2018天皇賞・春


長距離戦線の権謀術数

 サンデーサイレンスUSA系ディープインパクトが種牡馬ランキングの1位を占め、キングマンボ系キングカメハメハが2位という2012年体制はずっと続いて今年で7年目に入った。これはヘイロー直仔サンデーサイレンスUSA系と、ミスタープロスペクター系が日本の2大勢力である現状を示している。種牡馬マキアヴェリアンは父がミスタープロスペクターで母の父がヘイロー。2010年代の日本でインブリードを配合の柱において考える場合には要とも楔ともなりうる重要なキャラクターといえる。競走馬としてのマキアヴェリアンは同じミスタープロスペクター直仔で本邦輸入種牡馬のジェイドロバリーUSAと同期で、デビュー戦のリステッド・ヤコウレフ賞でジェイドロバリーUSAを破ると、モルニ賞-G1、サラマンドル賞-G1とG1を連勝して2歳戦を終え、3歳4月のジェベル賞まで4連勝を記録した。その後は英2000ギニー-G1、愛2000ギニー-G1ともチロルに敗れ、夏のモーリスドギース賞-G1・5着を最後に引退、1991年から種牡馬となった。産駒からはプールデッセデプーラン-G1(仏2000ギニー)のヴェットーリのようなマイラーからカドラン賞-G1のインヴァマーク、そしてドバイワールドカップ-G1のストリートクライまでさまざまな産駒を送り、ミスタープロスペクター系の欧州での発展の起点となった。
 母の父としても極めて優秀で20頭を超えるG1勝ち馬を送っているが、サンデーサイレンスUSA王国の日本では特に存在価値が高い。下表に示した通りドバイワールドC-G1とドバイターフ-G1の最高レベルの競走を含めG1には5頭で9勝を挙げている。中でもハルーワスイートの産駒はヴィルシーナとヴィブロス、◎シュヴァルグランの3きょうだいで5つのG1に勝っている。ここで思い出すべきはヴィルシーナの2度目のヴィクトリアマイル-G1の勝利。前年のヴィクトリアマイル-G1勝ちのあと6連敗。直前の阪神牝馬S-G2で11着と敗れていたこともあって、18頭立て11番人気だった。その低評価を覆す鮮やかな逃げ切りによる連覇だった。ということは、シュヴァルグランの評価に当たっては、前走の大敗よりも、キタサンブラックを追って2着となった昨年のこのレース、またはキタサンブラックを差し切った昨年のジャパンC-G1を見れば良いということになる。シュヴァルグランは4代母グローリアスソングがカナダの年度代表馬となった名牝で、これがヘイローの娘。マキアヴェリアンの母クドフォリーはやはりヘイローの娘でオマール賞-G3に勝ちマルセルブサック賞-G1・3着。マキアヴェリアンのほかにも、ジャックルマロワ賞-G1のイグジットトゥノーウェア、モルニ賞-G1のクドジェニ、プールデッセデプーリッシュ-G1(仏1000ギニー)2着のハイドロカリド、グランクリテリウム-G1のウェイオブライト、凱旋門賞-G1のバゴFR、マルセルブサック賞-G1のデネボラUSA、わが国でもセントライト記念のシンコウカリドやアンタレスSのフィフティーワナーなど子孫は大活躍している。そして父系のサンデーサイレンスUSAと、このようにヘイローの最良の産駒ばかりを経由してのヘイロー3×4×5には高級感とデザイン的な美しさがある。ここ一番ではこのような良血ばかりを集めた底力が物をいうのではないか。


母の父マキアヴェリアンの成功
レース馬場距離勝ち馬性齢人気単勝
2005京王杯SCG21400アサクサデンエンシングスピールIRE牡6618.2
2005安田記念G11600アサクサデンエンシングスピールIRE牡6712.3
2006ニュージーランドT1600マイネルスケルツィグラスワンダーUSA牡311.9
2006小倉記念2000スウィフトカレントサンデーサイレンスUSA牡549.9
2007京都金杯G31600マイネルスケルツィグラスワンダーUSA牡4712.2
2009ラジオNIKKEI杯2歳S2000ヴィクトワールピサネオユニヴァース牡211.6
2010弥生賞G22000ヴィクトワールピサネオユニヴァース牡311.7
2010皐月賞G12000ヴィクトワールピサネオユニヴァース牡312.3
2010有馬記念G12500ヴィクトワールピサネオユニヴァース牡328.4
2011アーリントンCG31600ノーザンリバーアグネスタキオン牡348.0
2011中山記念G21800ヴィクトワールピサネオユニヴァース牡411.4
2011ドバイワールドCG1AW2000ヴィクトワールピサネオユニヴァース牡4--
2011エルムSG31700ランフォルセシンボリクリスエスUSA牡511.6
2012クイーンCG31600ヴィルシーナディープインパクト牝324.7
2012ダイオライト記念2400ランフォルセシンボリクリスエスUSA牡633.9
2012プロキオンG31400トシキャンディバブルガムフェロー牝612119.2
2013ヴィクトリアマイルG11600ヴィルシーナディープインパクト牝413.1
2013レパードSG31800インカンテーションシニスターミニスターUSA牡313.3
2013浦和記念2000ランフォルセシンボリクリスエスUSA牡737.2
2013カペラSG31200ノーザンリバーアグネスタキオン牡5611.2
2014佐賀記念2000ランフォルセシンボリクリスエスUSA牡834.6
2014東京スプリント1200ノーザンリバーアグネスタキオン牡611.5
2014ヴィクトリアマイルG11600ヴィルシーナディープインパクト牝51128.3
2014さきたま杯1400ノーザンリバーアグネスタキオン牡611.8
2014東京盃1200ノーザンリバーアグネスタキオン牡611.4
2014みやこSG31800インカンテーションシニスターミニスターUSA牡425.5
2015平安SG31900インカンテーションシニスターミニスターUSA牡546.2
2015さきたま杯1400ノーザンリバーアグネスタキオン牡712.6
2016シンザン記G31600ロジクライハーツクライ牡3822.5
2016阪神大賞典G23000シュヴァルグランハーツクライ牡413.0
2016秋華賞G12000ヴィブロスディープインパクト牝336.3
2016アルゼンチン共和国杯G22500シュヴァルグランハーツクライ牡423.9
2017ドバイターフG11800ヴィブロスディープインパクト牝458.8
2017マーチSG31800インカンテーションシニスターミニスターUSA牡71025.4
2017白山大賞典2100インカンテーションシニスターミニスターUSA牡712.0
2017武蔵野SG31600インカンテーションシニスターミニスターUSA牡7613.9
2017ジャパンCG12400シュヴァルグランハーツクライ牡5513.3

 ○トーセンバジルはハービンジャーGB初年度産駒の無冠の大器として6歳を迎えた。母のケアレスウィスパーはフジキセキ産駒で関東オークス2着。祖母エヴリウィスパーの産駒トーセンジョーダンは天皇賞(秋)-G1に勝ったほか、春も6歳時の2012年に2着がある。孫トーセンスターダムはオーストラリアに渡って今年エミレーツS-G1とトゥーラクH-G1の2つのG1に勝って種牡馬入りと、クラフティワイフUSAに遡る名牝系は近年ますます勢いを増しているようにも見える。

 ▲クリンチャーはハービンジャーGBと同じ牝系で、3代母ダスティダラーはサンチャリオットS-G2の勝ち馬。そして母の父としてのブライアンズタイムは2012年に14番人気でこのレースに勝ったビートブラック、2009年の菊花賞馬スリーロールスを送っていて、超長距離部門でもさすがの実績がある。ダンチヒ4×3よりもリボー直仔の大物グロースターク5×4の近交の方が恐らく重要で、これがより強い相手、よりタフな条件で力を発揮する傾向につながっているのだろう。

 2013年フェノーメノ、2014年フェノーメノ、2015年ゴールドシップと3連覇したのがステイゴールド産駒なら、2012年オルフェーヴルや2013年、2014年ゴールドシップが人気を裏切ってずっこけているのもステイゴールド産駒。そういった意味でもステイゴールド直仔レインボーラインとステイゴールド系ナカヤマフェスタ産駒のガンコの扱いには慎重な判断が必要となる。4代母アンナパオラが独オークス馬で、そこに欧州の名馬を重ねた△ガンコにとっては、初の3200mがむしろ楽しみとなる。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2018.4.29
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