2017皐月賞


父系3代Vの好機

 現在のところサンデーサイレンスUSA直系で最も代を伸ばしているのはバブルガムフェロー(1993)〜マジェスティック(2000)〜カゼノグッドボーイ(2006)の系統で、中央35戦3勝ののち2015年に種牡馬となったカゼノグッドボーイの2016年生まれの唯一の産駒が無事デビューすれば、サンデーサイレンスUSA直系玄孫第1号ということになる。そういった最先端はともかく、近年の充実が顕著な曾孫世代では2010年マーメイドSのブライティアパルスを皮切りに、2015年兵庫チャンピオンシップとレパードS-G3のクロスクリーガー、小倉2歳S-G3、阪神カップ-G2のシュウジ、兵庫ジュニアGPと全日本2歳優駿のサウンドスカイ、2016年ファルコンS-G3のトウショウドラフタ、桜花賞馬ジュエラー、かきつばた記念、プロキオンS-G3、カペラS-G3のノボバカラ、京都新聞杯-G2のスマートオーディン、ジャパンダートダービーのキョウエイギア、レディスプレリュードのタマノブリュネット、京王杯2歳S-G2のモンドキャンノ、今年に入ってシンザン記念-G3のキョウヘイ、ファルコンS-G3のコウソクストレート、そして先週のニュージーランドT-G2勝ち馬ジョーストリクトリまで、既に多くの重賞勝ち馬が生まれている。今のところ牝馬、ダート、短距離という属性に偏っている点が興味深くはあるが、それはともかく、これからはこれら4代目の時代となるのかもしれない。
 皐月賞父仔制覇はこれまでトウショウボーイ(第36回)→ミスターシービー(第43回)、シンザン(第24回)→ミホシンザン(第45回)、ハイセイコー(第33回)→ハクタイセイ(第50回)、シンボリルドルフ(第44回)→トウカイテイオー(第51回)、そしてサンデーサイレンスUSA系では下表の通り3種牡馬4組が達成している。シンザンからミホシンザンまで21年かかっているのに比べると、ネオユニヴァースは初年度産駒であっさり父仔制覇を達成している。父仔連覇(?)となった2年目の産駒ヴィクトワールピサも初年度産駒から桜花賞馬ジュエラーを出しており、サンデーサイレンスUSA直仔随一の単純な身体能力の高さが種牡馬としての自身の成功のみならず、代を経ても減衰しない活力につながっているようにも思える。アウトライアーズの母ウィストラムは芝1200m、ダート1200mと1400mで3勝。ある意味フレンチデピュティUSA産駒らしい成績を残した。マカヒキの母、ゴールドドリームの母、ショウナンパンドラの母、マイネルホウオウの母など、すべてフレンチデピュティUSA産駒のダートの条件馬(または未勝利)だったので、母の競走成績はこれで結構なのである。祖母リュドゥパームUSAは米2歳デルマーデビュターントS-G2の勝ち馬で、産駒にマーガレットSのパームシャドウ、孫にフェアリーS-G3・3着のダイワミストレスがいる。その父アイスカペードはニアークティック×ネイティヴダンサーというほぼノーザンダンサーと同じ血統なので、母はノーザンダンサーの強い近交馬ともいえ、皐月賞-G1には必須のノーザンダンサーの隠し味となる。ノーザンダンサーを持たないが、その母ナタルマの血を持つこの父に対しては効果を上げそうだ。


父系3代皐月賞制覇に近づくサンデーサイレンス系
サンデーサイレンスUSA(1986年生、ケンタッキーダービー-G1など14戦9勝)
 ジェニュイン(1992年生、第55回勝ち馬、ほかにマイルチャンピオンシップ)
 フジキセキ(1992)
 |イスラボニータ(2011、第74回、セントライト記念-G2、現役)
 イシノサンデー(1993、第56回、ダービーGP、京都金杯)
 ステイゴールド(1994)
 |オルフェーヴル(2008、第71回、東京優駿-G1、菊花賞-G1、有馬記念-G12回ほか)
 |ゴールドシップ(2009、第72回、菊花賞-G1、有馬記念-G1、宝塚記念-G12回ほか)
 エアシャカール(1997、第60回、菊花賞)
 アグネスタキオン(1998、第61回、弥生賞)
 |キャプテントゥーレ(2005、第68回、朝日チャレンジC-G32回)
 ネオユニヴァース(2000、第63回、東京優駿、大阪杯)
 |アンライバルド(2006、第69回、スプリングS)
 |ヴィクトワールピサ(2007、第70回、ドバイワールドC-G1、有馬記念-G1ほか)
 ダイワメジャー(2001、第64回、マイルチャンピオンシップ-G12回、天皇賞(秋)ほか)
 ディープインパクト(2002、第65回、東京優駿、菊花賞、宝塚記念-G1、JC-G1ほか)
  ディーマジェスティ(2013、第76回、セントライト記念-G2、現役)

 エンパイアメーカーUSAは2011年から2015年までの5年間、日本で供用されたあと、乞われて母国に帰った。日本にいる間に米国の産駒が大活躍しただけでなく、孫の代に37年ぶりの米三冠馬アメリカンフェイロアが出るなどすれば、それは日本にいる場合ではないということになるだろう。直仔の活躍が圧倒的に牝馬が多いのは、気性が強過ぎるためか力が強過ぎるためか、その両方ではあるだろうが、逆にいえば、それをうまく手なずけることができれば大仕事につながる。プラチナヴォイスは母プレザントブリーズが和田騎手の乗った新馬戦芝1200mが唯一の勝利。祖母スターズインハーアイズIREはディープインパクトの半姉で英未勝利。これがウッドマン産駒なので、本馬はミスタープロスペクター4×4、バックパサー5×5となり、そこに母の父マンハッタンカフェのサンデーサイレンスUSAがくさびのように入る最先端の様式。サンデーサイレンスUSA直系の持つ瞬発力とは違った種類の米国的なパワーがこの中では異色なぶんだけ武器としての効果は高まる。

 上位をスプリングS-G2組から選んで、その勝ち馬を無視するわけにはいかない。▲ウインブライトは過去2勝を挙げるステイゴールド産駒。その2勝はオルフェーヴルとゴールドシップだから別格といえるが、ノーザンテーストCAN4×4の近交は同4×3でラフショッドの血が入るドリームジャーニー、オルフェーヴルの兄弟に似る。1980年代末にコスモドリーム(優駿牝馬)、ラッキーゲラン(阪神3歳S)、ヤマフリアル(エリザベス女王杯2着)などが立て続けに活躍し、ハクサンムーンの登場でおよそ20年ぶりに大レースの舞台に戻ってきたミスゲラン〜ゲランの一族。皐月賞ではドクタースパートの1989年、不良馬場で惜しい4着となったオースミシャダイが思い出される。

 スワーヴリチャードはアンブライドルズソング牝馬にサンデーサイレンスUSA系種牡馬の配合という部分が菊花賞馬トーホウジャッカル、朝日杯フューチュリティS-G1のダノンプラチナと共通。アンブライドルズソング牝馬の仔にはジェネラルクオーターズやツーリスト、カルペディエム、シックスティーズソングなど複数のG1勝ちを収めたものもいるにはいるが、一度のピークに完全燃焼するためかG1・1勝という場合が多い。より日本ダービー向きとすると、ここは控えめな評価にしておくべきかも。アダムバローズは父も母の父も共通。カツトップエースやサニーブライアンのように、勝っても勝っても評価の上がらない馬がクラシックで活躍する年もあることは思い出したい。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2017.4.16
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