2017フェブラリーS


金鉱のありかは知っている

 2003年に中山で行われたこのレースに勝ったゴールドアリュールは種牡馬としてもフェブラリーS最多の3勝2着2回(着外8)の成績を残している。エスポワールシチー、スマートファルコンといった代表産駒に見るように連勝あり連覇ありでたくさんの重賞を勝ち、ときにあっさり負けてもすぐ調子を取り戻して高齢まで活躍を続ける(下表)。自分のリズムで他馬に構わず走るのを天馬型、他と競って力を出すものをファイター型とすると、天馬型が多いのもゴールドアリュール産駒の特徴といえる。そうやって自分のペースで走って、レース展開が合わなければ簡単に負ける生活を続けていると、少なくともいつも歯を食いしばってがんばっているものより身体的にも気持ちの上でも消耗が少ないのは容易に想像できるところで、7歳や8歳まで活躍を続けられるのはそういう面もあったからだろう。コパノリッキーは昨年の上半期のかしわ記念や帝王賞が生涯自己最高ともいえる大パフォーマンスだった反動か、JBCクラシック以降の3戦は実に淡白な負けっぷり。ただ、これは7歳〜8歳時のエスポワールシチーが南部杯勝ちからジャパンCダートで10着(勝ち馬から1秒6差)、東京大賞典-G1・5着(1秒7差)と大敗したときによく似ており、その後のフェブラリーS-G1でエスポワールシチーは9番人気で0秒1差2着となっている。もちろん同じ父でも別の個体である以上は何から何まで同じに扱うことはできないにせよ、これだけ似た先例があるのならそれを尊重しましょうということ。母がレイズアネイティヴ4×5、ハイペリオン5×5であるほかはアウトブリードを繰り返したヤナガワ牧場らしい手法の配合で、まったく違う血統のキタサンブラックの息の長い活躍もこのような理念の上に成り立っているのだろうと推測する。

 同じ父のゴールドドリームは母の父がフレンチデピュティUSA。このレースにはデピュティミニスターの血が高い適性を示していて、フレンチデピュティUSAの血は直仔クロフネUSAから娘の仔マカヒキまで万能血統の代名詞になっているというのに、なぜか直仔にも娘の仔にもここでの実績がない。何か理由があるのかもしれないが、NHKマイルCでも東京施行時のジャパンCダートでも東京優駿-G1でもジャパンC-G1でも子孫が活躍しているのだから、たまたま巡りあわせの問題、偶然の結果と考える方向性もある。母のモンヴェールは関東オークス3着のほか、ダート1400〜1800mで4勝を挙げた。コックスリッジ産駒の祖母、ミスタープロスペクター産駒の3代母ともに凡庸な成績ながら、4代母ナンバーはヘムステッドH-G2など米重賞3勝の実績を残し、産駒にグランクリテリウム-G1のジェイドロバリーUSA、曾孫にメトロポリタンH-G1のコリンシアンを送った。ナンバーは名牝スペシャルの娘であるので、父の母の父ヌレエフの4分の3妹にあたり、ヌレエフ≒ナンバー3×4となる。このあたりはダートのマイル戦には向いた要素ではないかと思える。


ゴールドアリュール産駒の重賞コレクション
 馬名生年 母の父総賞金
(万円)
 重賞勝ち鞍
エスポワールシチー2005ブライアンズタイムUSA102319.7フェブラリーS-G1、ジャパンCダート-G1、
南部杯×3、かしわ記念×3、JBCスプリ
ント、マーチS-G3、みやこS-G3、名古屋大
賞典
スマートファルコン2005ミシシッピアンUSA99073.6東京大賞典-G1、東京大賞典、JBCクラシッ
ク×2、帝王賞、川崎記念、日本TV盃、ダ
イオライト記念、浦和記念×2、ブリーダー
ズゴールドC、さきたま杯×2、かきつばた
記念×2、名古屋大賞典、佐賀記念、兵庫ゴ
ールドT、白山大賞典
コパノリッキー2010ティンバーカントリーUSA76466.4フェブラリーS-G1×2、JBCクラシック
×2、帝王賞、かしわ記念×2、南部杯、東
海S-G2、兵庫チャンピオンシップ
クリソライト2010エルコンドルパサーUSA29419.0ジャパンダートダービー、ダイオライト記念
×2、日本TV盃、コリアC
シルクフォーチュン2006アルワウーシュUSA29157.8根岸S-G3、プロキオンS-G3、カペラS-G3
オーロマイスター2005Lear Fan22617.5南部杯
グレイスフルリープ2010Seeking the Gold19904.6サマーチャンピオン
フーラブライド2009メジロマックイーン19554.2愛知杯-G3(芝)、中山牝馬S-G3(芝)
タケミカヅチ2005マルゼンスキー17362.1ダービー卿チャレンジT-G3(芝)
レッドアルヴィス2011Grindstone11494.2ユニコーンS-G3
ゴールドドリーム2013フレンチデピュティUSA9899.6ユニコーンS-G3
ワンミリオンス2013Yankee Victor7602.1TCK女王盃
ウィッシュハピネス2012Grand Slam5530.9エーデルワイス賞
エピカリス2014カーネギーIRE3718.9北海道2歳優駿
太字はG1/Jpn1勝ち馬

 アグネスデジタルUSAは2002年のこのレースの勝ち馬。芝1600mでもマイルチャンピオンシップと安田記念をレコードで勝っているが、全日本2歳優駿、南部杯などダートの1600mではより楽々と力をセーブしても勝つことができた。種牡馬としてはブエナビスタを札幌記念-G2で破ったヤマニンキングリーとか、ジャパンダートダービー勝ち馬カゼノコなど、これまで9頭の重賞勝ち馬を出した。今年でもう20歳。産駒数は減っていくし、ミスタープロスペクター系でもメインストリームとはいいがたいクラフティプロスペクター系なので、今後はコンスタントな成功よりも何度かある波の頂点で大物を出すような形で推移していくのだろう。そんなタイミングで▲アスカノロマンによる父仔制覇という意外性は、この父だからこそ期待してもいいと思う。血統表の3代目に並ぶ種牡馬は上から順にミスタープロスペクター、チーフズクラウン、ストームキャット、デピュティミニスター。米国のG1勝ち馬にいてもおかしくなさそうな主流血脈ばかりの組み合わせで、特にチーフズクラウンとストームキャットはノーザンダンサー種牡馬×セクレタリアト牝馬の同パターン。大舞台で強いリボーの血が、父方にはアレッジド、母方にはキートゥザミントを経由してそれぞれ潜んでいる。5代母ナタルマはノーザンダンサーの母で、それを土台に緻密なデザインが施された。

 ベストウォーリアUSAは3連覇を狙った南部杯をコパノリッキーにかすめ取られたにもかかわらず、以前のように崩れていない。前走の根岸Sは58キロを背負って56キロのカフジテイクに0秒2差だから、机上の計算では1馬身ほど逆転できることになるし、距離もベストに戻る。エーピーインディ〜シアトルスルーと遡る父系にミスタープロスペクター4×4の現代的米国血統だが、ボールドルーラーやバックパサーといったフィップス家の血がちりばめられた血統表5代目がこの配合の見どころ。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2017.2.19
©Keiba Book