|
ディープインパクト産駒の日本でのグレード勝ちは9月23日現在で176。初年度産駒が2歳を迎えた2010年のダノンバラードによるラジオNIKKEI杯2歳S-G3が最初の1勝。その後は2011年8、2012年18、2013年19、2014年34、2015年23、2016年37、2017年16と推移してきた。ピークは重賞月産3.08勝を記録した2016年で、それに2.83勝/月の2014年が続く。英仏でも産駒がクラシックを制した今年は、先週末まで日本で20勝だから1カ月当たりでは2.22勝となり、過去3番目のペースで重賞勝ちを量産していることになる。ディープインパクト産駒のスプリントG1制覇の機運が高まったのは2014年から2016年にかけて、ミッキーアイルがあと少しのところまで行ったころ。あのときチャンスを生かせなかったことで、ディープインパクトの短距離熱は少し冷めたようになるが、今年はサマースプリントシリーズでそれまで重賞未勝利だった◎アレスバローズが突然目を覚ました。いったんは引いていた潮がこれによりまた満ちてきたようなものだ。下表が示す通り、ディープインパクト産駒のスプリント重賞勝ち馬はみなそれなりに年齢がいっているものが多い。ブランボヌールだけが2歳と3歳で重賞に勝ったが、多くは長い距離を試されてからスプリントに向かうためで、アレスバローズもデビューから2戦は2000mを走り、3戦目の1600mで初勝利を挙げた。1200mを走るようになったのは4歳になってからだった。このようにスプリントに専念するまでに時間がかかるため、ディープインパクト産駒のスプリンターは才能が発掘されるのが遅れがちになる。今年の夏はことのほか暑かったので、サマースプリントシリーズの2勝はその後に疲れを残すのではないかという仮説は正しいと思う。一方で上昇中のディープインパクト産駒はG1到達まで追うべきという説もある。6歳夏までずれ込んだ本格化は、勢いを支える力も多く蓄えられている可能性があり、今回は後者を採りたい。キタサンブラックと同じ2012年にヤナガワ牧場で生まれたアレスバローズは、トニービンの娘ながら1400m以下で4勝を挙げたタイセイエトワールの6年目の産駒。2歳上の全兄サンライズタイセイは芝1800m〜2200mで4勝を挙げていて、「血統的に正しい」のは兄の方だが、ディープインパクトの爆発力をスプリントに転化したことで弟が重賞レベルに至ったともいえる。4代母インスローラーの孫に高松宮記念-G1・3着のソルジャーズソング、曾孫にスプリンターズS-G1・3着のソルヴェイグがいて、5代母グーフトは、ジャックルマロワ賞-G1勝ち馬で大種牡馬のリファールを生んだ。この上質の牝系でもとりわけ祖母エンスラーリングは良血が集められていて、ウッドマンの母プレイメイトとエルグランセニョールの母セックスアピールを経由したバックパサーの4×4はサンデーサイレンスUSAの血によって爆発力を生む仕掛けとして有効だと思う。 |
| ディープインパクト産駒の短距離重賞実績 | ||||||
| 馬名 | 性 | 生年 | 母の父 | スプリント重賞成績 | 着 | 年 |
| シュプリームギフト | 牝 | 2008 | Souvenir Copy | 函館スプリントC-G3 | 2 | 2013 | キーンランドC-G3 | 3 | 2013 | 京阪杯-G3 | 3 | 2012 |
| バーバラ | 牝 | 2009 | Dixieland Band | セントウルS-G2 | 3 | 2015 | 北九州記念-G3 | 3 | 2013 |
| ウリウリ | 牝 | 2010 | フレンチデピュティUSA | CBC賞-G3 | 1 | 2015 | セントウルS-G2 | 2 | 2015 |
| ベステゲシェンク | 牡 | 2010 | Souvenir Copy | オーシャンS-G3 | 3 | 2015 |
| レッドオーヴァル | 牝 | 2010 | Smart Strike | キーンランドC-G3 | 2 | 2014 | スプリンターズS-G1 | 3 | 2014 |
| サトノルパン | 牡 | 2011 | ダンシングブレーヴUSA | 京阪杯-G3 | 1 | 2015 |
| ミッキーアイル | 牡 | 2011 | ロックオブジブラルタルIRE | スプリンターズS-G1 | 2 | 2016 | 高松宮記念-G1 | 2 | 2016 | 高松宮記念-G1 | 3 | 2015 |
| アレスバローズ | 牡 | 2012 | トニービンIRE | 北九州記念-G3 | 1 | 2018 | CBC賞-G3 | 1 | 2018 |
| シャイニングレイ | 牡 | 2012 | クロフネUSA | CBC賞-G3 | 1 | 2017 |
| ブランボヌール | 牝 | 2013 | サクラバクシンオー | キーンランドC-G3 | 1 | 2016 | 函館2歳S-G3 | 1 | 2015 |
|
○ナックビーナスもサンデーサイレンスUSA直系で、こちらの父ダイワメジャーは産駒コパノリチャードが高松宮記念-G1に勝っていて、既にスプリントG1に実績がある。母のレディトゥプリーズUSAは米国で3歳1月に3戦目で初勝利を挙げると3連勝でG2としては重要なファンタジーS-G2を制した。その後は4歳夏まで走って小レースに1勝したのみだが、3歳春に重賞に勝っていることに価値がある。5代母ブエナノッテの孫にプリークネスS-G1とベルモントS-G1を制した米2冠馬ハンセルUSAがおり、その牝系にヘイローの3×4×5を重ねた。特にサンデーサイレンスUSAとサザンヘイローUSAというヘイロー直仔2大種牡馬を組み合わせたところに妙味があり、このパターンではヴィクトワールピサ×モアザンレディの(ヘイロー4×5×4だが)、ミッシングリンクがTCK女王盃に勝っている。 アドマイヤムーンは産駒が目下高松宮記念-G1連覇中であり、待望されたサクラバクシンオーの後を襲うスプリント種牡馬のエースの地位に立ちつつある。春秋、回りの左右、馬場の傾向と同じ1200mでも性格の異なるこちらも勝てば産駒にスプリンターズS-G1勝ち馬のないサクラバクシンオーを超えることができる。▲ファインニードルの母ニードルクラフトIREはアイルランドのダーレーの生産馬としてモハメド殿下のえんじ色の勝負服で走り、1800mのクロエ賞-G3、1600mのセルジオクマニ賞-G3など4勝を挙げた。ロイヤルアカデミー2産駒の祖母シャープポイントはアイルランドで5Fの準重賞などに勝ち、フィーニクスS-G1・2着、ナンソープS-G1で4着となったスプリンター。4代母アルパインニースの産駒には1990年の英2000ギニー-G1、愛2000ギニー-G1を制したチロル、孫にフィーニクスS-G1勝ち馬レイヴリーがいる。エンドスウィープUSA×サンデーサイレンスUSAという米国血統の父の産駒ながら、母は非常に欧州色の濃い血統構成で、自身もシャープンアップ5×4と欧州寄り。1分8秒台の争いとなった方がいいのかもしれない。 アドマイヤムーン産駒の△ムーンクエイクは1600mに実績を残したばっかりにひょっとするとスプリンターの資質の発掘が遅れているのかもしれない。こちらもシャープンアップ5×4だが、父の祖母の父クリスと母の父ホーリングの父ダイイシスの全兄弟を経由してのものなので、クリス=ダイイシスの4×3とより近交を強めている。半兄スタッブスアートは英2000ギニー-G1・3着馬、半姉バウンスシャッセは中山牝馬S-G3など重賞3勝の実績を残した。ホーリングはファインニードルの母の父マークオブエスティームと同じくゴドルフィン1990年代の名馬。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2018.9.30
©Keiba Book