2018天皇賞(秋)


ノーザンテーストCANは奇跡を起こす

 菊花賞-G1のフィエールマンは7番人気での勝利だった。父はディープインパクト。今をときめくリーディングサイアーの産駒であるにもかかわらず、このような波乱になるのは実はそう珍しくなく、実際に今年のディープインパクト産駒のG1勝利はNHKマイルC-G1のケイアイノーテック6番人気に始まり、ヴィクトリアマイル-G1のジュールポレール8番人気、日本ダービー-G1のワグネリアン5番人気と、ここまでの4勝すべての単勝払い戻し金額が4桁だった。サンデーサイレンスUSA時代にも、この天皇賞(秋)を14番人気で勝ったヘヴンリーロマンスを筆頭に、スズカマンボの天皇賞(春)13番人気、皐月賞のダイワメジャー10番人気、有馬記念のマツリダゴッホ9番人気など、なかなか強烈な例が並ぶ。逆にいえば、そのように人気薄でも大レース出走馬がいる層の厚さ、そして人気薄でもここ一番で走る産駒の底力がリーディングサイアーたるゆえんともいえるだろう。個人的な記憶の中で最大の波乱というと単勝1.4倍の圧倒的な支持を得たシンボリルドルフが2着に敗れた第92回天皇賞(秋)となる。勝ったのは13番人気のギャロップダイナで単勝は8820円だった。その勝利のおかげもあって、父のノーザンテーストCANは1985年に4年連続のリーディングサイアーの座に就くことになる。その後、リアルシャダイUSA、トニービンIRE、サンデーサイレンスUSAといった新勢力の波状攻撃にも種牡馬引退翌年にあたる2000年までベストテンに踏みとどまって抵抗したノーザンテーストCANは2004年に大往生を遂げるが、この天皇賞(秋)-G1では今に至っても無視できない影響力を保っている。当欄の数少ない愛読者におかれては下表は以前にも見たような錯覚を持たれるかもしれないが、昨年の1着と3着のキタサンブラックとレインボーラインによって、ノーザンテーストCAN黒幕説が更新されている点に注目いただきたい。

 ルーラーシップは祖母ダイナカールの父がノーザンテーストCANなので、その産駒キセキとダンビュライト、そして自身の祖母の父がノーザンテーストCANのサクラアンプルールの3頭が穴として怪しい。穴でないかもしれないが、◎キセキは母の父がリーディングサイアー・ディープインパクトでもあり、特に怪しい。母のブリッツフィナーレは不出走で繁殖に上がり、本馬が3番仔。祖母のロンドンブリッジはファンタジーSに勝ち、桜花賞で2着となった活躍馬で、産駒ダイワエルシエーロは優駿牝馬に、ビッグプラネットはアーリントンC、グレーターロンドンは中京記念に勝った。3代母オールフォーロンドンUSAの産駒には名古屋優駿のナリタオンザターフがおり、4代母の娘オフィサーズボールはソロリティS-G1に勝った。ダイワエルシエーロはサンデーサイレンスUSA産駒、グレーターロンドンはディープインパクト産駒なので、特にサンデーサイレンスUSA系の血が入ることで能力が上積みされる牝系といえる。そこにキングカメハメハ×トニービンIRE×ノーザンテーストCANの非サンデーサイレンスUSA・オールスターともいうべき父ルーラーシップを重ねた配合は特に菊花賞-G1のような超長距離向きというより万能型と捉えた方が良い。


ノーザンテーストCAN影響下の30年
年度着順人気馬名性齢ノーザンテーストCAN備考
1985113ギャロップダイナ牡5母の父エルセンタウロARG
198726レジェンドテイオー牡4母の父Royal Palace
198839レジェンドテイオー牡5母の父Royal Palace
198933メジロアルダン牡4父アスワンの父母の父ネヴァービートGB
199025メジロアルダン牡5父アスワンの父母の父ネヴァービートGB
199135カミノクレッセ牡4父アンバーシャダイの父母の父コインドシルバーUSA
1992111レッツゴーターキン牡5母の父父ターゴワイスUSA
199225ムービースター牡6母の父父ディクタスFR
199512サクラチトセオー牡5母の父父トニービンIRE
199712エアグルーヴ牝4母の父父トニービンIRE
199824ステイゴールド牡4祖母の父父サンデーサイレンスUSA
1999212ステイゴールド牡5祖母の父父サンデーサイレンスUSA
199935エアジハード牡4祖母の父父サクラユタカオー
200035トゥナンテ牡5母の父父サクラユタカオー
200222ナリタトップロード牡6父サッカーボーイの母の父母の父Affirmed
200325ツルマルボーイ牡5母の父サッカーボーイの母の父父ダンスインザダーク
200439アドマイヤグルーヴ牝4祖母の父父サンデーサイレンスUSA
200614ダイワメジャー牡5母の父父サンデーサイレンスUSA
200736カンパニー牡6母の父父ミラクルアドマイヤ
200822ダイワスカーレット牝4母の父父アグネスタキオン
200915カンパニー牡8母の父父ミラクルアドマイヤ
200927スクリーンヒーロー牡5祖母の父父グラスワンダーUSA
201032アーネストリー牡5祖母の父父グラスワンダーUSA
201117トーセンジョーダン牡5母の父父ジャングルポケット
201221フェノーメノ牡3父ステイゴールドの祖母の父母の父デインヒルUSA
201232ルーラーシップ牡5祖母の父父キングカメハメハ
201511ラブリーデイ牡54代母の父父キングカメハメハ
201611モーリス牡5父スクリーンヒーローの祖母の父母の父カーネギーIRE
201711キタサンブラック牡5母の父サクラバクシンオーの母の父父ブラックタイド
2017313レインボーライン牡4父ステイゴールドの祖母の父母の父フレンチデピュティUSA

 キングカメハメハ〜ルーラーシップ父仔が産駒5頭出しに対してディープインパクトは直仔5頭出し。本命をキングカメハメハ系からとったので、には強い4歳世代でまだG1に勝っていないディープインパクト産駒のサングレーザーを選んだ。フレンチデピュティUSA牝馬との配合では既にマカヒキなど多くの成功例が現れたディープインパクト産駒だが、こちらはフレンチデピュティUSAの父のデピュティミニスターへと1代遡った。フレンチデピュティUSAから1代下ったクロフネUSAが母の父のステファノスには過去にこのレースでの(2)(3)着の実績があるので、その逆だとどうなるかという点でも興味深い配合。上昇中のディープインパクト産駒は止まるまで狙えるという仮説についても菊花賞-G1で裏付けが出たばかり。

 血統的には2大勢力の間隙を突く少数派となったハーツクライには母の父トニービンIREという東京コースでのアドバンテージとなる血が潜む。産駒の▲スワーヴリチャードは母の父が2017年の米リーディングサイアー・アンブライドルズソング。2017年はアロゲートがペガサスワールドC-G1とドバイワールドC-G1に勝ったのが大きく貢献したにせよ、それまでリーディングのタイトルがなかったのが不思議なくらいの名種牡馬であり、母の父としては菊花賞-G1のトーホウジャッカル、朝日杯フューチュリティS-G1のダノンプラチナなどを出して、種牡馬としてより高い日本への適性を示している。

 △ヴィブロスはヴィクトリアマイル-G1のヴィルシーナの全妹でジャパンC-G1のシュヴァルグランの半妹。マキアヴェリアン産駒の母ハルーワスウィートは芝ダート不問で5勝を挙げた。祖母ハルーワソングUSAはヌレエフ直仔で、産駒にラジオNIKKEI賞-G3のフレールジャック、中日新聞杯-G3のマーティンボロがおり、3代母の産駒にヴェルメイユ賞-G1勝ちのメッツォソプラノがいる。4代母は名牝グローリアスソングという名血の塊。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2018.10.28
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