウチョウサン、天皇賞馬レインボーラインらの大物が高額賞金を獲得したのに続いて、実質的な最終世代となる現3歳にも京都新聞杯-G2勝ちのステイフーリッシュが現れた。流れとしては△アドマイヤリードの復活、連覇を示唆している。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2018.5.13
©Keiba Book