2017東京優駿


獅子心王リチャードの咆哮

 皐月賞と東京優駿の2冠達成率は過去40年で3割。このレースを5番人気以下で勝ったのはエイシンフラッシュ(7番人気)、サニーブライアン(6番人気)、フサイチコンコルド(7番人気)、バンブーアトラス(7番人気)、ラッキールーラ(9番人気)と40年遡っても5頭しかいない。穴狙いをするにしても、人気の大きな波には逆らうことなく、その隙間に何かすがるものを見つけよう、拾うべき物を探そうとするのが正しい態度といえるだろう。ロジユニヴァースは皐月賞14着から、アドマイヤベガも6着から巻き返しているが、いずれも皐月賞で1番人気の支持を受けており、ダイナガリバーは皐月賞2番人気10着ながら、東京優駿では3番人気の支持を得ていた。2、3着にはとんでもない人気薄が食い込むことはあっても、勝ち馬に関しては皐月賞で敗れても見限られていないことが必要条件になる。スワーヴリチャードの2番人気6着はちょうどボーダーライン上の成績と思われる。1番人気の牝馬ファンディーナが休養に入ったので、実質巻き返し組のトップといえる立場ではある。父のハーツクライは京都新聞杯に勝って臨んだ東京優駿ではキングカメハメハの2着となり、その後は宝塚記念-G1・2着、ジャパンC-G1・2着などがあっても長く勝ち切れず、4歳暮れにディープインパクトを破った有馬記念が1年半ぶりの勝利だった。産駒には2014年のこのレースの勝ち馬ワンアンドオンリー、優駿牝馬-G1のヌーヴォレコルトが出てクラシック実績は十分なものがあるし、ドバイデューティフリー-G1のジャスタウェイ、コーフィールドC-G1のアドマイヤラクティなどを送って世界レベルの底力も示している。母の父のアンブライドルズソングは現在のミスタープロスペクター系の最大勢力で、1998年生まれの初年度産駒ソングアンドプレイヤーから今年のドバイワールドカップ-G1勝ち馬アロゲートまで一流馬を送り続けており、消長の激しい同系統にあっては驚異的な息の長さで大種牡馬の地位を守り続けている。活躍が長期に及ぶだけに、母の父としての実績もすでに一流といえるもので、BCマイル-G1のツーリストやブルーグラスS-G1のカルペディエム、AJCオークス-G1のワンスワーワイルドなど多くのG1勝ち馬が現れている。日本では菊花賞-G1のトーホウジャッカル、朝日杯フューチュリティS-G1のダノンプラチナがおり、前者の父はスペシャルウィーク、後者はディープインパクト産駒とサンデーサイレンスUSA系との組み合わせに実績がある。ハーツクライにはサンデーサイレンスUSA系随一の配合相手としての米国血統好みというのがあるので、米国血統の塊のようなこの母との相性もいいだろう。母にはカロ、シアトルスルー、リヴァーマンとナスルーラ系の大物の血が入っていて、5代母の父もナスルーラ。ハーツクライの母の父トニービンIREはゼダーン経由のグレイソヴリン系だからやはりナスルーラで、あれやこれやで9本のナスルーラ血脈を持つ。これが日本的な軽いスピードにつながるとすれば、想定されるところの2分23秒台の決着は大歓迎ではないだろうか。


意外に広い逆転圏
〜東京優駿勝ち馬の前走
年度勝ち馬人気前走人気着順
2016マカヒキ3皐月賞G132
2015ドゥラメンテ1皐月賞G131
2014ワンアンドオンリー3皐月賞G144
2013キズナ1京都新G211
2012ディープブリランテ3皐月賞G133
2011オルフェーヴル1皐月賞G141
2010エイシンフラッシュ7皐月賞G1113
2009ロジユニヴァース2皐月賞114
2008ディープスカイ1NHKマ11
2007ウオッカ3桜花賞12
2006メイショウサムソン1皐月賞61
2005ディープインパクト1皐月賞11
2004キングカメハメハ1NHKマ11
2003ネオユニヴァース1皐月賞11
2002タニノギムレット1NHKマ13
2001ジャングルポケット1皐月賞23
2000アグネスフライト3京都新聞21
1999アドマイヤベガ2皐月賞16
1998スペシャルウィーク1皐月賞13
1997サニーブライアン6皐月賞111
1996フサイチコンコルド7すみれS11
1995タヤスツヨシ1皐月賞42
1994ナリタブライアン1皐月賞11
1993ウイニングチケット1皐月賞14
1992ミホノブルボン1皐月賞11
1991トウカイテイオー1皐月賞11
1990アイネスフウジン3皐月賞12
1989ウィナーズサークル3皐月賞72
1988サクラチヨノオー3皐月賞23
1987メリーナイス4皐月賞87
1986ダイナガリバー3皐月賞210
1985シリウスシンボリ1若葉賞11
1984シンボリルドルフ1皐月賞11
1983ミスターシービー1皐月賞11
1982バンブーアトラス7NHK杯126
1981カツトップエース3NHK杯52
1980オペックホース2オープン12
1979カツラノハイセイコ1NHK杯23
1978サクラショウリ2皐月賞23
1977ラッキールーラ9NHK杯14
太字は2冠馬

 優駿牝馬のモズカッチャンでハービンジャーGB産駒は2度目のクラシック連対を果たした。産駒最初のクラシック連対馬ペルシアンナイトは母がマーメイドS3着、秋華賞4着の活躍馬オリエントチャーム。その全兄ゴールドアリュールはジャパンダートダービー、フェブラリーSなどを制したほか、東京優駿でも5着となり、半弟ゴールスキーは根岸S-G3に勝ち、マイルチャンピオンシップ-G1で3着となった。3代母リラクタントゲストはビヴァリーヒルズH-G1などに勝った活躍馬。母のサンデーサイレンスUSA×ヌレエフの配合からはゴールドアリュール以外にもエリザベス女王杯のトゥザヴィクトリー、同フサイチパンドラ、またカブール賞-G3のレイマンなど多くの成功例がある。ハービンジャーGBにとっても母系に入るサンデーサイレンスUSAに由来する決定力、瞬発力は必要不可欠なもの。父の産駒のモデル配合といえる構成だが、隠しアイテムとしてイルドブルボンUSAとホスティージといった70〜80年代ニジンスキー直仔のG1勝ち馬の名がある点がダービー的な味付けといえようか。

 ソウルスターリングの優駿牝馬-G1勝ちはフランケル産駒として世界初のクラシック制覇ともなったわけだが、これは同時にガリレオ系初の日本での成功でもあった。▲ベストアプローチGBの父ニューアプローチはガリレオ産駒の英ダービー馬3頭のうち最初の父仔制覇達成馬。初年度産駒から英2000ギニー馬ドーンアプローチ、英オークス馬タレント、南半球でもオーストラレシアンオークス-G1のメイズドリームらを送って成功している。母サントエレナはマイラーのエフィシオ産駒で、本馬の半兄であるレックレスアバンダンもモルニ賞-G1、ミドルパークS-G1と仏英の2歳短距離戦で勝った。祖母の産駒にはアメリカンオークス-G1のティッカーテープ、チャンピオンズスプリントS-G1・3着のブランドがいる。3代母の産駒クラウディドハウスはレーシングポストトロフィー-G1に勝った。父に潜むミスワキ、3代母の父ウッドマンはともにミスタープロスペクター×バックパサーの相似形で、両者の同居は現代的なスピードを保証することにもなりそうだ。

 皐月賞9着のカデナはダイナガリバー的ポジションから巻き返しを図ることになる。ディープインパクト×フレンチデピュティUSAの組み合わせは昨年の勝ち馬マカヒキを筆頭に成功例多数。母は米G3勝ちのある活躍馬。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2017.5.28
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