2018ジャパンC


トニービンIRE系の新展開

 エネイブルによる凱旋門賞-G1とブリーダーズCターフ-G1の(同一年の)連勝は史上初の快挙であり、また、両レースを牝馬が勝ったのも史上初だった。それにジャパンC-G1を加えて北半球秋の2400m3大レースとすると、当然それらすべてに牝馬が勝てば史上初となる。アーモンドアイはロードカナロアの初年度産駒として牝馬三冠を制した。ロードカナロアは現役時にチャンピオンスプリンターであり、安田記念-G1に勝ったように1600mでも実績があり、種牡馬としてはキングカメハメハ系らしい万能ぶりを示していて、先週のマイルチャンピオンシップ-G1では産駒ステルヴィオが牡馬として初めてG1勝ちを果たしている。母のフサイチパンドラは繰り上がりとはいえ、エリザベス女王杯の勝ち馬であり、ヌレエフ産駒の祖母ロッタレースUSAを経てセックスアピール、ベストインショウへと遡る名門。ヌレエフとセックスアピールの組み合わせは父系祖父キングカメハメハにも潜んでいて、父キングマンボの母である名牝ミエスクがヌレエフの娘であり、母の父ラストタイクーンIREの父トライマイベストUSAがセックスアピールの産駒でロッタレースの半兄にあたる。トライマイベストUSAはノーザンダンサーの仔なので、4分の3同じトライマイベストUSAとロッタレースUSAが5代目と2代目に出現する技巧的な配合となる。ざっくり分類すれば、瞬発力に優れたキングカメハメハ×サンデーサイレンスUSAの現代的バージョンで、ヌレエフが爆発力を増幅しているといったところ。常時上がり33秒台の差し切り勝ちをしてきて、前を捉えて更に突き放す瞬発力はその数字以上の印象を与えている。ただ、33秒台の脚が発揮できない流れというのもあるわけで、初めて古馬牡馬の一線級との対戦となるとどうか。秋華賞で0秒4差負かした相手はエリザベス女王杯-G1で勝ち馬から0秒6差敗れているので、単純に相手関係と着差を計算すれば、ここで通用するかどうかは証拠不十分とせざるを得ないという見方も成り立つので▲。

 逆転があるならディープインパクト系か、東京2400m血統のトニービンIRE関係。主に母の父トニービンIREのハーツクライの功績が大きいが、下表に示したように2011年以降は何らかの形でトニービンIREの血を受け継いだものが、必ず3着以内に1頭は食い込んでいる。トーセンジョーダンのように好調の5歳時に2着となっただけでなく、惨敗後の7歳時にも3着となった例があるので加齢による能力減衰が小さいのもこの系統の特徴だが、リピートはせいぜい2回までということもいえる。◎ミッキースワローは父トーセンホマレボシがディープインパクト直仔で、母の父はトニービンIRE直仔のジャングルポケット。父の半兄でジャングルポケット直仔のトーセンジョーダンを形を変えて再現しているようでもあるし、「母の父の父」がトニービンIREというケースは過去にまだ例がないパターン。穴を狙うのであれば、あえてこのような初物に照準を合わせるべきであろう。祖母のツィンクルブライドは1994年の桜花賞でオグリローマンのハナ差2着。リファール×カロらしい強烈な末脚を見せたのはその1回きりといってもいいが、それだけの瞬発力が潜在していなければできない芸当だった。実際に、産駒のペールギュントがやはり一世一代ともいえる末脚で高松宮記念の2着となっており、そのように綱渡り的に伝わる資質もあるということを示している。


過去のジャパンカップにおける
トニービンIREの影響
着順馬名性齢人気続柄
19933ウイニングチケット牡34
19943ロイスアンドロイス牡48
19957ロイスアンドロイス牡58
19972エアグルーヴ牝42
19982エアグルーヴ牝52
20011ジャングルポケット牡32
20025ジャングルポケット牡43
200310ダービーレグノ牡518
20045ナリタセンチュリー牡54
10ハーツクライ牡33母の父
20052ハーツクライ牡42母の父
4リンカーン牡59母の父
18ストーミーカフェ牡314父の母の父
20062ドリームパスポート牡35母の父
10ハーツクライ牡52母の父
200714ドリームパスポート牡46母の父
18ヴィクトリー牡38母の父
20085オウケンブルースリ牡34父の父
12アドマイヤモナーク牡716母の父
15トーセンキャプテン牡413父の父
20092オウケンブルースリ牡42父の父
20104ジャガーメイル牡67父の父
7オウケンブルースリ牡56父の父
20112トーセンジョーダン牡56父の父
3ジャガーメイル牡714父の父
5ウインバリアシオン牡37父の母の父
10オウケンブルースリ牡612父の父
20123ルーラーシップ牡52母の父
6トーセンジョーダン牡610父の父
7ビートブラック牡58父の母の父
10ジャガーメイル牡811父の父
14オウケンブルースリ牡717父の父
20133トーセンジョーダン牡711父の父
4アドマイヤラクティ牡54父の母の父
20142ジャスタウェイ牡53父の母の父
5ハープスター牝32祖母の父
7ワンアンドオンリー牡38父の母の父
14トーセンジョーダン牡816父の父
20153ラブリーデイ牡51祖母の父
4ジャングルクルーズセン617父の父
7ワンアンドオンリー牡413父の母の父
9ダービーフィズ牡518父の父
15カレンミロティックセン716父の母の父
16アドマイヤデウス牡410父の母の父
20163シュヴァルグラン牡46父の母の父
8ワンアンドオンリー牡514父の母の父
17フェイムゲームセン615父の母の父
20171シュヴァルグラン牡55父の母の父
16ワンアンドオンリー牡615父の母の父

 ○スワーヴリチャードはサンデーサイレンスUSA系トニービンIRE派の第一人者といえるハーツクライの産駒。上半期に本馬の大阪杯と、米国のヨシダによるターフクラシック-G1勝ちがあったハーツクライ産駒は、下半期にはヨシダによる今度はダートG1のウッドウォードS-G1制覇とリスグラシューによるエリザベス女王杯-G1勝ちがあった。3頭とも2014年生まれの4歳世代であり、クラシックで勝てずに終わったぶんだけ古馬になって飛躍するあたりは父の蹄跡をたどっているようでもある。アンブライドルズソング産駒の母ピラミマUSAは米国産の輸入競走馬で未勝利だが、ジェネラルミーティング産駒の祖母キャリアコレクションUSAはソレントS-G2、ランダルースS-G2など北米5勝を挙げ、BCジュヴェナイルフィリーズ-G1で2着となった活躍馬。母はミスタープロスペクター系×シアトルスルー系という相性の良い組み合わせによる北米血統で、ヨシダの母の父カナディアンフロンティアがミスタープロスペクター系ゴーンウエスト×シアトルスルーの構成となっているのに似る。

 △ガンコの父ナカヤマフェスタは今年1年種付けを休んでいたが、この秋に来春からの種牡馬復帰が決まった。宝塚記念-G1では圧倒的人気のブエナビスタを破り、凱旋門賞-G1では日本調教馬として勝利にもっとも近づいた(アタマ差)馬であることをみんな思い出すべきですな。母の父シングスピールIREは1996年のこのレースの勝ち馬で、祖母の父ポリッシュプレセデントはその翌年の勝ち馬ピルサドスキーIREの父ということでジャパンC-G1には縁の深い血を並べている。父系曽祖父サンデーサイレンスUSAとシングスピールIREの母グローリアスソングを経由したヘイロー4×4の近交となるが、シングスピールIRE牝馬にサンデーサイレンスUSA系種牡馬の組み合わせからは優駿牝馬勝ち馬シンハライトが出ている。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2018.11.25
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