2018大阪杯


眠りから覚めたハービンジャーGB

 1957年に1800mのハンデ戦として始まった大阪盃競走は、1964年にサンケイ大阪盃と名を改め、翌1965年には距離が1850mに変更され、1966年には1900mに再度延長された。1970年から盃の文字が杯となり、1972年に距離が今と同じ2000mとなった。1974年にやっとハンデ戦ではなくなったが、まだ基本の重量が低い賞金別定でハンデ戦に似た大きな斤量差で争われ、施行時期は3月初旬から中旬であった。1981年から4月初めに移動して賞金別定の基準も上がり、1984年にはJRAのグレード制によりG2に格付けされた。1986年からはG1、G2勝ち馬に加重されるグレード別定となった。日本のパート1入りに先んじて2004年には国際G2の格付けを得て、昨年からは定量戦となりG1に格付けされた。1984年の勝ち馬はカツラギエース、1986年にはサクラユタカオーが勝ち、以降毎年、勝ち馬の名前を見ればその時代のG1級が名を連ねていて、レースのレベルを評価すれば、むしろ遅すぎるくらいのG1格付けだった。
 ハービンジャーGBは2010年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスS-G1を史上最大着差11馬身、当時のレコード2.26.78で圧勝した名馬であり、翌2011年から日本で種牡馬入りすると200頭を超える牝馬を集めた。2014年にデビューした初年度2歳産駒は19頭が21勝を挙げ、キンシャサノキセキ、ヴァーミリアン、エンパイアメーカーUSAらを抑えてファーストクロップサイアー・チャンピオンとなった。初年度産駒が3歳を迎えると早々にベルーフが京成杯-G3を勝って重賞勝ちも果たした。2年目の産駒からもドレッドノータスやプロフェットといった重賞勝ち馬が現れ、3年目の産駒が3歳春を迎えるとペルシアンナイトが皐月賞-G1・2着、モズカッチャンが優駿牝馬-G1・2着と初めてクラシック/G1の連対がなった。そして、着実に階段を上ってきた結果が、昨秋のディアドラによる秋華賞-G1、モズカッチャンによるエリザベス女王杯-G1、◎ペルシアンナイトによるマイルチャンピオンシップ-G1という京都での立て続けのG1制覇だった。ハービンジャーGBのイメージとしてはややもするとひと昔前の欧州2400m型ステイヤーというのがあって、それで大きくは外れていないのだろうが、昨秋のG1・3勝の距離を平均すると1933m。下表には出走馬の父について最近のおよそ10年、2008年から先週までの芝2000mの重賞成績をまとめたが、この条件での3着内率が最も大きく、他の距離に比較しても特に優れているのがハービンジャーGBだった。ペルシアンナイトは母の父がサンデーサイレンスUSAなので、ベルーフ、ドレッドノータスなど現状では父にとって最も成功例の多い組み合わせ。母の全兄にはフェブラリーSなどダート重賞5勝のゴールドアリュールがいる。3代母リラクタントゲストはビヴァリーヒルズH-G1の勝ち馬で、孫のディアマイダーリンはクイーン賞に勝った。父系曽祖父がデインヒルUSA、父系祖父の母の父の父がニジンスキー系イルドブルボンUSA、父の母の父の母の父がリファール、父の祖母の父がシャリーフダンサー、祖母の父がヌレエフ、3代母の父がニジンスキー系ホスティジと欧州系ノーザンダンサーの血でサンデーサイレンスUSAの周りを固めている。ノーザンダンサーの成功とその汎用性の源が現役時の2000mでの強さにあったとすると、それを裏返せば、多様なノーザンダンサー血脈の集積が2000mの強さにつながるといえるのではないか。


芝2000mでの重賞成績 (出走馬の父、2008.1.1〜2018.3.25)
種牡馬名生年2000m全芝G
3着率
1着2着3着着外連対率3着率
ディープインパクト20024134292380.2190.3040.324
キングカメハメハ20012214211530.1710.2710.254
ステイゴールド19941715141630.1530.2200.221
ハーツクライ20011110101020.1580.2330.259
ゼンノロブロイ2000778740.1460.2290.203
ハービンジャーGB2006662270.2930.3410.216
シンボリクリスエスUSA1999546790.0960.1590.157
スクリーンヒーロー200421060.3330.3330.292
メイショウサムソン2003102280.0320.0960.112
ルーラーシップ200700290.0000.1810.276
トーセンホマレボシ200900010.0000.0000.250
タートルボウルIRE200200010.0000.0000.333

 サンデーサイレンスUSAとミスタープロスペクターの組み合わせは、サンデーサイレンスUSAとノーザンダンサーよりも一段階現代的な印象がある。○スワーヴリチャードは母の父がアンブライドルズソング。その父アンブライドルドを起点とする流れは大ミスタープロスペクター系の暫定盟主といったところで、母の父としてサンデーサイレンスUSA系種牡馬との協力により日本でも菊花賞-G1のトーホウジャッカル、朝日杯フューチュリティS-G1のダノンプラチナでG1レベルの成功を見た。スワーヴリチャードは祖母の父がシアトルスルー直仔のジェネラルミーティング、3代母の父がリヴァーマンとナスルーラ系を並べ、高速決着への対応という点では本命馬を上回っている。

 年長のハーツクライ産駒▲シュヴァルグランは同じように母の父にミスタープロスペクター系を配置しているが、対照的に欧州風の高級感が特徴。母の父にマキアヴェリアンがあるとどんな配合でも高級そうに見えるというのが私の特に役に立たない持論だが、そもそも高級でないとマキアヴェリアンが配合されないということもいえる。マキアヴェリアンの母でオマール賞-G3勝ち馬クドフォリー、4代母のカナダの名牝グローリアスソングがいずれもヘイロー直仔で、名馬名牝を経由してのヘイロー3×4×5の美麗でモダンな配合。2000mで求められるスピードが不足するとは思えない。キタサンブラックに迫ったりねじ伏せたりしている実績を軽く扱うべきでもないと思う。

 △ダンビュライトは父ルーラーシップに続いてアメリカJCC父仔制覇を達成したことになるが、父が5歳で勝ったのに比べるとそれより早いし、重賞初勝利では3歳12月鳴尾記念の父の方が早い。ともあれ、種牡馬としてのルーラーシップは初年度産駒から菊花賞馬キセキと最初の古馬重賞勝ち馬としての本馬を出して、中長距離部門のキングカメハメハ後継として着々と実績を積み上げている。母のタンザナイトはダイヤモンドS-G3・2着のラブラドライトを生み、孫のブラックスピネルは東京新聞杯-G3に勝った。祖母キャサリーンパーの産駒にはジャパンCダートのアロンダイト、孫には宝塚記念-G1のマリアライト、ジャパンダートダービーのクリソライト、神戸新聞杯-G2のリアファルがいる。3代母リーガルイクセプションがリボー直仔で愛オークス-G1に勝ち、英オークス-G1で2着となったように、大変底力に優れた一族で、勢いに乗っているときにはそれまでの力関係を一気に逆転するような爆発力があるだけに、3連勝の可能性は十分。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2018.4.1
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