2017エリザベス女王杯


残された金鉱脈の行方

 ステイゴールドが2002年に種付けして2003年に生まれた初年度産駒からは牝馬に2頭の重賞勝ち馬が現れた。しかし、2年目の産駒ドリームジャーニーからは牡馬に大物、それも超のつくものが続出して流れは一転牡馬優勢となる(下表)。ゴールドシップ、フェノーメノの属する2009年生まれはステイゴールドの種付頭数が73、血統登録頭数は48と人気面で底を打った年で、そこからV字回復を遂げると逆に大物牡馬ブームは終息し、牝馬のレッドリヴェールが阪神ジュベナイルフィリーズ-G1に、今年はアドマイヤリードがヴィクトリアマイル-G1に勝った。現3歳、現2歳にも多くの産駒がいるので、流れはこの先どのように変わっていくか分からないが、今のところは牝馬に主力が移り、その中で特に優れたものは大舞台でディープインパクト産駒群に一撃をお見舞いするという形になってきたようだ。
 ステイゴールドの年間最多種付頭数は2011年の249頭。翌2012年もそれに次ぐ202頭の牝馬を集めた。◎クロコスミアは2012年種付けの2013年生まれ。この世代からは既にアドマイヤリードが現れている。ボストンハーバーUSA産駒の母デヴェロッペは中央で8戦して新馬と菜の花賞の2勝。クイーンCでは4着となり、桜花賞にも出走し(15着)、秋には紫苑Sで2着となった。菜の花賞が1月の3歳牝馬限定戦として行われるようになったのは2001年のことで、3歳の早い春先に素質を見せている者は繁殖牝馬として優れている場合も少なくなく、現在と距離は違うが、2002年の勝ち馬サクセスビューティはサクセスブロッケンを生み、2003年のソルティビッドUSAはアパパネを生んだ。その後もコイウタやピンクカメオ、現在と同じ500万下条件戦となってからもクイーンズリングがこのレースに勝っているので、牝馬の才能発掘にかなり重い役割を果たしているのは確かだろう。母の父のボストンハーバーUSAはブルードメアサイアーとしてのG1勝ち馬にはマザーグースS-G1のオフザトラックス、ヴァニティS-G1のマイスイートアディクション、マディソンS-G1のショットガンガルチがいて、これらはすべて牝馬。日本でも重賞勝ち馬は本馬のほかにベルカントがいるだけだから、牝馬優位の傾向が明らか。ボストンハーバーUSAの母の父はヴァイスリージェントだから、これはノーザンテーストCANとおおむね同じと考えると同馬の4×4となる。オルフェーヴルのノーザンテーストCAN4×3に似た効果を期待できるのではないだろうか。たとえそうでなくても、ノーザンテーストCAN、ヴァイスリージェントなど、これらカナダのE.P.テイラー生産のノーザンダンサー直仔の多くは、血統表中4代目あたりに並ぶと共鳴して良い効果をもたらすことが少なくないように思う。とはいえ、ボストンハーバーUSAの存在は距離克服の上でネックとなるのは確か。それを祖母ショウエイミズキのナシュワン×サドラーズウェルズという堂々たる欧州ステイヤー血統がカバーするのではないか。カバーというよりも、祖母の欧州血統と父の日本的ステイヤー血統の間にくさびのように母の父のアメリカ血統が入ることが、全体の活力アップにつながりそうだ。3代母アルヴォラGBの産駒にはスプリントC-G1のディクタットGBがいて、4代母パークアピールはモイグレアスタッドS-G1やチェヴァリーパークS-G1など愛英2歳G1に2勝。産駒にはロッキンジS-G1勝ちの優れたマイラーで種牡馬として大成功したケープクロスがいる。5代母バリダレスの子孫にもチェヴァリーパークS-G1のディザイラブル、愛オークス-G1のアリダレス、英1000ギニー-G1のシャダイード、同じく英1000ギニー-G1のラシアンリズムなどG1勝ちの名牝がズラリと並ぶ。ステイゴールド牝馬だけに、夏からの急上昇で短期決戦的に頂点に挑む今回のような過程が能力発揮にはいいのではないか。


ステイゴールド平地重賞勝ち馬の牡牝分布
生年
 2003コスモプラチナG3、ソリッドプラチナム
ドリームジャーニーG1、サンライズマックスG32004アルコセニョーラG3
 2005マイネレーツェル
ナカヤマフェスタG1、シルクメビウスG32006 
エクスペディションG32007 
オルフェーヴルG1、ナカヤマナイトG2、オーシャンブ
ルーG2、フェイトフルウォーG2、マイネルメダリストG2
2008バウンシーチューンG2
ゴールドシップG1フェノーメノG12009 
マイネルミラノG3、ケイアイチョウサンG32010ウインプリメーラG3
ツクバアズマオーG3、トゥイン
クルG3、ステイインシアトルG3
2011レッドリヴェールG1
グランシルクG3、ウインガニオンG32012ココロノアイG3、キャットコインG3
レインボーラインG32013アドマイヤリードG1、クロコスミアG2
ウインブライトG22014 
※G表記はパート1グレードのみ

 ○ヴィブロスのドバイターフ-G1は2着エシェムはともかく、3着リブチェスターがその後G1・3勝で欧州マイル戦線の主役を張り、4着ザラックもサンクルー大賞-G1に勝って凱旋門賞-G1に挑んだ。国際レーティング117はワールドベストレースホースランキングには掲載されないが、セックスアローワンスの4点を加えるとキタサンブラックやサトノクラウンに並ぶ評価ということになる。姉のヴィルシーナがジェンティルドンナを相手に長く苦労を重ねたの対して、こちらはG2やG3を負けてもG1はしっかり勝つという要領の良さがある。ただ、ヴィルシーナがジェンティルドンナのいない3歳時の重馬場のエリザベス女王杯-G1でレインボーダリアに敗れているところを見ると、距離が長い可能性とか、瞬発力のそがれる馬場での死角とか、そういったことは検討すべき課題ではあろう。

 出走馬の父で最も若いのは2006年生まれのハービンジャーGB。このあたりの世代からサンデーサイレンスUSA系を脅かしたり発展させたりする存在が望まれるタイミングで、▲ディアドラが父に初めてのG1勝ちをもたらした。牝馬の方がこういった先端的な流行には敏感なのかもしれないし、たまたまなのかもしれない。ハービンジャーGBは4歳春の4連勝の仕上げがキングジョージ6世&クイーンエリザベスS-G1の11馬身差圧勝。娘も3連勝後に臨む大一番ということでは父が大パフォーマンスを演じたのと似た環境となる。

 △ミッキークイーンは一昨年の秋華賞-G1以来2年以上G1勝ちから遠ざかっているが、この上半期の宝塚記念-G1の3着は日本で牡牝を通じて3番目に強いと見ることもできる。牝馬なので、一度頂点を極めたディープインパクト産駒に付きまとう燃え尽き症候群には陥りにくいだろうし、母ミュージカルウェイFRは重賞全3勝のうちG3ひとつを4歳秋に、残りの2つ、G3とG2を5歳秋に挙げた。そのような母の渋太さを見れば、もう一度ピークは来ると考えられる。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2017.11.12
©Keiba Book