2017天皇賞・春


2強の間隙を突破せよ

 2強の天皇賞(春)というと、新旧三冠馬、シンボリルドルフとミスターシービーの対決となった1985年、前年の皐月賞と日本ダービーを制したトウカイテイオーと連覇をかけたメジロマックイーンのぶつかった1992年、歴史的死闘として名高い阪神大賞典のリマッチとなったナリタブライアンとマヤノトップガンの1996年など、個人的印象としてはその3つだが、どれもそのまま2強で決着はしなかった。過去の目の届く範囲の1、2番人気馬とその着順を下表に並べてみたが、1→2番人気ではなかなか納まらないもので、そうなったとしてもスーパークリークやビワハヤヒデ、ディープインパクトの年のように1番人気が圧倒的な支持を受けて2番人気は少し離れているというケースが多い。1983年が2強決着のように見えるが、この年は競走中止したヒカリデユールが差のない3番人気だったので、3強と呼ぶのが実態に近い。いずれにせよ、2強で堅いというのは疑ってかかるべし。これは1986年のスダホークとサクラユタカオーが揃って掲示板にも乗らなかったときに学んだ。


両雄が並び立たないことの方が多い天皇賞(春)の歴史
年度1番人気年齢単勝
オッズ

2番人気年齢単勝
オッズ

1着馬/2着馬
単勝
オッズ
年齢
1983アンバーシャダイ牡62.91ホリスキー牡43.72--
1984ホリスキー牡51.53テュデナムキング牡47.817 1 モンテファスト614.1牡6
1985シンボリルドルフ牡41.31ミスターシービー牡53.752サクラガイセン846.5牡5
1986スダホーク牡41.57サクラユタカオー牡45.5141クシロキング311.0牡4
1987ミホシンザン牡51.31ニシノライデン牡67.22アサヒエンペラー410.4牡4
1988タマモクロス牡44.41メジロデュレン牡54.932ランニングフリー1338.7牡5
1989スルーオダイナ牡53.03ランニングフリー牡63.151イナリワン49.3牡5
1990スーパークリーク牡51.51イナリワン牡66.02--
1991メジロマックイーン牡41.71メジロライアン牡44.342ミスターアダムス743.4牡6
1992トウカイテイオー牡41.55メジロマックイーン牡52.212カミノクレッセ437.2牡5
1993メジロマックイーン牡61.62ライスシャワー牡45.21--
1994ビワハヤヒデ牡41.31ナリタタイシン牡46.52--
1995エアダブリン牡43.55インターライナー牡45.441ライスシャワー45.8牡6
1996ナリタブライアン牡51.72マヤノトップガン牡42.851サクラローレル314.5牡5
1997サクラローレル牡62.12マヤノトップガン牡53.71--
1998シルクジャスティス牡42.04メジロブライト牡42.312ステイゴールド1057.9牡4
1999スペシャルウィーク牡42.31セイウンスカイ牡42.832メジロブライト34.1牡5
2000テイエムオペラオー牡41.71ナリタトップロード牡43.532ラスカルスズカ34.0牡4
2001テイエムオペラオー牡52.01ナリタトップロード牡53.432メイショウドトウIRE36.5牡5
2002ナリタトップロード牡62.73マンハッタンカフェ牡42.912ジャングルポケット35.5牡4
2003ダイタクバートラム牡52.03ツルマルボーイ牡56.941ヒシミラクル716.1牡4
2004リンカーン牡42.213ネオユニヴァース牡44.1101イングランディーレ1071.0牡5
2005リンカーン牡55.46マカイビーディーヴァGB牝65.871スズカマンボ1335.1牡4
2006ディープインパクト牡41.11リンカーン牡614.42--
2007アイポッパー牡73.84メイショウサムソン牡44.512エリモエクスパイア1149.3牡4
2008アサクサキングス牡43.63メイショウサムソン牡54.821アドマイヤジュピタ35.8牡5
2009アサクサキングス牡53.59スクリーンヒーロー牡56.3141マイネルキッツ1246.5牡6
2010フォゲッタブル牡42.66ジャガーメイル牡65.912マイネルキッツ48.5牡7
2011トゥザグローリー牡43.113ローズキングダム牡44.2111ヒルノダムール716.9牡4
2012オルフェーヴル牡41.311ウインバリアシオン牡49.831ビートブラック14159.6牡5
2013ゴールドシップ牡41.35フェノーメノ牡46.212トーセンラー313.6牡5
2014キズナ牡41.74ゴールドシップ牡54.371フェノーメノ411.5牡5
2015キズナ牡53.37ゴールドシップ牡64.612フェイムゲーム722.6牡5
2016ゴールドアクター牡53.812キタサンブラック牡44.512カレンミロティック1399.2セ8

 皐月賞2着のペルシアンナイト、先週のフローラSで1、2着を占めたモズカッチャンとヤマカツグレースはいずれもハービンジャーGB産駒。これはごく短期的なトレンドに過ぎないが、これまで京成杯あたりでしか出番のなかったハービンジャーGBの仔がクラシックシーズンたけなわのこのごろ活躍しているという点で画期的。トーセンバジルはその初年度産駒。2012年のセレクトセール当歳で1億4175万円で購買されており、これは同セッション3番目、ハービンジャーGB産駒の最高価格だった。フジキセキ産駒の母ケアレスウィスパーは3勝を挙げ関東オークス2着。ノーザンテーストCAN産駒の祖母エヴリウィスパーの産駒には天皇賞(秋)-G1に勝ってこのレースでも2着となったトーセンジョーダン、京都新聞杯-G2のトーセンホマレボシ、孫にはきさらぎ賞-G3のトーセンスターダムがいる。クラフティプロスペクター産駒の3代母クラフティワイフUSAには直仔にマイラーズCのビッグショウリ、中山グランドジャンプのビッグテースト、孫にも天皇賞(秋)-G1やマイルチャンピオンシップ-G1など12勝を挙げたカンパニーをはじめ多くの活躍馬がいる。これら子孫の多才さを見れば、この牝系は種牡馬の才能を生かして重賞級、うまくいけばG1級の底力をもたらすのが特長と考えられる。ノーザンテーストCANとサンデーサイレンスUSAの血を持つこの母なら、その能力には特に秀でているだろう。ハービンジャーGB自身は英国で3歳4月、クラシックに間に合わないころにデビューして7月にゴードンS-G3に勝ち、4歳を迎えると4月のジョンポーターS-G3、5月のオーモンドS-G3、6月のハードウィックS-G2と勝ち続け、7月のキングジョージ6世&クイーンエリザベスS-G1では1歳下の愛ダービー馬ケープブランコIREに11馬身差をつけて4連勝を果たした。このとき本命の英ダービー馬ワークフォースGBは5着に敗れている。結局その2週間後には故障により引退してしまうが、ピーク時の手の付けられない強さは135のレーティングとして記録されている。条件級とはいえ、本馬の4歳時の3連勝は父が示した急成長を再現する兆しともいえて、さすがにジャパンC-G1でいったん勢いは止まったが、前走の3着をきっかけに再び上昇する準備はできた。デインヒルUSA、サンデーサイレンスUSA、ノーザンテーストCANという3つの重要構成要素はこのレースを連覇したフェノーメノに共通するものでもある。

 キタサンブラックはカレンミロティックにハナ差まで迫られた昨年より強くなっていることは確実で、これはブラックタイドにディープインパクトと同じ血でありながらディープインパクトにない一種のたくましさが備わっているから。母の父サクラバクシンオーの母サクラハゴロモは1983年に1番人気で勝ったアンバーシャダイの全妹。そこを経由して入るノーザンテーストCANの血の効用というのは成長力とか距離克服能力といった面で確かにあるのだろう。

 ▲サトノダイヤモンドは母の父が短距離希少血脈のディープインパクト産駒ということでジェンティルドンナやミッキークイーン、ディープブリランテらに通じる。最新のG1勝ち産駒アルアインの母の父エッセンスオブドバイもG1勝ち産駒はアルアインの母ドバイマジェスティUSAしか出していないので、同じ仲間にくくれるかもしれない。アルゼンチンの牝系にサンデーサイレンスUSA、デヴィルズバッグ、サザンヘイローUSAを経由したヘイロー3×5×4を乗せた配合はこのレースには洗練されすぎている嫌いがないではない。

 レインボーラインの父は2013年から2015年まで産駒が3連覇したステイゴールド。母の父フレンチデピュティUSAは2008年の勝ち馬アドマイヤジュピタの父。ノーザンテーストCANの4×5と、そこに同じE.P.テイラー・ブランドのヴァイスリージェントを絡ませた配合も面白い。大穴でキートゥザミント4×4のスピリッツミノル。上がり3F36秒台なら出番あり。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2017.4.30
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