2018桜花賞


名門牝系に花が咲く

 2017年に2歳産駒がデビューしたファーストクロップサイアーは(1)ロードカナロア、(2)ヘニーヒューズUSA、(3)オルフェーヴル、(4)エイシンフラッシュ、(5)ノヴェリストIRE、(6)ハードスパンUSA、(7)ストロングリターン、(8)エスポワールシチー、(9)モンテロッソGB、(10)ローズキングダムというランキング(中央+地方)だった。首位ロードカナロアの収得賞金4億3546万円は過去10年の新種牡馬では2010年産駒デビューのディープインパクトと翌年のダイワメジャーに次ぐもので、ヘニーヒューズ3億3399万円、オルフェーヴル2億5693万円のトップ3を合計すると10億円に達し、これは過去10年で最高。更に8位エスポワールシチーまでが1億円超えを達成していて、それを見れば過去10年で最高水準の新種牡馬群であったことが分かる。
 現3歳世代、2014年の種付頭数ベスト5はディープインパクト255頭、ロードカナロア250頭、ハーツクライ246頭、オルフェーヴル244頭、ルーラーシップ230頭というものであったから、期待と人気は新種牡馬トップの2頭とも日本を代表する大種牡馬に並んでいたわけで、ここまでの結果はそれを裏切ることなく進んだといえそうだ。種牡馬としてのディープインパクトの最初のG1勝ちがマルセリーナによる2011年の桜花賞だったように、世代限定の牝馬戦には新しい流行を正しく反映する場合がある。芝競馬におけるルーキーサイアーの2強は質量ともに優れたロードカナロアと当たりが大きなオルフェーヴルで、下表にある2頭の比較において、オルフェーヴルがまさっている項目はほとんどが◎ラッキーライラックに負っている。オルフェーヴルの父ステイゴールドが最初の大物ドリームジャーニーを出したのは2年目だったし、オルフェーヴルやゴールドシップの活躍によって種付頭数が増えたからといってそれに比例して活躍馬が出るわけでもなかった。ナカヤマフェスタの初年度産駒は5歳を迎えてようやくガンコが日経賞で重賞勝ちを果たした。このように計算通りに進まないが、なぜか帳尻は合っているというステイゴールド系にあって、オルフェーヴルが初年度からロックディスタウンとラッキーライラックという重賞勝ち馬を出して、後者はG1勝ちまで進んだということはステイゴールド系らしからぬ順調な展開ともいえるし、一方で勝馬率の低さはある程度予想された通りではあった。いずれにしても、それだからこそオルフェーヴルの244分の1の一撃の威力に大きな期待がかけられる。ラッキーライラックの母ライラックスアンドレースUSAはアッシュランドS-G1勝ち馬。このレースは4月初旬の日本でいえば桜花賞と同時期に行われる3歳牝馬限定戦で、時期的地理的にはケンタッキーオークス-G1の前哨戦として質の高い出走馬が揃うことが多い。そしてこの時期に質の高いレースに勝つ馬が繁殖牝馬として成功する場合が多いのは洋の東西を問わない。祖母のリファインメントは米未勝利だが、シアトルスルー直仔で、3代母ステラマドリッドUSAはエイコーンS-G1など4つのG1を含め6勝を挙げた名牝。産駒ダイヤモンドビコーは阪神牝馬Sに勝った最優秀古牝馬、孫のマキャヴィティは兵庫ジュニアグランプリ2着となり、曾孫のミッキーアイルはマイルチャンピオンシップ-G1に、アエロリットはNHKマイル-G1Cに勝った。4代母マイジュリエットもヴォスバーグH-G2など牡馬相手のものを含め米重賞6勝の名牝で、産駒にシュヴィーH-G1のティズジュリエット、曾孫にスプリングチャレンジ-G1(南ア)のキンバリーマイン、玄孫に東海S-G2のテイエムジンソクなどがいる。5代母の子孫にはハーツクライもいて、特に日本での活躍馬が多い米国の名門といえる。


ルーキー種牡馬2強の比較
ロードカナロア項目オルフェーヴル
250種付頭数244
188生産頭数156
180血統登録頭数153
137出走頭数118
442出走回数336
52勝馬頭数21
37.96%勝馬率17.80%
70勝利回数26
23入着頭数30
322歳勝馬頭数8
22歳種牡馬順位6
2重賞勝馬2
2重賞勝鞍4
\501,843,0001着賞金\297,218,000
\160,907,000重賞賞金\202,313,000
\775,121,000収得賞金\463,456,000
1.12AEI0.78
1.06重賞AEI3.33
4月3日現在、中央+地方、2歳時からの累計、JBISサーチによる

 ロードカナロアは産駒3頭をこの舞台に送り込んできたという点でオルフェーヴルとはまた違った種類の期待にしっかりと応えているわけで、中でも○アーモンドアイの決め手は本命馬にとっても最大の脅威となる。母のフサイチパンドラはサンデーサイレンスUSA直仔でエリザベス女王杯と札幌記念に勝った名牝。繁殖入り後は毎年産駒を送り出したが7年目の本馬が初めての重賞勝ち馬となった。ヌレエフ産駒の祖母ロッタレースUSAは不出走。バックパサー産駒の3代母セックスアピールの子孫には、英2000ギニー馬エルグランセニョール、デューハーストS-G1のトライマイベスト、ナンソープS-G1のバハミアンパイレート、ブリーダーズCマイル-G1のドームドライヴァー、ユナイティドネーションズS-G1のチンチョンなど多くの名馬が出た。4代母ベストインショウの子孫にもベルモントS-G1のジャジルとラグズトゥリッチズ、ピーターパンS-G2のカジノドライヴUSA、愛オークス-G1のピーピングフォーンらがいる。名門に良血だけを積み重ねられて奥が深く、相手は一気に強くなるが格負けすることはない。

 ▲デルニエオールはドリームジャーニーとオルフェーヴルの全妹で、本馬を生んだ3日後に母のオリエンタルアートが死んでしまったので、最後の黄金と名付けられた。目つきや尻尾を上げ気味に疾走する姿はオルフェーヴルそっくりだし、血統的な格でいえばオープンや重賞レベルまで来ればG1でも即勝ち負けになりそうなものだが、若駒Sのリヤンドファミユやデイリー杯2歳S-G2・2着のアッシュゴールドといった全兄の成績を見る限り簡単に信用できない面もあって、期待と不安が半々。

 昨年のディープインパクト産駒はG1・3勝、3歳限定G1は1勝に終わった。これは初年度世代と同じ数字だが、全体の戦力を考えれば大変な不振と見ていい。現3歳世代は牡馬に不動のチャンピオンがいて、このレースには6頭出しだから、反転攻勢に向かうと考えるのが自然だが、大の得意であったはずの大阪杯-G1でアルアインもサトノダイヤモンドも、ハーツクライ産駒とハービンジャーGB産駒に完敗を喫した。たまたまの落ち込みかもしれないし、あるいは馬場や流れといった外的な要因の変化がディープインパクト産駒の瞬発力が生きない方向に進んでいる可能性もある。2011年のマルセリーナから4連勝して大の得意であるはずのこのレースで流れを変えられるのかどうか。変えるとすれば、母モシーンAUSが豪G1VRCオークス勝ちという異色の血の△プリモシーンではないだろうか。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2018.4.8
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