2018朝日杯フューチュリティS


種牡馬新時代の息吹

 2011年の2歳種牡馬ランキングは前年に初登場1位となったディープインパクトが首位を守り、2位にひとつ年長の新種牡馬ダイワメジャーが入った。2012年のディープインパクト産駒には2歳重賞勝ち馬がいなかったが、首位を維持して2位もダイワメジャー。2013年はディープインパクト首位は変わらず、3年目のダイワメジャーが順位を落とし8位に終わる。2014年もまたディープインパクトが6億4453万円の収得賞金で首位となり、ダイワメジャーは4位に浮上。2015年はダイワメジャーが6億6843万円を稼ぎ出して2位ディープインパクトを6600万円あまり上回った。2016年にはディープインパクトが首位を奪還し、ダイワメジャーが2位。先行するダイワメジャー、終盤で追い込むディープインパクトという2歳種牡馬ランキングの様式美が完成したのがこの年だった。しかし、何でも完成してピークを迎えると、同時に下り坂に向かうもので、2017年には2強のランデブーが3年ぶりに崩れた。7億2818万円の自己ベストを更新したディープインパクトには遠く及ばなかったが、ランキング初登場で2位に食い込んだのは新種牡馬ロードカナロアだった。ダイワメジャーは5位に順位を下げてしまった。これが新体制といえるのかどうかはまだ分からないが、今年ここまでの2歳種牡馬ランキングの上位争いは以下の通り。7、8、9月と首位を走っていたロードカナロアを、10月の2歳重賞シーズンに入って本領を発揮したディープインパクトが抜いて1億6000万円あまりの差をつけた。3位にはダイワメジャーが盛り返している。先週の阪神ジュベナイルフィリーズ-G1を産駒のダノンファンタジーが勝ったことで、ディープインパクトがセーフティリードを築いた形となっていて、朝日杯FS-G1の1着賞金7000万円、更にホープフルS-G1の1着賞金7000万円を上乗せしても逆転は難しい。とはいえ、JRA競馬だけで残り3週、72レースの本賞金を合計すると10億8081万円にもなるので、セーフティリードなどあってないようなものかもしれない。
  このように、今回の一戦は牝馬対牡馬の構図以上に緊迫した2歳リーディング争いの代理戦争の色を帯びている。あとから見ると、流れが変わったのはここだったのだなあというポイントとなるレースかもしれない。ひとつ上の世代のアーモンドアイとステルヴィオで既に5つのG1勝ちを果たした種牡馬ロードカナロアには流れを変える力があるとの見立てでファンタジスト。母の父はディープインパクトなので、ルーラーシップ×ディープインパクトの菊花賞馬キセキ同様、キングカメハメハ×サンデーサイレンスUSAを1世代進めた近未来的(現在だが)な配合。母のディープインアスク、デインヒルUSA産駒の祖母マーズプリンセスともに未勝利。ロベルト産駒の3代母ディアーミミUSAも英未勝利だが、その子孫にはブリーダーズCジュヴェナイル-G1のミッドシップマン、ウッドメモリアルS-G1のフロステッドらの米G1勝ち馬がおり、4代母の産駒にフォレ賞-G1のサルス、5代母の産駒に伊オークス-G1のカーノウバがいる。血統表3代目に並ぶ種牡馬はキングマンボ、ストームキャット、サンデーサイレンスUSA、デインヒルUSAと超一流ばかり。小倉2歳S勝ちの牡馬としてはメイショウボーラー以来、京王杯2歳S勝ち馬としてはグラスワンダーUSA以来の大物ではないだろうか。


熾烈な2歳リーディングサイアーの首位争い
順位1.ディープインパクト2.ロードカナロア3.ダイワメジャー
生年等鹿、2002年3月25日生鹿、2008年3月11日生栗、2001年4月8日生
父馬サンデーサイレンスUSAキングカメハメハサンデーサイレンスUSA
種付料2500万円500万円500万円
種付頭数261276120
血統登録15419587
出走頭数859549
出走回数175204141
勝利頭数413022
勝利回数473527
収得賞金6億1275万円4億5200万円3億1927万円
重賞勝ち産駒(勝ち鞍)ダノンファンタジー(阪神ジュベナイルフィリーズG1、ファンタジーSG3)、シェーングランツ(アルテミスSG3)、グランアレグリア(サウジアラビアロイヤルCG3)ファンタジスト(京王杯2歳SG2、小倉2歳SG3)、ケイデンスコール(新潟2歳SG3)アドマイヤマーズ(デイリー杯2歳SG2)
(12月11日現在、数値は2016年生世代、JBISサーチによる)

 ○ケイデンスコールは母の父がやはりサンデーサイレンスUSA系のハーツクライ。母の兄弟に中山記念のバランスオブゲーム、アルゼンチン共和国杯-G2のフェイムゲームがおり、3代母ヴェルヴェットサッシュはマイルチャンピオンシップのサッカーボーイの全妹であり、ステイゴールドの母ゴールデンサッシュの全姉でもある。ほかにジャパンカップ-G1のショウナンパンドラや神戸新聞杯のドリームパスポート、ローズSのレクレドール、京成杯-G3のベルーフ、新潟2歳S-G3のフロンティアなど多くの活躍馬が続々と現れる名門牝系。父にはヒズマジェスティが潜み、母にはトムロルフと、両親からリボーの血を受けているあたりは大舞台が似合う。対ディープインパクトという点では逆転の要素を多く持った血統ともいえる。ただ、この牝系にハーツクライがかかった母の血からは、本当に良くなるのはもう少し先とも考えられる。

 ディープインパクトは10月以降の2歳重賞8つのうち4をすべて牝馬によって勝ってしまった。例年以上のラストスパートで、あと1億1544万円を稼げば昨年の自己ベストを更新し、1億6849万円ならサンデーサイレンスUSAが2004年に記録した2歳産駒の収得賞金レコードを塗り替える。▲グランアレグリアは母タピッツフライUSAがジャストアゲームS-G1とファーストレディS-G1の芝8Fの米G1に2勝している。母はタピット産駒だが、芝で逃げ切ったりもしたあたりが珍しい。そこは祖母の父マーリンがアーリントンミリオン-G1などに勝った芝馬だったことも影響しているのかもしれない。母の父の系統はプルピット〜エーピーインディと遡り、このあたりは皐月賞馬アルアインに通じる成功例。

 キングカメハメハ系にはロードカナロアとはまた違った個性を持つルーラーシップがおり、そのあとには大物ドゥラメンテも控えていて父系としての伸びゆく力はサンデーサイレンスUSA系に対抗できるもの。ルーラーシップ産駒の△ニホンピロヘンソンはアストニシメントGBに遡る小岩井牝系。ブレイヴェストローマンUSA産駒の祖母ニホンピロクリアは3勝のほか小倉3歳S3着があり、その子孫からはマイラーズCのニホンピロプリンスや南部杯のニホンピロジュピタ、小倉記念のニホンピロレガーロなど多くの活躍馬が出ている。


競馬ブックG1特集号「血統をよむ」2018.12.16
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