2018優駿牝馬


種牡馬新世代の躍進

 種牡馬として優れているのはマイラー型かクラシック型かというのは古今東西議論の尽きないところで、日本の場合は歴代リーディングサイアーを遡っていくと2012年にディープインパクト時代が始まっており、キングカメハメハ、マンハッタンカフェ、アグネスタキオンらの短期政権時代を経て、その前は偉大な米二冠馬サンデーサイレンスUSAが1995年から2007年まで続いている。これらはみな2000m以上のクラシック馬だった。1994年は凱旋門賞馬でイタリアダービー馬トニービンIRE、1993年はドーヴィル大賞のリアルシャダイUSAで、ここまではクラシック型かそれに準じた長距離系の時代だった。1992年以前はフォレ賞-G1勝ち馬ノーザンテーストCANの時代で、マイラーが万能の産駒を送り出して日本の血統地図を塗り替えた。英愛はざっくりと2010年代はガリレオの時代、その前がデインヒルUSAの時代、2004年以前がサドラーズウェルズとノーザンダンサー朝が30年近く続いている。ガリレオはクラシック型で、デインヒルUSAはスプリンター・マイラーから万能へと発展した。サドラーズウェルズは競走成績は愛2000ギニー-G1、エクリプスS-G1、愛チャンピオンS-G1勝ちなのでマイラー〜2000m型といえ、種牡馬としては長距離方面へと活躍の場を広げて一大帝国を作った。
 NHKマイルC-G1をケイアイノーテックが、ヴィクトリアマイル-G1をジュールポレールが制し、サクソンウォリアーも英2000ギニー-G1に勝って同時多発的G1制覇という通常モードに戻ったディープインパクトの時代が簡単に退潮に向かうとは思えないが、今年は桜花賞-G1をロードカナロア産駒のアーモンドアイが、皐月賞-G1をオルフェーヴル産駒エポカドーロが勝ち、それぞれキングカメハメハとステイゴールドの1世代下の若い新種牡馬が期待に違わぬ大仕事をしている。一気に流れが変わることはなくてもここに潮流の変化の兆しは見ておく必要がある。下表は桜花賞-G1時のこの欄の使い回しに見えるかもしれないが、2頭の対照がかなり鮮やかに表れている。キングカメハメハとステイゴールドの実力のある2代目による代理対決という面もあって、将来を見据えた後継者問題という点に限れば、今この時点でわが世の春を謳歌するディープインパクト家にとってもうらやましい部分だろう。
 今のところスプリンター対ステイヤーという現役時のイメージが残っている新種牡馬2強対決第2ラウンドは、素直に2400mならオルフェーヴルという考えでいいのではないか。ロードカナロアはいずれ、早ければ今週末にも2400mのG1勝ち馬を出すだろうと推測されるが、推測と日仏で2400m戦に勝った事実ではやはり後者の方が重い。◎ラッキーライラックはこの世代の最初のG1勝ち馬でオルフェーヴル産駒の最初のG1勝ち馬。母のライラックスアンドレースUSAはフォーティナイナーUSA系のトラヴァーズS-G1勝ち馬フラワーアリーの娘で、オールウェザー8.5FのアシュランドS-G1に勝った。続くケンタッキーオークス-G1では12着と惨敗しているが、ダートで走ったのはこのケンタッキーオークス-G1と勝ち馬から11 3/4馬身差の7着に敗れた6Fのデビュー戦だけで、3勝はすべてオールウェザーだった。ドバイのメイダン競馬場がダートに戻してからは絶滅危惧種となったオールウェザー馬場だが、このように成果も残しているのだった。ケンタッキーオークス-G1で敗れたライラックスアンドレースUSAは間をあけずヘンリーザナヴィゲイターを種付けされて日本に渡って翌年に初仔ライラックローズを生み、2番仔に父ディープインパクトの現役3勝ラルクを生み、不受胎を挟んで3番仔として本馬を生んだ。皐月賞馬エポカドーロの母の父はフォーティナイナーUSAなので、一定以上の相性の良さがある可能性は小さくないが、それ以上にこちらは3代母ステラマドリッドUSAに遡る牝系の格の高さを重視すべき。アリダー産駒のステラマドリッドUSAはエイコーンS-G1、フリゼットS-G1など2、3歳時にG1に4勝した天才少女で、子孫にはダイヤモンドビコーからミッキーアイルまで日本での活躍馬が多い。4代母マイジュリエットも牡馬相手のヴォスバーグH-G2など米重賞6勝の名牝で、こちらも子孫に活躍馬多数。東海S-G2のテイエムジンソクはその玄孫にあたる。このような名牝系にシアトルスルー×アリダーという米三冠馬配合の祖母にフォーティナイナーUSAの血が入って、サンデーサイレンスUSAで仕上げた形は米国風だが、凝った配合のフラワーアリーにやはり凝った配合のオルフェーヴルを重ねた構成の妙に味がある。


2017年産駒デビュー新種牡馬対決のここまで
ロードカナロア馬名オルフェーヴル
2008年3月11日生年月日2008年5月14日
鹿毛、新ひだか毛色、産地栗毛、白老
キングカメハメハステイゴールド
レディブラッサムオリエンタルアート
Storm Cat母の父メジロマックイーン
日港19戦13勝戦勝日仏21戦12勝
2013年年度代表馬、同最優秀短
距離馬、2012年最優秀短距離馬
JRA賞受賞歴2011年年度代表馬、同最優秀3歳
牡馬、2012年最優秀4歳以上牡馬
香港スプリントG1×2、スプリンターズ
SG1×2、安田記念G1、高松宮記念G1
主な勝ち鞍有馬記念G1×2、宝塚記念G1、東京優駿
G1、皐月賞G1、菊花賞G1、フォワ賞G2×2
250種付頭数244
180血統登録頭数153
146(7)出走頭数(地方)130(6)
60(3)勝馬頭数(地方)26(2)
アーモンドアイ(桜花賞G1)、
ステルヴィオ(スプリングSG2)
重賞勝ち馬
と勝ち鞍
エポカドーロ(皐月賞G1)、ラッ
キーライラック
(阪神JFG1)、ロ
ックディスタウン(札幌2歳SG3)
2位2歳種牡馬成績7位
1,026,357,000 (24,529,000)収得賞金(地方)720,065,000 (5,550,000)
※種付頭数以下は初年度産駒成績(JBISサーチ、5月15日現在)

 ○アーモンドアイの牝系のスケールもそれに劣らないもので、母フサイチパンドラはエリザベス女王杯と札幌記念に勝ち、優駿牝馬で2着になった。エリザベス女王杯の勝利は繰り上がりでカワカミプリンセスには1 1/2馬身差をつけられての入線だが、スイープトウショウをクビ差抑えているのだから価値は高い。3代母セックスアピールは直仔のデューハーストS-G1勝ち馬トライマイベスト、愛ダービー-G1のエルグランセニョールから曾孫のBCマイル-G1勝ち馬ドームドライヴァー、ナンソープS-G1のバハミアンパイレートまで多くの名馬を送った。祖母の父ヌレエフ、父系曽祖父の母ミエスクの父ヌレエフと、名牝+ヌレエフの組み合わせにはマイルでこその鮮やかさという印象もある。

 ▲カンタービレのディープインパクト×ガリレオの組み合わせはサクソンウォリアーと同じ日英リーディングサイアー協同配合。

 △トーホウアルテミスは菊花賞馬トーホウジャッカルの半妹。父の良さを出す母。条件は最適。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2018.5.20
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