2017ホープフルS


祖父母4頭みな無敵

 1984年にラジオたんぱ杯3歳牝馬Sとして阪神芝1600mで行われたこのレースの第1回の勝ち馬はトウショウボーイ産駒のニホンピロビッキーだった。第4回の勝ち馬プリンセススキーの孫には本年の桜花賞馬レーヌミノルが出て、第7回の勝ち馬イソノルーブルは3歳となって優駿牝馬に勝った。1991年に阪神3歳Sが牝馬限定の阪神3歳牝馬Sとなったのにともなって、こちらは牝馬限定戦でなくなり、距離も2000mに延長されてラジオたんぱ杯3歳Sとなった。2歳戦としては初めての2000m戦であり、その主たる目的であるクラシックへの登竜門という役割は十分に達成されている。2001年からは年齢呼称の変更にともなってラジオたんぱ杯2歳S、2006年からは冠社名の変更にともないラジオNIKKEI杯2歳Sと改称され、2014年から中山に移って彼地でオープン特別として続いていたホープフルSと入れ替わって名を受け継いだ。距離延長、性転換、改名を繰り返した末に阪神から中山に引っ越してまた改名と、容易に身元が分からないほどの変更を繰り返して、とうとう今年からG1の格を勝ち取ったのだからあっぱれというほかない。

 リヴリアUSA、キンググローリアスUSA、サンデーサイレンスUSA、メジロライアン、サクラチトセオーと1990年代は勢いのある新種牡馬産駒が勝つことも多かったが、それらを含めて早熟さよりもクラシック向きの血統が幅を利かせているのが特徴。もっとも、そのような中長距離向きがこのレースを選択するので当然といえば当然だ。香港のクイーンエリザベス2世カップ-G1などに勝ったルーラーシップは初年度産駒から菊花賞馬キセキを送り出した。この2歳世代が2年目の産駒となる。勢力分布ではハーツクライ3対ルーラーシップ2となっているが、ここは過去の例に倣い、若い種牡馬優先で考えていく。◎サンリヴァルは母の父が2000年のラジオたんぱ杯の勝ち馬。その年は2着ジャングルポケット、3着クロフネUSAだからレース史上もっとも豪華でハイレベルだったといえ、3頭が3頭とも個性的な名馬に育った。中でも特に才気に溢れたアグネスタキオンは短命に終わってしまったが、種牡馬としてダイワスカーレット、ディープスカイ、キャプテントゥーレ、リトルアマポーラらの名牝名馬を短期間のうちに送り、母の父としてもジャパンダートダービーのノンコノユメやセントウルS-G2のアクティブミノル、フィリーズレビュー-G2のカラクレナイなどを出して成功している。祖母ウメノファイバーは1999年の優駿牝馬勝ち馬。3代母ウメノローザは大井のグランドチャンピオン2000に勝った。ウメノファイバーの父がサクラユタカオー、父ルーラーシップの祖母ダイナカールの父がノーザンテーストCAN、母の父アグネスタキオンの父がサンデーサイレンスUSAというキタサンブラック風の要素と、キングカメハメハとエアグルーヴとサンデーサイレンスUSAというドゥラメンテ風の要素がちりばめられた先端的ないいとこ取り配合。来年のクラシックにも大きな期待がかけられる。


過去の勝ち馬とその後の成績
年度場所勝ち馬新種2歳
順位
その後の主な成績
1991阪神ノーザンコンダクトノーザンテーストCAN 1共同通信杯2着
1992阪神ナリタタイシンリヴリアUSA2皐月賞、目黒記念
1993阪神ナムラコクオーキンググローリアスUSA1NHK杯、プロキオンS
1994阪神タヤスツヨシサンデーサイレンスUSA1東京優駿
1995阪神ロイヤルタッチサンデーサイレンスUSA 1菊花賞2着、皐月賞2着
1996阪神メジロブライトメジロライアン2天皇賞(春)、阪神大賞典
1997阪神ロードアックスWoodman 26迎春S1600万
1998阪神アドマイヤベガサンデーサイレンスUSA 1東京優駿、京都新聞杯
1999阪神ラガーレグルスサクラチトセオー16弥生賞3着
2000阪神アグネスタキオンサンデーサイレンスUSA 1皐月賞、弥生賞
2001阪神メガスターダムニホンピロウイナー 34中京記念、菊花賞3着
2002阪神ザッツザプレンティダンスインザダーク 2菊花賞、ジャパンCG12着
2003阪神コスモバルクザグレブUSA 9シンガポール航空国際CG1
2004阪神ヴァーミリアンエルコンドルパサーUSA 7フェブラリーSG1、帝王賞
2005阪神サクラメガワンダーグラスワンダーUSA 8金鯱賞G2、鳴尾記念G3
2006阪神フサイチホウオージャングルポケット 23共同通信杯、皐月賞3着
2007阪神サブジェクトフジキセキ 2 
2008阪神ロジユニヴァースネオユニヴァース3東京優駿、弥生賞
2009阪神ヴィクトワールピサネオユニヴァース 5ドバイWCG1、有馬記念G1
2010阪神ダノンバラードディープインパクト1AJCCG2、宝塚記念G12着
2011阪神アダムスピークディープインパクト 1 
2012阪神エピファネイアシンボリクリスエスUSA 7ジャパンCG1、菊花賞G1
2013阪神ワンアンドオンリーハーツクライ 6東京優駿G1、神戸新聞杯G2
2014中山シャイニングレイディープインパクト 1CBC賞G3
2015中山ハートレーディープインパクト 2 
2016中山レイデオロキングカメハメハ 9東京優駿G1、神戸新聞杯G2
1990年までラジオたんぱ杯3歳牝馬S、2000年までラジオたんぱ杯3歳S、2005年までラジオたんぱ杯2歳S、2013年までラジオ
NIKKEI杯2歳S。馬名の太字はその後のクラシックまたはG1勝ち馬。新種は新種牡馬。2歳順位は2歳種牡馬ランキング(JBIS)

 ○タイムフライヤーはハーツクライ×ブライアンズタイムUSAという組み合わせなので、いかにも中長距離に向き、3歳春以降に本格化しそうに見える。前走で一度負けたくらいのことは気にする必要がない。母のタイムトラベリングは1勝馬だが、全兄タイムパラドックスはジャパンCダートや帝王賞、JBCクラシックなどダート重賞9勝の名馬。これがハーツクライとの配合ではヘイロー×ロベルトのヘイルトゥリーズン4×4とリファール4×4の現代的な瞬発力に富んだものになり、ダート色が払拭される。3代母ボールドレディの子孫には、春の天皇賞馬サクラローレルや4000mのカドラン賞-G1勝ち馬ジェントゥー、日経新春杯のカポーティスターといったステイヤーの名が並ぶ。

 開催順の関係で、東京、京都の広々としたコースで実績を残したものが中山2000mで争う部分に波乱の生じる余地がある。暮れの中山の支配者といえば、オジュウチョウサンの中山大障害でもその存在感を示したステイゴールド。その実質的なラストクロップとなるのが現2歳世代(2016年生まれは1頭だけ血統登録されている)。▲ステイフーリッシュは母がターコイズSなど芝1600mで全5勝を挙げたカウアイレーン。祖母シルバーレーンUSAの産駒には安田記念のブラックホークUSA、NHKマイルCのピンクカメオ、曾孫にはダービー卿チャレンジT-G3のロジチャリスがいるから、1600m特化型ファミリーといえ、本馬も将来的にはその方向に進む可能性があるが、ここはステイゴールドらしさの発揮に期待したい。

 スプリンターズSと高松宮記念に勝ったビリーヴは繁殖牝馬としてどんなパートナーを得ても産駒はファリダットUSA、フィドーシアUSAなど短距離で活躍した。△ジャンダルムの父キトゥンズジョイはターフクラシック-G1などに勝ち、産駒も芝の中長距離を中心に活躍していて、北米では非主流派だが、それでも2013年には北米リーディングサイアー(ブラッドホース誌集計)の座についた。同じエルプラド系メダグリアドーロ産駒のフィドゥーシアUSAとの血統的な違いはそうないが、少しの違いが大きな違いとなることはある。


競馬ブックG1特集号「血統をよむ」2017.12.28
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