2018阪神ジュベナイルフィリーズ


名牝は名門牝系から

 チャンピオンズカップ-G1に勝ったルヴァンスレーヴは祖母の父がティンバーカントリーUSA。これによりティンバーカントリーUSAは父としてアドマイヤドン、母の父としてコパノリッキー、そして祖母の父としてルヴァンスレーヴと3つの立場それぞれによってダートのチャンピオンを出すことに成功した。サンデーサイレンスUSAあたりだと簡単に達成しそうなことで、実際に今年のマイルチャピオンシップ-G1に勝ったステルヴィオは祖母の父がサンデーサイレンスUSAであるが、サンデーサイレンスUSAほどの大成功を収めたわけでもなかったティンバーカントリーUSAの名がこのように母系に潜んで確実に残っていきそうなのは趣味的記録かもしれないが、静かな快挙と呼べるではないだろうか。ティンバーカントリーUSAの出身牝系は20世紀終盤の最も華やかなファミリーのひとつフォールアスペン。ドバイワールドカップ-G1などに勝った名馬ドバイミレニアムの出現がピークだったのは事実だが、次のミレニアムに入ってもレジネッタが桜花賞を12番人気で勝つなど、名門の活力はまだ失われていないようだ。
  ◎ローゼンクリーガーは4代母がフォールアスペン。そこにサドラーズウェルズ、ダルシャーンと欧州的ニックスを重ねられたのが祖母ダイアゴネルIREで、フジキセキを通じてサンデーサイレンスUSAの血が導入されたのが母クエルクス。祖母は仏1勝、母は芝1400mの新馬戦の1勝のみと、これまでのところは血統的ポテンシャルが競走成績に反映されていない。自身も7月にデビュー勝ちを果たしたにもかかわらず、2勝目を挙げたのが11月に入ってからの4戦目までずれ込んだあたりで、早熟な天才少女とは呼べない成績となったのは確か。ただ、レジネッタは新馬戦で10着に敗れて、2勝目を挙げたのは11月18日(本馬と同じだ)、エクリプス賞最優秀2歳牡馬となるティンバーカントリーUSAも初勝利までに3戦を要したし、ドバイミレニアムも2歳デビューはシーズン終盤の10月28日だった。愛1000ギニー馬メーサーフも2歳時は4戦して(4)(1)(3)(3)着の成績に終わっている。軌道に乗るまで少し時間がかかる一族ではあるのかもしれない。父ノヴェリストIREは2歳戦を8月のデビュー戦の勝利で終え、3歳春に3連勝で独ダービー-G1に臨んで2着。バーデン大賞-G1でデインドリームの4着のあと、イタリアでジョッキークラブ大賞-G1に勝ち初めてのG1を手に入れた。4歳時はバーデンバーデンでのG2勝ちでスタートすると、フランスでサンクルー大賞-G1に勝ち、イギリスでキングジョージ6世&クイーンエリザベスS-G1を2:24.60のレコード勝ち。続くバーデン大賞-G1も勝って凱旋門賞-G1に備えたが、直前の熱発で回避し、引退して日本に渡って種牡馬となった。初年度産駒は2歳戦で11頭が11勝を挙げて1億5296万円を稼いだが、2年目の現2歳世代は12月3日現在で12頭が14勝を挙げ、既に1億7290万円の賞金を稼いで昨年を上回る成績を残している。競走成績は欧州型ステイヤーであり、ノーアテンションFRと同じ牝系にモンズーン×ラグナスというドイツ2400m型血統は、実際のところ2歳戦向きとはいいがたい。それでも、ウオッカ以来のこのレースの伝統として、2歳女王というよりは中長距離のクラシック馬を探すという性格が強くある。そうであれば、たとえば優駿牝馬をイメージしつつ、この馬を狙う手も十分に現実的だと思える。


名門フォールアスペン系の豪華な40年
FALL ASPEN(USA) フォールアスペン(牝、栗毛、1976年、父Pretense−母Change Water、母の父
      Swaps)主な勝ち鞍:メイトロンS-G1
  NORTHERN ASPEN(USA) ノーザンアスペン(牝、鹿、1982、Northern Dancer)ゲイムリーH-G1、
  |   アスタルテ賞-G2
  | マクダヴィアUSA Mocdavia(USA)(牝、栗、1992、ブラッシングジョンUSA)
  |   アスペンリーフ(牝、鹿、1997、サンデーサイレンスUSA)
  |     レジネッタ(牝、鹿、2005、フレンチデピュティUSA)桜花賞
  ELLE SEULE(USA) エルスール(牝、栗、1983、Exclusive Native)アスタルテ賞-G2
  | Only Seule(USA) オンリースール(牝、栗、1988、Lyphard)
  | | OCCUPANDISTE(IRE) オキュパンディスト(牝、鹿、1993、Kaldoun)フォレ賞-G1、モーリス
  | |   ドギース賞-G1
  | MEHTHAAF(USA) メーサーフ(牝、鹿、1991、Nureyev)愛1000ギニー-G1、セレブレイションマ
  | | イル-G2
  | ELNADIM(USA) エルナディム(牡、黒鹿、1994、Danzig)ジュライC-G1、ダイアデムS-G2
  COLORADO DANCER(IRE) コロラドダンサー(牝、黒鹿、1986、Shareef Dancer)ポモーヌ賞-G2
  | DUBAI MILLENNIUM(GB) ドバイミレニアム(牡、鹿、1996、Seeking the Gold)ドバイワールド
  | | C-G1、プリンスオブウェールズS-G1、クイーンエリザベスU世S-G1、ジャックルマロワ賞-G1
  | Chaquiras(USA) チャキラス(牝、栗、2004、Seeking the Gold)
  |   THREADING(IRE) スレッディング(牝、鹿、2015、Exceed and Excel)ロウザーS-G2
  Dance of Leaves(GB) ダンスオブリーヴス(牝、鹿、1987、Sadler's Wells)
  | CHARNWOOD FOREST(IRE) チャーンウッドフォリスト(牡、黒鹿、1992、ウォーニングGB)
  | | クイーンアンS-G2、チャレンジS-G2
  | MEDAALY(GB) メダーリー(牡、芦、1994、Highest Honor)レーシングポストトロフィー-G1
  | ダイアゴネルIRE Diagonale(IRE)(牝、鹿、2000、Darshaan)
  |   クエルクス(牝、黒鹿、2008、フジキセキ)
  |     ローゼンクリーガー(牝、青、2016、ノヴェリストIRE)
  Sheroog(USA) シェルーグ(牝、黒鹿、1988、Shareef Dancer(USA)
  | KABOOL(GB) カブール(牡、鹿、1995、グルームダンサーUSA)ロンポワン賞-G2、ギヨームドル
  | | ナーノ賞-G2
  | Gorband(USA) ゴルバンド(牝、栗、1999、Woodman)
  |   EUROPA POINT(IRE) ユーロパポイント(牝、栗、2007、ロックオブジブラルタルIRE)チャンピ
  |     オンズチャレンジ-G1、エンプレスクラブS-G1
  HAMAS(IRE) ハマス(牡、黒鹿、1989、Danzig)ジュライC-G1
  FORT WOOD(USA) フォートウッド(牡、鹿、1990、Sadler's Wells)パリ大賞-G1
  ティンバーカントリーUSA TIMBER COUNTRY(USA)(牡、栗、1992、Woodman)プリークネスS
  | -G1、BCジュヴェナイル-G1、シャンペンS-G1
  BIANCONI(USA) ビアンコニ(牡、黒鹿、1995、Danzig)ダイアデムS-G2

 ○クロノジェネシスは祖母インディスユニゾンの父がサンデーサイレンスUSAで、母クロノロジストの父がクロフネUSA、そして父が凱旋門賞馬バゴFRという配合。3代母がラスティックベルUSAなので、母は2歳王者フサイチリシャール、今回の出走馬でもあるビーチサンバと同じ構成の血統となる。バゴFRは初年度産駒が3歳春を迎えるとオウケンサクラが桜花賞-G1の2着となり、秋にはビッグウィークが菊花賞-G1を制した。その後も重賞級は出るものの、初年度のような大物は出なくなっている。それでもニアルコス家の主流牝系に名馬ナシュワンという血統はいつでも大物を出して不思議のないもので、母がクロフネUSA×サンデーサイレンスUSAという日本的万能血統であれば、1600mから2400mまで、可能性は大きく広がっている。

 ▲ダノンファンタジーは母がライフフォーセールARGがアルゼンチン血統だから、大まかな括りではサトノダイヤモンドやマカヒキと同じディープインパクト×南米血統。母はセレクシオンデポトランカス-G1(ダ2000m、3歳牝)、ブエノスアイレス州大賞-G1(ダ2200m、3歳)の2つのG1に勝った名牝。その父ノットフォーセールはブエノスアイレス市大賞-G1(ダ1000m)の勝ち馬で、パレードマーシャルを経てカロに至る。祖母の父スキーチャンプはスキーキャプテンUSAの兄だから、日本に馴染みの深い血統ではある。

 △ベルスールの父スウェプトオーヴァーボードUSAはリッジマンがステイヤーズS-G2を制してアイビスサマーダッシュ-G3のパドトロワと合わせて産駒の日本最短&最長グレード制覇を達成。母の父サンデーサイレンスUSAは代表産駒のレッドファルクスと同じ。牝系からは“キングジョージ”のヴィミーが出る。


競馬ブックG1特集号「血統をよむ」2018.12.9
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