2018有馬記念


壁を突破するカメハメハ王

 JRAのオフィシャルレーティングを3歳以上の芝G1について抜粋してみると、今年最も高い評価を受けたのはアーモンドアイだった。ジャパンカップ勝ちの122に牝馬減量のぶんの2キロ=4点を加えると126となり、天皇賞(秋)-G1で123を得たレイデオロを抑えて実質首位となる(下表参照)。一番強いのが3歳牝馬という年にあって、しかも、それが勝ち逃げしたあとのグランプリ。このようなケースでは多くの馬にチャンスが生じる。
  下半期の競馬が進むと、上半期の印象は薄くなりがちで、1回か2回の凡走でもあれば、強かった春の印象は消えてしまうこともある。それを数字に残しておいてくれるのがレーティングの役割のひとつ。◎ミッキーロケットは宝塚記念-G1で香港の強豪ワーザーNZを退けてG1初勝利。早熟なキングカメハメハ産駒にあって5歳でG1級初勝利となったのはジャパンカップダート-G1のベルシャザール、宝塚記念-G1のラブリーデイに続くもの。ラブリーデイはその後、天皇賞(秋)-G1にも勝っている。有馬記念-G1でのキングカメハメハ産駒は2014年トゥザワールドの2着、2010年、2011年トゥザグローリーと、2012年ルーラーシップの3着があるのみで、のべ14頭が4着以下に終わっている。キングマンボ直仔のアメリカンボスUSAが3回出走して(6)(2)(13)着、キングマンボ系キングズベスト産駒のエイシンフラッシュも3回出走して(7)(2)(4)着と人気薄での好走もあるのだが、勝つところまでは至っていない。同じ父のレイデオロにもいえることだが、勝利までのあと少しを補う何かが必要ということだ。ミッキーロケットの場合、父系のキングマンボと3代母の父ミスワキ経由のミスタープロスペクター3×5はともかく、ヌレエフ4×4、さらにカナダのE.P.テイラー・ブランドのノーザンダンサー直仔トライマイベストとニジンスキーが4代目に並ぶ。これらノーザンダンサーの血はヌレエフ4×3のトゥザ兄弟に通じるもの。それでもやはりノーザンダンサーの血で争覇圏まで押し上げてからのあと少しが足りない。しかし、それは、4代目のコジーン、5代目に並ぶミルリーフ、リヴァーマン、そしてラウンドテーブルといったナスルーラとプリンスキロの組み合わせによる瞬発力で補いがつく。宝塚記念-G1の4角で抜け出して最後までワーザーNZを相手に貯金を守ったあの機敏な脚を生かせる舞台といえるのではないだろうか。


2018年 芝GTレースのレーティング
日付レース場所距離1着馬斤量秒差2着馬斤量秒差3着馬斤量秒差4着馬斤量
3/25高松宮記念中京1200ファインニードル571160.0レッツゴードンキ551110.1ナックビーナス551100.2ダンスディレクター57113
4/1大阪杯阪神2000スワーヴリチャード571210.1ペルシアンナイト571190.2アルアイン571180.4ヤマカツエース57115
4/8桜花賞阪神1600アーモンドアイ551150.3ラッキーライラック551110.4リリーノーブル551100.7トーセンブレス55106
4/15皐月賞中山2000エポカドーロ571180.3サンリヴァル571140.6ジェネラーレウーノ571110.6ステルヴィオ57111
4/29天皇賞(春)京都3200レインボーライン581180.0シュヴァルグラン581170.1クリンチャー581160.2ミッキーロケット58115
5/6NHKマイルC東京1600ケイアイノーテック571140.0ギベオン571130.0レッドヴェイロン571130.2ミスターメロディUSA57111
5/13ヴィクトリアマイル東京1600ジュールポレール551120.0リスグラシュー551110.0レッドアヴァンセ551100.1アエロリット55109
5/20優駿牝馬東京2400アーモンドアイ551150.3リリーノーブル551110.6ラッキーライラック551080.9レッドサクヤ55105
5/27東京優駿東京2400ワグネリアン571190.1エポカドーロ571170.2コズミックフォース571160.2エタリオウ57116
6/3安田記念東京1600モズアスコットUSA581180.0アエロリット561130.1スワーヴリチャード581160.2サトノアレス58115
6/24宝塚記念阪神2200ミッキーロケット581200.0ワーザーNZ581190.5ノーブルマーズ581140.5ヴィブロス56110
9/30スプリンターズS中山1200ファインニードル571160.0ラブカンプー531110.1ラインスピリット571140.2ダイメイプリンセス55109
10/14秋華賞京都2000アーモンドアイ551150.2ミッキーチャーム551110.4カンタービレ551090.5サラキア55108
10/21菊花賞京都3000フィエールマン571170.0エタリオウ571160.2ユーキャンスマイル571140.4ブラストワンピース57113
10/28天皇賞(秋)東京2000レイデオロ581230.2サングレーザー581200.2キセキ581200.4アルアイン58118
11/11エリザベス女王杯京都2200リスグラシュー561130.0クロコスミア561120.5モズカッチャン561080.5レッドジェノヴァ56108
11/18マイルチャンピオンシップ京都1600ステルヴィオ561180.0ペルシアンナイト571170.2アルアイン571140.2カツジ56114
11/25ジャパンC東京2400アーモンドアイ531220.3キセキ571220.9スワーヴリチャード571170.9シュヴァルグラン57117
R=レーティング、JRAの重賞・オープン特別競走レーティングから抜粋、秒差は勝ち馬からの差、牝馬(斜体)はセックスアローワンス4点を加える

 同じキングカメハメハ産駒の○レイデオロには母の父シンボリクリスエスUSAという強い味方がついている。ロベルト系がこのレースでサンデーサイレンスUSA系に優位を保っていたのは、中期的には調子のピークがシーズン末に近い傾向があるためで、短期的にはサンデーサイレンスUSA系が華麗な切れ味を披露し終わったあとにまだ渋太く伸びることができたため。2003年有馬記念でのシンボリクリスエスUSAの9馬身差圧勝は2013年のオルフェーヴルと並んで有馬記念史上の双璧といえる大パフォーマンスだった。3代母ウインドインハーヘアIREがディープインパクトの母という牝系にミスタープロスペクター×ロベルトのニックスを重ねた明快な良血でもある。

 このレースにおけるステイゴールド産駒は2009年ドリームジャーニー、2011年オルフェーヴル、2012年ゴールドシップ、2013年オルフェーヴルが勝ったほか、2012年には10番人気のオーシャンブルーが2着となったこともある。実際には、ステイゴールド産駒が有馬記念-G1に強いというよりは、一時期に集中してステイゴールド産駒に天才児が現れたと考えるべきかもしれない。しかし、今年は春にレインボーラインの天皇賞-G1制覇があり、ゴールドシップの天皇賞(春)-G1以来3年ぶりの牡馬のG1勝ちとなったので、少し流れは戻ったといえる。ステイゴールド産駒の▲パフォーマプロミスは母が優駿牝馬のシルクプリマドンナの半妹で、その父タニノギムレットはブライアンズタイムUSAを経てロベルトに至る有馬記念血統。祖母バウンドトゥダンスUSAはノーザンダンサー直仔で、瞬発力のサンデーサイレンスUSA、力のノーザンダンサーとすると、両者の組み合わせはこのレースで大きな力を発揮する。3代母トゥルーリーバウンドは2歳時にアーリントンワシントンラッシーS-G2、3歳時はアシュランドS-G2と、ともにG1に近いG2に勝った。4代母ナタシュカの子孫には世界中で活躍馬が出ており、先週9番仔ゼルクが初勝利を挙げた名牝ヘヴンリーロマンスもこの一族。

 2004年のタップダンスシチーUSAは凱旋門賞-G1・17着から有馬記念に臨んで2着となった。海外遠征は負けたらお金にならないが、負けても実になることはある。△クリンチャーはキングジョージ6世&クイーンエリザベスSのハービンジャーGBと同じ牝系で、母の父はこのレースに実績のあるブライアンズタイムUSA。父はサンデーサイレンスUSA的な華麗な瞬発力には欠けるが、チーフズクラウン、グロースターク5×4と、起爆剤さえあれば優れた力を発揮する血統構成。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2018.12.23
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