2018マイルチャンピオンシップ


こっそり受け継ぐデインヒルUSAらしさ

 今月初めにブリーダーズCマイル-G1が終わって、北半球の主要マイル(1600m)戦はこのレースと香港マイル-G1を残すのみとなった。今年のこの路線の最大の収穫は日本で馬券の発売もあったジャックルマロワ賞-G1勝ち馬アルファセントーリで、下表に示した通り、この3歳牝馬は愛1000ギニー-G1、コロネーションS-G1、ファルマスS-G1と牝馬限定戦を連勝したあと、ジャックルマロワ賞-G1でも牡馬を問題にしなかった。9月の愛メイトロンS-G1で2着に敗れたあと右前球節の故障が判明、引退した。ジャックルマロワ賞-G1でアルファセントーリに敗れたレコレトスはムーランドロンシャン賞-G1に勝ち、ムーランドロンシャン賞-G1でその3着に敗れたエキスパートアイがブリーダーズCマイル-G1に勝っているので、同じ勝負服でブリーダーズCマイルを連覇した名牝ミエスクの再来と考えられても不思議はないが、能力のある馬ほど無事に走り続けるのは難しいものだ。シーズン末を待たずに引退したそのヒロインを除くと、この路線は勝ち馬が猫の目のように変わった。そんな中であえてひとつ傾向を見出すとすれば、ビルズドンブルック、テッパル、ローマナイズド、アルファセントーリ、アレイヴィングビューティ、アクシデンタルエージェント、ウィズユーの父系がいずれもデインヒルUSA系だったことくらい。あと、フランケルの母の父がデインヒルUSAだったり、エキスパートアイの母の父がダンシリだったり、マイル路線ではデインヒルUSA系が強いというごく常識的な事実が改めて明らかになった。ハービンジャーGBはキングジョージ6世&クイーンエリザベスS-G1を11馬身差で圧勝した2010年欧州最強のステイヤーというキャッチフレーズが第一にあるが、◎ペルシアンナイトが昨年のこのレースを制した時点で、我が国唯一のダンシリ直仔で随一のデインヒルUSA系成功種牡馬というマイラー種牡馬としての側面も明らかになっていた。この世代のハービンジャーGB産駒は秋華賞-G1のディアドラ、エリザベス女王杯-G1のモズカッチャンを加えて昨秋の活躍に目覚ましいものがあり、なかなか勝てなかったG1も勝つときは一気に勝つのが欧州最強ステイヤーの底力でもあった。ペルシアンナイトは母の父サンデーサイレンスUSAという父の産駒としてはオーソドックスな成功パターンを踏襲しており、母オリエントチャームは4勝を挙げてマーメイドS3着の活躍馬。その全兄ゴールドアリュールは東京大賞典、フェブラリーSなどに勝ったダートの名馬。叔父ゴールスキーは2010年のこのレースで3着となった。父自身の活躍が4歳上半期だけだったこと、G1・2勝目を挙げた産駒がまだいないことなどを考えると今回は能力維持可能な期間に関して試金石といえるが、大阪杯-G1はなかなか立派な内容だったので、前年勝利後も成長を遂げているのは間違いない。


2018年 北半球の芝マイル(1600m)G1勝ち馬  太字は複数勝利
月日レース地域条件距離競馬場勝ち馬性齢
3/10フランクE.キルローマイルH4歳以上8FサンタアニタBowies Heroボウイズヒーロー牡4Artie Schiller
4/13メーカーズ46マイルS4歳上8FキーンランドHeart to Heartハートトゥハート牡7English Channel
4/29チャンピオンズマイル3歳上1600mシャティンBeauty Generationビューティージェネレーションセン5Rad to Rock
5/5英2000ギニー3歳牡牝8FニューマーケットSaxon Warriorサクソンウォリアー牡3ディープインパクト
5/6英1000ギニー3歳牝8FニューマーケットBellesdon Brookビルズドンブルック牝3Champs Elysees
5/13プールデッセデプーラン3歳牡1600mパリロンシャンOlmedoオルメド牡3Declaration of War
5/13プールデッセデプーリッシュ3歳牝1600mパリロンシャンTeppalテッパル牝3Camacho
5/19ロッキンジS4歳上8FニューベリRhododendronロウドデンドロン牝4Galileo
5/26愛2000ギニー3歳牡牝8FカラRomanisedローマナイズド牡3Holy Roman Emperor
5/27愛1000ギニー3歳牝8FカラAlpha Centauriアルファセントーリ牝3Mastercraftsman
5/28シューメイカーマイルS3歳上8FサンタアニタパークHuntハントセン6Dark Angel
6/3安田記念3歳上1600m東京モズアスコットUSAMozu Ascot牡4Frankel
6/9ジャストアゲイムS4歳上牝8FベルモントパークA Raving Beautyアレイヴィングビューティ牝5Mastercraftsman
6/19クイーンアンS4歳上8FアスコットAccidental Agentアクシデンタルエージェント牡4Delegator
6/19セントジェイムズパレスS3歳牡7F213yアスコットWithout Paroleウィズアウトパロール牡3Frankel
6/20コロネーションS3歳牝7F213yアスコットAlpha Centauriアルファセントーリ牝3Mastercraftsman
7/8ジャンプラ賞3歳牡牝1600mドーヴィルIntelogentアンテロジャン牡3Intello
7/13ファルマスS3歳上牝8FニューマーケットAlpha Centauriアルファセントーリ牝3Mastercraftsman
7/29ロートシルト賞3歳上牝1600mドーヴィルWith Youウィズユー牝3Dansili
8/1サセックスS3歳上8FグッドウッドLightning Spearライトニングスピア牡7Pivotal
8/11フォースターデイヴH3歳上8FサラトガVoodoo Songヴードゥーソング牡4English Channel
8/12ジャックルマロワ賞3歳上牡牝1600mドーヴィルAlpha Centauriアルファセントーリ牝3Mastercraftsman
9/9ムーランドロンシャン賞3歳上牡牝1600mパリロンシャンRecoletosレコレトス牡4Whipper
9/15ウッドバインマイル3歳上8F加ウッドバインOscar Performanceオスカーパフォーマンス牡4Kitten's Joy
9/15愛メイトロンS3歳上牝8FレパーズタウンLaurensローレンス牝3Siyouni
10/6シャドウェルターフマイルS3歳上8FキーンランドNext Sharesネクストシェアズセン5Archarcharch
10/6ファーストレイディS3歳上牝8FキーンランドA Raving Beautyアレイヴィングビューティ牝5Mastercraftsman
10/6サンチャリオットS3歳上牝8FニューマーケットLaurensローレンス牝3Siyouni
10/20クイーンエリザベスU世S3歳上8FアスコットRoaring Lionロアリングライオン牡3Kitten's Joy
11/3BCマイル3歳上8FチャーチルダウンズExpert Eyeエキスパートアイ牡3Acclamation

 ○モズアスコットUSAの父フランケルは近年最強のマイラー。ガリレオ×デインヒルUSAという配合はむしろそれらにとって未開の地である日本に合う可能性はあった。ソウルスターリングと本馬の成功はその仮説の裏付けとなったわけだが、一方でサンデーサイレンスUSA的な瞬発力には負ける場合があることも明らかになってきた。そういった点では、ディープインパクト産駒の活躍例が多いこのレースは安田記念-G1に比べると、苦しい戦いを強いられるかもしれない。

 血統ではディープインパクト産駒、かつ世代では4歳というベストと思われる条件に合致するのは▲アルアイン。母ドバイマジェスティUSAはブリーダーズCフィリー&メアスプリント-G1など米重賞4勝の名牝で、その父エッセンスオブドバイがプルピット〜エーピーインディ系、祖母の父はラフンタンブル系グレイドアバヴと異色の構成の5代アウトブリード。1600m挑戦が立ち直りの起爆剤となる可能性は小さくない。

 大穴で4歳のステイゴールド産駒△ウインブライト。ひとつ上のレインボーライン、アドマイヤリード、クロコスミアらの世代と同程度、131頭の血統登録があったこの世代からも確率的にはそろそろG1で通用するものが現れておかしくない。母の父アドマイヤコジーンは安田記念勝ち馬で、牝系は1988年の優駿牝馬を10番人気で制したコスモドリームと同じ。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2018.11.18
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