2018NHKマイルC


マイル部門の開拓

 桜花賞-G1ではオルフェーヴル産駒のラッキーライラックが2着となり、皐月賞-G1はエポカドーロが勝ってオルフェーヴル産駒は初年度産駒によるクラシック制覇を達成した。天皇賞(春)-G1ではオルフェーヴルの偉大な父であるところのステイゴールドが死して3年なお強い影響力のあるところを示し、直仔レインボーラインがG1初制覇を遂げた。簡単にいってしまうとこの春のトレンドはステイゴールドということでいいのではないでしょうか。ステイゴールドの勢力がここまで大きくなる前までは、この一族はサッカーボーイ血統などと呼ばれ、ノーザンテーストCAN牝馬にディクタスがかけられたゴム鞠のような瞬発力を誇るいわゆるノーザンディクタス配合の代表であった。オルフェーヴルのほかにもステイゴールド直仔のナカヤマフェスタが日経賞-G2勝ちのガンコを送り出すなど父系としてステイゴールド系が発展していくのと並行して、サッカーボーイの母ダイナサッシュを起点とする牝系の発展振りも目をみはるもので、下表の通り、ノーザンディクタス配合の牝馬はさまざまに優秀な子孫を送り出した。◎フロンティアはゴールデンサッシュの6番仔グレースランドの11番仔として、東京優駿3着で神戸新聞杯勝ちのドリームパスポートの12歳下の半弟として生まれている。それだけ歳の差があるので、父もフジキセキの9歳下のダイワメジャーに替わっている。母の父はトニービンIREとの組み合わせからは高松宮記念-G1のコパノリチャードが出ていて、トニービンIRE直仔ジャングルポケット牝馬とダイワメジャーの組み合わせからはフィリーズレヴュー-G2のソルヴェイグが出ているので、これら両系統の相性は良好といっていい。サンデーサイレンスUSAとゴールデンサッシュ、そしてノーザンテーストCAN3×4の近交という大まかな構成はドリームジャーニーとオルフェーヴルの兄弟に共通するものでもある。エアグルーヴやサクラチトセオー、近くではトーセンジョーダンといた秋の天皇賞馬を送り出したトニービンIREとノーザンテーストCANの血の組み合わせに注目すれば、初コースとなる東京はこれまで見せたことのない力を発揮するのに最適な舞台である可能性が高い。


発展を続けるダイナサッシュ系
ダイナサッシュ(牝、鹿毛、1979年生、早来産、父ノーザンテーストCAN)未勝利
  サッカーボーイ(牡、栗、1985、ディクタスFR)マイルチャンピオンシップ、阪神3
  |   歳S
  ベルベットサッシュ(牝、鹿、1986、ディクタスFR)
  | ホールオブフェーム(牝、黒鹿、1991、アレミロードUSA)
  |   バランスオブゲーム(牡、鹿、1999、フサイチコンコルド)毎日王冠、中山
  |   |   記念×2、オールカマー、弥生賞、セントライト記念、新潟2歳S
  |   フェイムゲーム(セン、青鹿、2010、ハーツクライ)アルゼンチン共和国杯
  |       G2、目黒記念G2、ダイヤモンドSG3×3、京成杯G3
  ゴールデンサッシュ(牝、栗、1988、ディクタスFR)
    ステイゴールド(牡、黒鹿、1994、サンデーサイレンスUSA)香港ヴァーズG1、
    |   ドバイシーマクラシックG2、目黒記念、日経新春杯
    ローズサッシュ(牝、栗、1995、ドクターデヴィアスIRE)
    | ヤマカツサクラ(牝、栗、2001、フジキセキ)
    |   ヤマカツセイレーン(牝、栗、2007、グラスワンダーUSA)
    |     ダイアナヘイロー(牝、黒鹿、2013、キングヘイロー)北九州記念
    |         G3、阪急杯G3
    グレースランド(牝、栗、1998、トニービンIRE)
    | ドリームパスポート(牡、青鹿、2003、フジキセキ)神戸新聞杯、きさらぎ賞
    | フロンティア(牡、栗、2015、ダイワメジャー)新潟2歳SG3
    レクレドール(牝、黒鹿、2001、サンデーサイレンスUSA)ローズS、クイーンS
    | ベルーフ(牡、鹿、2012、ハービンジャーGB)京成杯G3
    キューティゴールド(牝、栗、2004、フレンチデピュティUSA)
      ショウナンパンドラ(牝、鹿、2011、ディープインパクト)ジャパンCG1、秋華
          賞G1、オールカマーG2

 この春のG1におけるディープインパクト産駒は高松宮記念が1頭出走12着、大阪杯は4頭出しで(3)(7)(9)(15)、桜花賞は6頭(4)(5)(7)(10)(11)(12)、皐月賞は2頭(5)(7)、天皇賞(春)も2頭(7)(13)という結果。大阪杯のアルアインが複勝圏に入っただけで単勝回収率は0%というもの。このまま低迷の淵に沈みこんでしまっては日本競馬沈没の恐れもあるので、5頭出しのここはそろそろ反撃に出るタイミングではないだろうか。ディープインパクト産駒の今のところ唯一のこのレースの勝ち馬ミッキーアイルは母の父がデインヒルUSA直仔ロックオブジブラルタルIREだった。ロックつながりというわけではないが、○プリモシーンは母の父がデインヒルUSA直仔ファストネットロック。現役時のファストネットロックはライトニングS-G1やオークリープレート-G1に勝ったスプリンターだったが、種牡馬としてはオーストラリアのスプリンターから英オークス馬まで送り出して万能ぶりを示す大種牡馬。本馬の母モシーンAUSはその代表産駒の一頭で、ヴィクトリアオークス-G1、オーストラリアンギニー-G1、ロイヤルランドウィックギニー-G1、ヴァイナリースタッドS-G1などG1・4勝を挙げた。3代母の産駒には香港マイル-G1のラッキーオーナーズ、4代母の産駒にはメルボルンC-G1などG1・7勝の名馬マイトアンドパワーがいる。プランスドランジュ賞-G3・2着のバロッチ、プールデッセデプーリッシュ-G1(仏1000ギニー)のビューティパーラーらのディープインパクト産駒海外組もこの牝系から出ている。瞬発力を発揮する機会のなかった桜花賞-G1の雪辱に期待したい。

 フランケル産駒やナサニエル産駒が活躍している近年はガリレオの孫時代といえるが、1世代先を進んでいるのがガリレオ〜ニューアプローチ〜ドーンアプローチと続く系統。ガリレオ3年目の産駒ニューアプローチは英ダービー-G1、愛チャンピオンS-G1、英チャンピオンS-G1、2歳時にもデューハーストS-G1、ナショナルS-G1に勝っているG1・5勝の名馬で、その初年度産駒ドーンアプローチも2歳時にデューハーストS-G1、ナショナルS-G1に勝ち、3歳で英2000ギニー-G1とセントジェームズパレスS-G1に勝った。その初年度産駒が▲ファストアプローチであり、父系曽祖父とわずか17しか歳の差がない。王者ガリレオから徐々にスピードのないマイラーへと変貌を遂げている嫌いがないわけではない系統ながら、世代交代が早いぶん、ある意味近未来的血統と見ることができる。母ジョリージョコンドIREは7Fの愛G3タイロスS3着馬で、宝塚記念-G1のサトノクラウン、チェヴァリーパークS-G1のライトニングパールの全姉にあたる。サトノクラウンが得意とする馬場がこの馬にも向きそうだが、新興種牡馬の台頭という今春のG1戦線の隠し属性には合致する。

 △パクスアメリカーナはホエールキャプチャの全弟だから男ホエールキャプチャのイメージで捉えればいい。全姉はヴィクトリアマイル-G1、東京新聞杯-G3、府中牝馬S-G2、クイーンC-G3の重賞勝ちを含め東京では(4.1.2.3)の高い安定性を示した。このごろのクロフネUSA産駒はこのレースの勝ち馬クラリティスカイ、テイエムジンソクなど牡馬のがんばりが目立つ。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2018.5.4
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